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1、害虫

人間は、とかく勝手で主観的で自己中心的なものです。

「害虫」。これほど主観的な言葉がありましょうか! 「自分(たち)にとって」被害を及ぼす虫。反対語は「益虫」。「自分(たち)にとって」利益になる虫。損害か利益か、それはただの主観であって、その虫はただ本能のままに生きているだけ。なのに人間はレッテルを貼り、この虫は害がある、この虫は益があるなどと、勝手気ままに呼んでいる。

ただ、だからこそ非常に「人間臭い」言葉とも思えるのです。考えてみれば、「虫」がつく言葉は、感情と結びつくことも多い。

「腹の虫が収まらない」。これは怒りが収まらないという意味。「虫唾が走る」。吐き気がするほど不快でたまらないという意味。その他にも「虫がいい」「虫の知らせ」「虫が好かない」…。色々ありますが、どちらかというとネガティブな感情に基づく言葉が多いような気がします。

これはなぜなのだろうか。

勝手に推測しますと、生物の進化上、虫と人間が対極にあるからではないでしょうか。

人間は、脳みそを進化させて、1人の人間が理性を備え、何でもできるような方向へと導かれてきました。レオナルド=ダ=ヴィンチのような「万能の天才」も生まれます。一方、虫はというと、1匹の虫が本能のままに生きるように導かれ、それが集団で群れを成して力を持つような方向へと導かれています。「ゴキブリは1匹見たら100匹いると思え」と言われるように、基本、虫はたくさんいます。一点突破の能力を持つ者同士、数の力で戦います。個性で勝負はしないのです。アリなどはその典型です。集団で、一生懸命、何かに憑かれたかのように餌を巣穴に運ぶでしょう。もちろん女王アリはいますが、大部分が働きアリです。一生、ひたすら餌を運ぶだけの人生、いや虫生を過ごすのです。

その姿が、原則1人で、個性を持って世の中に相対する人間には、何か不気味に思えるのではないでしょうか。この世界で、縁あって同じ時間を生きる生物同士なのに、何か別の使命を持って生きている「異形の者」と相対する気になるのではないか。だからこそ、ネガティブな言葉が多い。だからこそ、ゴキブリに対しては「害虫」のレッテルを貼る。

ちなみに、ゲジゲジはゴキブリを捕食してくれるので「益虫」と言われますが、そのグロテスクな外見で不快感を与えてしまうから「害虫」も兼任するそうです。益虫なのに害虫…。

…何と自分勝手なのでしょうか、人間というものは! 

その一方で、ゴキブリと色はさほど変わらないカブトムシを高値で取引したり、夏の自由研究に使ったりしているわけです。人間にとって「きれいな声で鳴く」スズムシは愛でられます。人間にとって「きれいな風景を作り出す」ホタルの川は、観光名所となります。カイコやミツバチは、絹や蜂蜜を人間にもたらしてくれるから「益虫」なのです。繰り返しますが、虫たちはただただ、本能に基づいて生きているだけなのに…。

しかし、そのような虫たちを「害虫」「益虫」と「本能的に」区別し、それが大多数の人たちに受け入れられている人間とは、理性でコーティングされた本能的な生き物なのかもしれません。

2、組織における「害虫」

それでは視点を変えて、人間が同じ人間に対して、意識的あるいは無意識的に「害虫」と感じてしまう事例を考えてみましょう。

注:この文章は、あくまで言葉的な考察であり、差別的な意図はないこと、組織的な利益と損害を考えるために、刺激的な言葉である「害虫」を使うことをご容赦ください。

「泣き虫」「弱虫」など、メンタルに関する言葉もありますが、特に、組織の中で感じてしまう言葉を4つ挙げます。

「怠け虫」…仕事をしない人への蔑称。

「点取り虫」…テストで点が良い人や高評価の人への蔑称。

「金食い虫」…利益を出さずに浪費ばかりしている人への蔑称。

「獅子身中の虫」…内部にいながら組織に害を与える者への蔑称。

…蔑称ばかり並べてみましたが、どうでしょうか。あなたの組織に、このように感じる人はいないでしょうか?

