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これがコンテンポラリーUKジャズだっていうんなら案外いいじゃない 〜 カミラ・ジョージ

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Camilla George / Ibio-Ibio

ナイジェリアにルーツを持つロンドンのサックス奏者、カミラ・ジョージは先鋭的なコンテンポラリーUKジャズを担う一員に数えられているわけですが、最新作『Ibio-Ibio』(2022)を聴いてもオールド・ファッションドというかレトロというか、まるでハード・バップ・サックスみたいじゃんと感じたりする瞬間もあったりします。

最もハード・バップを感じるのはバラードの6曲目。まるでソニー・クリス。それ以外もとっつきやすいイージー・ジャズというおもむきで、グルーヴ・チューンなんかクール&ザ・ギャングみたいな80sジャズ・ファンクにそっくり(特にギター・カッティング)。いちおうラップとか混ぜたりしているものの、ヒップ・ホップ以後的なサウンド・メイクはカミラの音楽に薄いような。

新世代的っぽくないからいけないといっているんじゃなくて、ぼくみたいな旧感覚ジジイ世代だと、カミラがやっているようなこうしたジャズは大好物。聴きやすいしわかりやすく、どんなふうに音楽をつくっているか明快で、すっかりくつろげる心地よさなんですね。

クラブ・ジャズ・フィール満開ではあるけれど、1980〜90年代くらいのサウンドじゃないですかね、この『Ibio-Ibio』って。いちばんジャズ系の新しいものを聴きまくっていたあの時代、フュージョン、アシッド・ジャズ、レア・グルーヴとか、Us3とかも出てきて、個人的なアンテナがピンと張って新進を吸収しようという気概に満ちていたあの時代を思い起こします。

旧体質だったベニー・グッドマンが(自分のコンボに雇った)チャーリー・クリスチャンを聴いて「これがビ・バップというものならばビ・バップも悪くない」と発言した逸話が残されていますが、カミラ・ジョージを聴いていると「これがコンテンポラリーUKジャズだっていうんなら案外いいじゃない」と思うオヤジが続出しそうな気がしますよ。

(written 2022.11.3)

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