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夢を見た話。


【閲覧注意】

・メモ帳のボイスを使って書いているので、芝居がかった語り口調になっています。

・夢から覚めて半分頭がぼんやりしながらだったのでおかしいのは許してください。



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その人の名前は「山田」と言い「ふろう」と言い「入江」といいました。

まだ他にも 教えてもらった名前はいくつもありましたそのすべてはその人で 私はその人が好きでした多分好きでした。

ゆめを見た先々でその人と会いました 。
でもなぜか いつも 何かを言い争っていました。
私もその人がとても嫌いで イライラしてムカついて どうしても許せない存在で それなのに次に会った時までその人のことを忘れているのです。


そしてその人と会うのはいつも病室でした。
横長の昔のアルバムのようなものを見せられて中にあった写真やいろんなものをこれがああだあれがこうだなどと説明を受けたりそれについて抗議したり議論したり していましたが いつもその人は私のも反対のことを言って気分を逆なでてくるのでとても嫌いな存在でした。

おかしなもので会っている間は 話している間はとてもその人に対して嫌いだという思いが胸いっぱいにあるのに他のことをしている時はそれを全て忘れてしまうのです。

夢の中で時間が経過して何度も何度もその人と話すうちに 激昂して話している時間が 時々楽しく思えてきました。
それでもその病室にいることもその人がベッドから離れられないことも とても病人らしい風貌なことも 私は病室に行くまでひとかけらも思い出せませんでした。

だけれども病室に行くとそれは当然であるかのように その人と話し喧嘩し大声をあげてしまい、こんなのはいつもの自分ではないと思いながら その人に素の自分をさらけ出していたように思います。
その人の態度は私だけにとどまらずすべての人にそうであるようでした。
一度それを諌めたこともありますがそれもまた討論のタネでした。

病室に行かない時は一切その人のことを思い出しませんでした。
代わりに子供が起こした無邪気な行動が世間を騒がせた事件に繋がったり、
駅に歩いて行ったはいいもののお財布を忘れて 近くにいた親切なお姉さんに一緒にタクシーに乗ってもらい 家までお財布を取りに行ってお姉さんを駅まで 送ってから本来の自分の目的地に 行こうとしていたのにも関わらず タクシーを降りるまでお金は家にも家に行くのを忘れてずっとお姉さんと行動をしていたり お姉さんだと思っていたその女の人が よく見たらかなり年上の ご婦人だったことやまさかの自分の知り合いのそのまた知り合いであったこと そのご婦人が 実は一人ぼっちで 自分の死に場所を探していたこと などいろいろありました。

一つの区切りがつくと必ず私はいつのまにかその人の病室にいました。

そして今まで自分が体験したこと思ったことなどをつらつらと述べていると必ずその人が
それは違う 
君はおかしいんじゃないのか 
本当にバカだな 
などと暴言を吐いてきて 最初は今日こそ落ち着いて話そうと思っているのにいつも最後は言い合いになっておしまいになってしまう。

それをその人の 病人らしい風貌をしっかりと睨みつけて話している自分がいました。
夢の中の私は相手が病人であろうと何であろうと違うものは違う自分の意思を押し通すようなそんな人でした。


そしてそれが何度も続いたある日、いつものように 話し合いが言い合いになり 討論が喧嘩腰になって やっとその人は初めて笑ってくれました。

何回も何回もその病室に行くたびに 私は奇妙な楽しさを覚えていきました。
楽しいと明らかに明言はできませんが病室に来ると何故か気分が高揚したの覚えています。

会うたびに病人らしさがどんどん濃くなっていき 会っている間は多少心配はするもののいつも通りにその人と過ごしていました。
言い合いが終わるとすぐ帰ってしまったのであまりまともにその人と話したことはないような気がします。
それでも私の態度は変わらず、今日こそは静かに話そうと思ってもいつの間にかこぶしを振り上げて熱弁していました。

夢から覚めて思い返すと結構めんどくさい女だったなあと笑ってしまいました。


何十回目 の病室でのこと 普段はいない看護師さんが そばにいてなんとなく私は嫌な予感がしました。

最後から数えて 3回目か4回目の頃に あと何回というカウントダウンが 始まりました。
看護師さんが言ったのでも 誰かが言ったのでもなく何となく頭に浮かんできました 最後の最後まで 私はこの人と 喧嘩腰でしか話せないんだろうなとなんとなく思っていました。

またいくつかのエピソードを 話し合い どんどんカウントダウンが進んでいきました。



ところで私には 夢の中で 婚約者というものがありました。
とても穏やかな人でいつも私を見守ってくれているそんな感じの人でした。
顔は柔和で 一昔前のイケメンという言い方がぴったりの優しい人でした。

病室で私と言い合う人とは真反対の人でした。




最後にその人に会った日私は婚約者を連れて行きました。
連れて行ったのか勝手についてきたのかそれはよく覚えていません。
婚約者は私のすることを少しはなれたところで静かに見ていました。
咎めることも口を出すことも何もしませんでした




最後の日その人はとても穏やかに笑って私と初めて 静かに話をしてくれました。
話をしているうちにどんどん気弱になって泣き出しそうになるのがとてもよくわかりました。
私はその人のベッドの枕のように座りその人が私に身を預け後ろから抱きしめるような格好で 静かに息をしていました。
何を話していたのか ほぼ覚えていませんが終始静かな語り口調だったのを覚えています。

私はたまらなくなって婚約者の前というにもかかわらずその人とキスをしました。
ただのキスじゃない熱情のこもったキスをしました。
頭の隅で婚約者の前でなんてことをするんだと 理性がブレーキをかけましたが 私はその理性の言うことを一つも聞けませんでした。
その人のことをとても好き というわけではなく 今際の際に キスをねだられたので 答えるしかありませんでした。
けれどそれは言い訳で私が彼とキスをしたい熱のこもった愛情のこもった心のこもったキスをずっとしていたいという気持ちも確かにありました。

ずっとずっとこの人とキスをしていたい、そう思えたのは この人の先がいくばくもないからというのも ありました。婚約者のことは途中から頭から離れていきました。
最後には思い出しもしませんでした。

キスをしてとてもよく思ったのは 今までの討論も言い合いも喧嘩腰なのも全て この人を忘れないための 儀式のようなものだったのではないかと 感じました。

そうして私の中に この人という存在がいつまで経っても消えないような 呪いのようなものを刻まれてしまったのかもと今にして思い出すとそんな気がするのです。






夢から覚めてとても切なくてさみしくて胸がざわざわした気持ちになりました。
なぜ私はこんな夢を見たのだろう。
いつもならあまり意味のない夢やどうでもいい夢しか見ないのに なんでだろうと。
なぜ同じ人が何度も何度も出てくるのだろうと不思議に思いました。


そして思い出しました。


今月は大事だった友人の三回忌 でした。

友人は男の人で 生前とても仲良くして いました。
歳が一つ違いというのも 仲良くなる きっかけでした。


一周忌も2年目も 友達と一緒に その人の冥福を祈りながら飲み明かしました。
けれど今年は コロナのせいで何もできずに終わっていたのをもしかしたら寂しがって 夢を見せてくれたのかもしれません。
前に友達のことを書いた ブログを読み返したのも 夢を見た 大きな要因だったのかもしれません。

もしかしたらただの夢で本当はそうじゃなかったかもしれない。
でも私は自分に都合のいいように考える人間なので多分そうだと思って今夜は 一人で 大好きだったお酒を飲んでひとり追悼式をしたいと思います。



Tちゃんごめんね忘れてないよ、ちゃんと覚えてるよ 今日は久しぶりに飲もうね。



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