まず「怠け虫」は、「働きアリの法則」もあるくらいですから、組織的に働けば、一定数は必然的に生まれてしまうのかもしれません↓。

「点取り虫」は、優れた人であるかもしれませんが、パフォーマンスに走って、上へのおべっかやこびへつらいで、点を稼ぐ人もいます。テスト的な点数のみを追い求めて、点を取ることだけに力を注ぎ過ぎてしまい、本質が見えないこともあるかもしれません↓。

「金食い虫」は、初期投資など後のリターンが計算された金食いならいいですが、無意識に浪費してしまう人(部署)もある。ネット情報やAIの進化で、知らずに金食い虫になるパターンもありそうですね↓。

「獅子身中の虫」は…、もうそのままです。

…さて、このような組織における「害虫」が出るのをどう防ぐべきか。

言葉遊びのようで恐縮ですが、「外注」を有効活用するのはどうですか?

3、外注

外注とは、そのままの意味です。「外部に注文すること」です。つまり、組織の中ではなく、外に仕事を頼むこと。アウトソーシングとも言います。

もちろん、外注にはメリットとデメリットがあります。

デメリットを先に言うと、「金がかかる」「機密が流出する危険性がある」「手間が逆にかかる」などです。しかし、メリットも多い。「作業が少なくなって非効率な仕事が減る」という直接的な効果もありますが、間接的には「組織外の風土に触れて視野が広がる」「業務を明確化して指示をする必要がある→業務を見える化する」という効果があります。

先ほどの「害虫」で言うと、こういうことです。

「非効率な仕事が減るため、よく分からない仕事で忙しさを装っている『怠け虫』を防ぐ」「組織外の人と関わるため、組織内だけの論理では動かなくなり、『点取り虫』を防ぐ」「コスト意識が高まるため、見えないコストがあぶりだされて『金食い虫』を防ぐ」ひいては、「獅子身中の虫」がどこにいるのか、見える化できることへとつながります。

もちろん、「外注」によって逆に新たな「害虫」が増える危険性もあります。まず、「外注のための仕事」が増えてしまいます。外注に頼り過ぎると組織内のパワーが減って「怠け虫」が増えるかもしれません。外注先の威光を笠に着た「点取り虫」が増えるかもしれません。騙されてコストがべらぼうに高い外注先を利用してしまう「金食い虫」が増えるかもしれません。「害虫」を農薬で殺したら、かえって天敵が減って、別の「害虫」が増えた、という事例に似ています。外注はやり方を間違えると、かえって害が増える危険性もあるのです。

しかし、だからこそ、外注のメリットとデメリットを踏まえて、効果的に「害虫」を防ぐ必要があります。まずは、組織として、現状で何に被害があるのか、どこに被害があるのか、どうやって被害を受けているのか、調べること。その調べる動機付けになるという1点でも、外注を一考するメリットがあるのではないでしょうか?

4、優しく「仕事ごっこ」を滅ぼす

この記事では、「害虫」から「外注」を(いささか強引ながら)結び付けて、「害虫は外注で防ぐ」ことを考えてみました。

最後にまとめとして、沢渡あまねさんの著書を紹介します。

『職場の問題かるた』などで、職場の問題をズバリ見える化され、新刊『仕事ごっこ』(2019年7月6日発売)を書かれて、業務プロセス改善や組織活性に尽力されておられる、沢渡あまねさん。

「『仕事ごっこ』をやさしく滅ぼす」という沢渡あまねさんのコンセプトに共感し、私も、このように引用リツイートしたことがあります↓。

上述した「働きアリの法則」についても、新刊『仕事ごっこ』の第12話で、しっかり書かれているとのこと。「管理職ごっこ」「管理職ヅラしてマウンティングする人たち」…なかなかエッジが効いています↓。

「外注」の一形態である「調達」につきましても、このような対談記事がありましたので、リンクを貼ります。「調達コンサル」の坂口孝則さんとの対談ですが、まったく噛み合わない対談(まるで別の世界から来た人たちのよう)が、かえって「調達とは」「外注とは」を考えさせられます↓。

沢渡あまねさんの新刊、『仕事ごっこ ~その"あたりまえ"、いまどき必要ですか?』は、2019年7月6日発売です! 最後にもう一押しさせていただいて、締めとします↓。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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