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おだやかに落ち着いた大人のアルバニア系ポップ・フォーク 〜 エドナ・ラロシ

(3 min read)

Edona Llalloshi / Akustike Ne Karantine

今年四月のbunboniさんのブログで知ったコソヴォの歌手、エドナ・ラロシ。なんでもアルバニア系のポップ・フォーク歌手だとのこと。Spotifyで検索したら、bunboniさんはCD入荷待ちだという最新作『Akustike Ne Karantine』(2020)が見つかったのでぼくはさっそく聴きました。

この最新作がですね、とってもいいんです。アルバム題の『Akustike Ne Karantine』というのは、スペリングから察しておそらくコロナ自粛期間におけるアクースティック(・ミュージック)といった程度の意味なんでしょうか。

なにより中身を聴けばですね、コロナ禍でなかなかライヴ活動もできないしアルバム制作もままならないなか、エドナ・ラロシと製作陣もそれなりに工夫して、時間だけはたっぷりあるということで、前作のエレクトロ・ダンス・ポップ路線から一転、生演奏のしっとりアンプラグド・ミュージックをやってみたという、そういう音楽になっているんですよね。

ジャケット・デザインからして、アダルトな落ち着いたムードを強調したやや暗めの夜のトーン。今回はアクースティックな伴奏でじっくりと歌を聴かせますよっていうエドナと製作側の姿勢がよく表れているんじゃないですか。

エレクトロニクスをたくさん使った派手めのダンス・ポップが苦手というわけじゃないんですが、個人的には。でも最近はアクースティックでナチュラルなサウンド・メイクを中心に据えておだやかで落ち着いたヴォーカルをじっくり聴かせるという音楽のほうをたくさん聴くようになってきていますので、最新作におけるエドナの音楽も大歓迎です。

パーソネルとか楽器編成とかそのへんのちゃんとした情報を自力では見つけられず。聴いた感じで判断すると、ドラムス、パーカッション、ベース、ギター、ウードかなにかのそれ系弦楽器、ピアノや鍵盤、なにかの笛(クラリネット?)、という感じだと思います。ちらほらコンピューターによる処理もうかがえますけど、あくまで控えめ。

だれが曲を書いているのかトラッドか、エドナの歌う曲のメロディはアルバニア系の民謡を思わせるもの。だからそれがベースになった新曲ということか、アクースティックにアレンジされているというだけかわかりませんが、落ち着いた大人のムードでじっくりとていねいに歌い込む様子と、それを活かすオーガニックなサウンド・メイクとがあいまって、バルカン的情緒もあるし、なかなか聴ける一作ですよ。

コロナ自粛云々とは関係なく世界のポピュラー・ミュージック界で、こんなアクースティック&オーガニックなアダルト路線は、近年間違いない一つの大きな潮流になっています。アルバニア系のコソヴォ・ミュージックも例外じゃないんでしょうね。

(written 2021.10.14)


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