見出し画像

4月15日。 今川乱魚「順不同 能ある人が 先に逝く」

今川乱魚(1935年?ーー2010年4月15日)は、川柳作家。

本名充。早大法卒。大阪で川柳を始める。999番傘川柳会会長。東葛川柳会最高顧問。東京みなと番傘川柳会元会長、番傘川柳本社幹事。(社)全日本川柳協会会長。日本文藝家協会会員。日本川柳ペンクラブ常任理事。川柳人協会顧問。北國新聞、リハビリテーション川柳欄、川柳マガジン「笑いのある川柳」ほか選者多数。第3回日本現代詩歌文学館館長賞、第9回川柳・大雄賞、第40回川柳文化賞受賞。

川柳は江戸時代の俳諧の前句附点者だった柄井川柳に因んだ分野である。うがち、おかしみ、かるみという3要素が特徴で、人情の機微や心の動きをあらわす。現在では口語、破調、自由律、駄洒落もあり、俳句のような約束事もない、自由な文芸である。

乱魚は相当な大物だったうようで、今では「今川乱魚ユーモア大賞」が設けられている。以下、乱魚の川柳から。

十回と妻の名前を呼んでない
シャガールの生きものたちは飛びたがる
ゼロ金利持たざる者は強かった
内視鏡胃はワイセツに脈を打つ
画面見て患者の顔を見てカルテ
本物のライオンは歯を磨かない
やや惚けただけをよほどの惚けにされ
よれよれの千円札を出す弔意
ロボットの犬と慰め合う老後

東葛飾川柳会代表の高校教師・江畑哲男は、正岡子規と乱魚の共通点を3つ挙げている。生きることへの執念、リアリズム重視、些事へのこだわり。子規の『仰臥漫録』と比較して『癌を睨んで ユーモア川柳乱魚ブログ』を紹介している。そして弔意を込めて「韻文の革新者の巨星墜つ」と結んでいる。

私は第一生命の「サラリーマン川柳」のファンだ。毎年の大賞の発表を楽しみにしているが、一番の傑作は「無理させて無理をするなと無理をいう」だと思う。2015年に第一生命本館のマッカーサー記念室を訪ねた折に、一階のギャラリーでサラリーマン川柳の歴史をやっていた。2005年からの第一位の作品を掲載してあったのだが、改めて「無理させて、、」が一番との確信を持った。高校時代からの友人の松田俊秀君がビジネス川柳を詠む。彼の「爺ちゃんの口癖いつも老婆心」(不良長寿)も傑作だ。

乱魚は「今川乱魚川柳ブログ」で発表を続けていた。亡くなる4か月ほど前の2009年12月19日に発表した「順不同能ある人が先に逝く」がしばらく残っていたという。強烈な皮肉とユーモアが込められている名句だ。自分、そして自分の後の順番の人の「能」をまさに体を張って問うている。辞世の句として後世を意識した、確信犯の川柳だろう。川柳、ここに極まれり、だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?