【憲法89条がお寺への持続化給付金支給への望みを絶った?】 ~政教分離原則と宗教法人への補助金・助成金等の支給スタンス~

少し前の、お寺の中でのホットな話題の一つに
「持続化給付金」が宗教法人に支給されるのか?
というテーマがあり、前回投稿でも本文やコメントに経過を掲載していました。
結局、支給されない運びとなりましたが、個人的に今回の議論が沸く前から、「宗教法人への補助金・助成金支給の道はないのか?」という個人的な関心があり、色々調べたことがありました。

・政教分離原則があるからダメ
・お寺は税金を払っていないからダメ
(全く払っていないわけではないですが、それについて語るともう一投稿要るので省略します)
という人が多く、私は腑に落ちていない部分がありました。

今回の件でアップデート出来た部分もあるので書いてみました。

基本的な私の考えは
「本当に困っている人には支給されるべき」
です。


一方で憲法89条
「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、(又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、)これを支出し、又はその利用に供してはならない。」
を額面通り受け取ると、補助金・助成金の類はお寺をはじめとする宗教法人に支給するのはダメということに確かになります。

ところが、実績として宗教法人・宗教施設に対する補助金等の違憲とされていない支給実績は現にあります。
私の中で頭の整理ができず、弁護士の西口竜司先生にお聞きしてみました。
先生によると、
「政教分離原則とは国(自治体)と宗教を完全に分離しているわけではなく
国の宗教的中立性を意味します。
国と宗教が全く関与できないか、というとそういうわけでもありません。
裁判所の見解として「相当とされる限度を超えるかどうか」で判断することになります。
雇用調整助成金については給付された事実からしても、今回の持続化給付金の対象外という事例が果たして相当とされる限度を超えるかどうかは疑わしいと思います。」
とのこと。

また、行政書士の田村実貴雄先生は
「持続化給付金の支給対象となっている公益法人もあり、また、収益事業を行っている宗教法人は他の法人と同様納税も行っている。そのような状況から考えると憲法14条(法の下の平等)の観点からも宗教法人だからという入り口で遮断するべきではない議論」
と補足されています。


そんな中での宗教専門紙の中外日報では2020年7月1日付記事では
法の捉え方を柔軟にする向きがあった宗教界と政府とのやりとりがあったと報じています。

〇憲法第89条解釈 宗教界の広い議論が前提だ
https://www.chugainippoh.co.jp/article/editorial/20200701.html


記事にも触れられている、憲法が大震災の被災地で困窮する宗教施設の復興を阻害要因になることは避けなければなりません。
本題から反れますが、弔いが追いつかない被災地において多数の有志僧侶による「読経ボランティア」に自治体が関与を躊躇する事例があったことも聞いたことがあります。
政教分離原則を過度に意識したがための対応です。(その自治体では宗教色を出さないために無言での弔いが行われた例もあるとのこと)
法の解釈は見る角度によって、見え方が変わるのは世の常ですが、
(だから裁判があるのですが)

本当に困っている人が助けられる法でないといけないと思うのでした。

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