3月5日。納谷悟郎「ただ声を当てればいいと考えている声優が多すぎる。目の前に客がいると思っていない」

納谷 悟朗(なや ごろう、1929年11月17日 - 2013年3月5日)は、日本の俳優、声優、ナレーター、舞台演出家。

本人は声優の前に俳優であると称していたが、声優としての活動が多くの人の記憶に残っている。以下の出演をならべてみると、この人の声にずいぶんと世話になっていると感じる。

『仮面ライダー』のショッカー首領のような悪役。『ウルトラマンA』のような正義のヒーロー。『宇宙戦艦ヤマト』ではヤマト艦長の沖田十三の声。声優ブームのきっかけになった。『クラッシャージョウ』では第三特別巡視隊司令、重巡洋艦コルドバの艦長であるコワルスキー連合宇宙軍大佐。 、、、

洋画では、クラーク・ゲーブル、チャールトン・ヘストン、ジョン・ウェインなど

の声を主に担当している。出演作は100本以上にのぼった。

『ルパン三世』の銭形警部は42歳から81歳までの39年間演じた。納谷は「銭形はいつまでも歳を取らないけど、僕は年々歳を取っていくので、合わせるのが少し辛いですね」と語っている。声を聞くと年齢がわかると言われるように、声も年を取るのだ。それを技術で克服していたのだ。

今では「声優」と呼ばれているが、以前は画の声の吹き替えの「アテレコ」に起用され、「アテ師」と呼ばれていた。また、番組ナレーションにも需要があった。リズムを区切るように喋るように特色を出した。後年この喋り方が「納谷節」と称されるようになった 。

私も声優という職業を持つ人に出会ったことがある。著書『偉人の命日366名言集』の言葉を読んでもらって録音することになった時、5時間ほどつき合った。このとき、声の強弱、高低、息の出し方、スピードの緩急、、などのテクニックの高さに感銘を受けた。また、台本を間違いなく読むには、高い教養が必要であることも感じた。この声優との交流を通じてやはりプロは違うと思った。

この声優という仕事を草分けとして世間に広めたのが、納谷悟郎という人である。「ただ声を当てればよい」と考える声優の存在を納谷は憂いているのだが、その後輩の一人に接してみて感じたことは、職人的にその仕事を深掘りしている仕事師の存在があり、その憂いが届いているということである。先達の姿、声、残した言葉などを受け継いで、声優という職業が、ひとつのジャンルとして確立していると思った。






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