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「ルージュの伝言」はオールディーズ・オマージュ、歌詞はヘンだけど 〜 荒井由実

(4 min read)

荒井由実 / ルージュの伝言

荒井(松任谷)由美五枚目のシングル「ルージュの伝言」(1975)。わさみんこと岩佐美咲が2020年にカヴァーするまであまり意識したことがなく、こういう曲があるんだということがぼんやり頭のなかにあっただけ。聴いたことくらいはあったっけ。

ところが今朝なんとなくTwitterのタイムラインを眺めていたら、この曲の歌詞が実にヘンである、理解できないというツイートが流れてきたので、それでひょっとして生涯初、しっかり意識してユーミン・オリジナルの「ルージュの伝言」を、それも歌詞が妙だというんで歌詞サイトで確認しながら、聴いてみました。

あれですよ、歌を聴くときに「歌詞なんか聴いてねえ〜よ!」な音楽熱狂家であるぼくなんですけれども、あらためて意識してみると、「ルージュの伝言」の世界はたしかにちょっと狂っていますよねえ。

ダーリンが浮気したのが許せない、しかしそれを直接本人に言わず、ダーリンのママに言いつけてママからしばいてもらおう、だからバスルームにルージュで伝言した上でママに会うためいま電車で向かっている、ふっふっふっていう、そういう歌詞なんですよねえ。

なんじゃこれ。たしかにヘンなの。

でもユーミンのこの「ルージュの伝言」もまたやはり歌詞なんかどうでもいいんです。これは1950〜60年代的アメリカン・ポップス、つまりオールディーズ世界へのオマージュだっていう、そういうメロディと曲調、アレンジだっていう、それこそがこの曲のキモなんです。

ロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」でフィル・スペクターがやったようなパターンをなぞるドラムス・イントロにはじまって、ピアノがリフを奏で、ユーミンの書いたメロディも完璧にアメリカン・オールディーズを意識したレトロなものです。

それに拍車をかけているのがバック・コーラス。しゅわしゅわ〜、う〜わっわっ、とドゥー・ワップ趣味まるだし。これはですね、コーラスで参加している山下達郎(ドゥー・ワップきちがい)の貢献がかなりあるとのこと。達郎のほかコーラスには吉田美奈子、大貫妙子も参加しています。

このドゥー・ワップ・コーラスをリードしたのが達郎だということで、曲のアレンジャーは松任谷正隆なんですけど、「ルージュの伝言」がこんなに抜群なアメリカン・ポップスに仕上がったのは達郎の力が大きかったと松任谷も認めています。

そんなところがたいへん楽しめる「ルージュの伝言」なんで、歌詞なんかそんなに意識しなくてもねえ。この曲が完璧なるオールディーズ・オマージュだっていうのは、以下にご紹介するユーミンのライヴ動画でもよ〜くわかります。

2016〜17年のツアーから公式にアップされているものですが、ユーミンの左右にいる三名のコーラス隊兼ダンサーの動きに注目してほしいです。ツイストを中心にチキンやダックなど織り交ぜながら、往年のアメリカン・ダンス・スタイルを忠実に再現しているじゃないですか。映画『アメリカン・グラフィティ』とか『ブルース・ブラザース』とかで観たあの世界そのまんま。

なんだったらユーミンの衣装だってそれを意識したレトロなもので、バンドの演奏といいヴォーカルといい全体的にちょっとやりすぎかもと思うほどですが、こういうのこそが「ルージュの伝言」でユーミンや製作陣が目指した世界なんですよ。


ところで、ブログ用の文章が毎日複数本書けて止まらず、ストックがたまりすぎて、それでも休まず書き続けているから、このまま一日一本のペースでは一生かかってもアップしきれないと思うんですけど、どうしよう?

(written 2021.12.23)


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