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でも、めっちゃカッコいいぞ、そこ 〜 マイルズ「シー/ピースフル」in『イン・ア・サイレント・ウェイ』

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Miles Davis / In A Silent Way

長いあいだ、それこそ40年以上、B面っていうか2トラック目の「イン・ア・サイレント・ウェイ(/イッツ・アバウト・ザット・タイム)」しか聴いてこなかったといってもいいマイルズ・デイヴィスのアルバム『イン・ア・サイレント・ウェイ』(1969)なのに、最近はA面の「シー/ピースフル」もカッコいいぞって思うんです。

ジョー・ザヴィヌルによる冒頭のオルガンびゃ〜がすでにクールでチルで体毛が逆立つほどだって思うんですけど、この1曲目にはエモーションが爆発解放される瞬間はなく、最初から最後までずっと一貫して抑制の効いたクールネスに支配されている、一定のペースをくずさないっていうのも、まさしくいまのぼく好み。

まるで泉の水がこんこんと湧き出るのをながめているような気分になりますが、だから動きというかグルーヴはそこにあるわけです。B面もそうだけどトニーのドラミングをきつく制限していて、決まった定常ビート維持しかさせていないこと(A面ではハイ・ハットのみ)も、クールネスをきわだたせる結果となっています。どんなドラマーなのか?を踏まえたら、こんなことよくやらせたなと思いますよね。

ドラマーの役割を固定する一方で、ベースと鍵盤には自由に動きまわらせているという、その対比がグルーヴを産んでいますよね。B面よりもいっそうオルガンがカッコよく活躍しているし、ハービー・ハンコック、チック・コリア二名のフェンダー・ローズだって最高。この三名のからみあいこそがこの曲のキモです。

なかでもぼくがこのごろシビレているのが、ウェイン・ショーターのソプラノ・サックス・ソロになっての10:11から。背後の、特にフェンダー・ローズの動きに注目してほしいです。ハービーかチックのどっちか(どっち?)がまずワン・フレーズ弾いて、それがあまりにもカッコよかったせいか、くりかえし七回反復しているでしょ、このリフ・フレーズ、かっちょええ〜〜っ!

事前に用意されていたものだとは思えず、その場の思いつきで即興的に弾きはじめたという様子です。ですが、弾いてみた本人もカッコよさにびっくりしたのか反復し、共感したもう一名のエレピ奏者、そしてオルガンも途中から参加し、三名ユニゾンでこの同一フレーズを合奏リピートしているんです。七回。カッコいい。

メインのソロじゃなく伴奏部なんですけど、そのリフこそがこの曲で最もカッコいいシビレる箇所だなということに、40年も聴き続けていてようやく最近(なんと遅い)気がつくようになりました。ずっと聴き逃していた、というかA面をそもそも聴いていませんでした、ごめんちゃい。

でも、めっちゃカッコいいぞ、そこ。

(written 2022.9.29)

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