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人生そのものが持つ美しさ 〜『João Gilberto Eterno』

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v.a. / João Gilberto Eterno

この『João Gilberto Eterno』(2021)ってなんだっけ?ジャケットだけ妙に見憶えがあって、ぼくたぶんCDも持っているはずと思うんですけど、ほとんど聴いた記憶がないっていう。ジャケットとアルバム題は初見じゃないけど、中身の音楽は未聴といっていいくらい。

Spotifyをぶらぶらしていて再見しふと思い立って、どんな音楽だったかちょっとかけてみよう、なんでも聴いてみなくちゃわからんとクリックしてみたら、これが!完璧にいまのぼく好みの丸くおだやかな現代ブラジリアン・ポップスで、こ〜りゃいいね!聴いてよかった。

タイトルどおりジョアン・ジルベルトにささげた内容で、ジョアンのレパートリーを中心に、その90回目の誕生日にあわせて日本で企画・リリースされたもの。Spotifyで見ると演者名がぜんぶカタカナなのはそのためですね。

演者は一見しておわかりのとおりジョアンの音楽を敬愛しているブラジルのミュージシャンたち。ジョアン・ドナート、ギンガ、モニカ・サルマーゾ、モレーノ・ヴェローゾ、ローザ・パッソスなど有名人もいて、さらに日本企画ということで伊藤ゴローや小野リサといった日本人ボサ・ノーヴァ・ミュージシャンも参加しています。

歌もの楽器演奏もの、いずれも美しく、しかも淡々としていておだやかで、こういう音楽は心に波風が立ったりしませんが、日々の癒しとして常にそばにおいて聴いていたいっていう、そういうなごめるものですよ。結局のところそうした音楽こそ人生で残るようになってきました。

ことさらに異様な美しさをたたえているものが多少あって、強く心を動かされた演奏もあります。フェビアン・レザ・パネのピアノ独奏による12「Valse」とジョイス・モレーノの13「Estate」。前者はクラシカルでエレガントな雅を放っていますが、後者はボレーロ的な微熱をも帯びた官能。

特に13「Estate」冒頭でジョイスのナイロン弦ギター弾き語りがあって、そこに一瞬のピアノぽろりん刹那ストリングスが流れ込んでくるあたりには、涙がこぼれそうに。なんて美しいのでしょう。人生そのものが本来持っている美しさじゃないかと思えます。

(written 2023.3.15)

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