3月24日。田村喜子「「方」がつくのは偉いのよ。だって、「親方」と「奥方」には頭があがらないでしょ」

田村 喜子(たむら よしこ、1932年10月25日 - 2012年3月24日)は、日本のノンフィクション作家。

「琵琶湖疏水の完成は、明治期の日本土木界が世界に誇る大工事であり、燦然と輝く金字塔である。京都を近代都市として再生させるため、生命を賭して難事業に挑んだ若き土木技師田辺朔郎ら、男たちの熱い闘いと不屈の精神をノンフィクションタッチで綴る長篇」という『京都インクライン物語』で1982年に第1回土木学会著作賞(1991年から出版賞)を受賞した。

それ以降、田村は土木をテーマとしたノンフィクションを執筆していく。『疏水誕生』『物語 分水路 信濃川に挑んだ人々』『関門とんねる物語』『ザイールの虹・メコンの夢 国際協力の先駆者たち』『浪漫列島「道の駅」めぐり』『土木のこころ 夢追いびとたちの系譜』『野洲川物語 小樽運河ものがたり』、そして 2010年の『余部鉄橋物語』などである。

田村の描いた人々は、国鉄最後の土木屋藤井松太郎、東洋のパナマ運河ともいうべき世紀の大土木事業である越後平野の守り神である大河津分水路の建設に挑んだ宮本武之輔、世界初の海底隧道に挑んだ国鉄技術陣国鉄技術陣、ラオスのナムグム・ダム、ザイールのマタディ橋、を完成させた非凡な技術者群像、20世紀日本で活躍した土木技術者たち、国土の礎づくりを使命とし邁進した男たちの魅力的な人物像、、など日本の技術者魂の化身たちだ。

土石・木材・鉄材などを使用して、道路・橋梁・鉄道・港湾・堤防・河川・上下水道などを造る建設工事を行う地味な技術者は、「土方」と呼ばれることがある。冒頭の言葉は、その一人である苦瀬博仁(東京海洋大学教授)に田村喜子がユーモアを交えて励ました言葉である。「家」がつく偉い人よりも、現場に立ってものづくりを行う技術者たちは励まされて土木学会の賞を送ったのであろう。この賞は、その後、八田與一を書いた古川勝三、伊能忠敬を書いた井上ひさし、ローマ人の物語を書いた塩野七生などが受章している。2010年に出張で台湾の八田ダムを訪問したときに私が読んだ古川勝三の本がこの賞を受賞していたことを思い出した。その第一回受賞者が田村喜子だったのだ。




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