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3月2日。牧野昇「世の中が困ったら”しめた”と思え。困った事態こそ、成長の機会だ」

牧野 昇(まきの のぼる、1921年1月18日 - 2007年3月2日)は、日本の技術評論家。

1970年三菱総合研究所の設立に参画し、1984年会長。技術予測、産業政策の論評で知られた。

1979年に書かれた本の文庫版『知的生産の方法ーー実戦的ビジネス企画発想術』(新潮文庫)を久しぶりに再読した。知的生産に精通することから出世が始まるとし、シンクタンクという知的活動をメシのタネにしている牧野昇がそのノウハウを明らかにした本である。

「生きがい」とは、人間にしかない前頭葉を常にいきいきと活動させることだ。前頭葉が働き、考え、創造することによる「自己完遂感」が生まれる。それを牧野は生きがいと呼んでいる。この本の中で牧野は、シンクタンクを立ち上げ成功させた経験から、具体的なノウハウを惜しみなく披露している。情報収集と整理のコツ、企画書作成から商品のセールスまでのプロセス、効果的な組織づくりとマネジメントのあり方などを解説してくれる。例えば、プレゼンについては、大きい声ではっきりと話せ、相手の目を見て話せ、豊富な事例を盛り込め、個性的な点の強調せよ、。ユーモアを忘れず、そして相手を立てよ、など。

一方で、同時代の知的生産者たちの本のエキスも教えてくれる。「一日に何か一つ新しいことをかんがえることが脳にはいい」(糸川英夫)。「現地に立った経験と本から得た知識が結合し、自分の考えという子供が生まれる」(小田実)など、、。

日本が経済的にのし上がっていく時代に、シンクタンクがはもてはやされた。その雄は野村総研と牧野が育てた三菱総研だった。経済の高揚期にビジネスマンが知的生産として仕事をとらえるようになった時代に、牧野昇はその師匠として講演をし、多くの著書を書いた。代表的なものだけでも、「逆常識の経営 勝利を勝ち取る逆説思考と現場思考」「二十一世紀日本はこう変わっていく」「製造業は不滅です 日本再生に秘策あり」「創造のちから 「不思議な企業」林原の発想」「アウトソーシング 巨大化した外注・委託産業」「「悲観主義」が国を亡ぼす 独創にまさる日本の「協創力」」「日本経済虚々実々 正しい認識こそが企業を生かす」「牧野昇の「五転び」人生論」「新企業繁栄論」「牧野昇の苦言・直言 経済・産業・技術の針路を読み誤るな」「牧野昇は語る 二〇年先を読みとる先見性を持て」「60年代経営者の条件」「衰亡と繁栄 企業は“革新”をいかに進めるか」「牧野昇の新エリート学 エクセレント・ビジネスマンの条件」「五大技術革命が日本を変える これが衝撃のイノベーションだ!」「知的生産の方法 私の紙とエンピツでの商品づくり」「プランニング 予測と計画の科学」「超技術産業への挑戦」「企業をいかす技術開発」「経営を支える技術戦略」「世界一に挑む日本の工業技術」などがある。

以上の書名を眺めるだけでも、牧野昇が日本の技術と経済の旗振り役だったことがわかる。私の所属したビジネスマン勉強会でも、牧野昇のカバン持ちだった人からよく話を聞くことが多かった。この人も知的生産の達人であり、大学の教授として活躍していた。

仕事をしていると、常にトラブルに襲われる。困ったことが起こる。問題が発生する。ピンチの連続が日常だ。そのピンチを牧野は歓迎せよと言う。問題は解決するためにある。組織は不断に脱皮し続けなければならない。それは個人が成長し、組織が飛躍するチャンスである。この実戦的叡智は、産業界と産業人を励ました。その延長線上に今日の日本がある。今を生きる私たちは今の問題を解決しなければならない。

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