１、甲子園には魔物が棲む

まず、梅津有希子さんの『高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究』という本を紹介します。本当にこの本を読むと、高校野球が100倍楽しめるので、お勧めです↓。

この方は、高校野球を「応援」「ブラバン」の側から考察されています。高校野球を彩る欠かせない要素の１つが、吹奏楽（ブラバン・ブラスバンド）による応援。「狙いうち」「サウスポー」などのメロディが、脳内で思い浮かぶ方もいるのではないでしょうか。

野球は「メンタルのスポーツ」という側面もありますので、ノリの良い曲、リズムの良い曲によって、選手もテンションが高まり、良いプレーができるということもあるでしょう。逆に、この曲が流れると「逆転されるんではないか」と、相手が嫌な気持ちになる、球場全体が異様な雰囲気になる、という曲もあります。その曲のことを『魔曲』と呼んだりします。

甲子園の常連、智弁和歌山の『ジョックロック』などが有名ですね。

この『魔曲』が生まれた秘話はこちら↓。

よく言われることですが、「甲子園には魔物が棲む」んです。この曲が、魔物を呼び起こし、大逆転劇を生む…と言ったら言い過ぎでしょうか。

２、ＳＥＥ ＯＦＦ

さて、前回のnote記事でも紹介しました「ＳＥＥ ＯＦＦ」について。前回の記事はこちらから↓。

元々は『ＢＲＡＨＭＡＮ』（ブラフマン）というバンドの一曲でした↓。

この曲を高校野球の応援に初めて取り入れたのが、茨城県の日立一高と言われています。2001年頃のことです。県予選で日立一高と対戦した常総学院が「あの曲、かっこいい！」とほれ込み、甲子園でも演奏、瞬く間に全国に広まっていったそうです。歌詞に『to the end』というフレーズがあるのですが、これが「甲子園」に聞こえる（空耳）。そこで、「さぁ燃えろ白亜の球児たち　今こそその時　栄光の火をかざし　いくぞ甲子園」という替え歌がついて、絶妙の応援歌になったそうです。

それではお聴きください。本家本元、日立一高の『ＳＥＥ ＯＦＦ』はこちらから↓。

全校応援もいやが上にも盛り上がり、球場全体が異様な雰囲気に包まれる…。『ジョックロック』にも負けずとも劣らない「魔曲」です。

３、お米券

その格好いいメロディで、全国の高校の応援用に広まっていった「ＳＥＥ ＯＦＦ」ですが、北海道あたりでは意外なことが起きていると言います。冒頭の梅津有希子さんによると、「お米券」というネーミングで「ＳＥＥ ＯＦＦ」が演奏されているそうです。元記事はこちらから↓。

梅津さんは、この謎を解き明かすべく、北海道の強豪、北海高校に聞き込み調査をしたそうです。この記事から、『お米券の謎』の部分の文章を、少し引用します（一部編集しています）↓。

…「お米券ってなに？　どんな曲？」「『SEE OFF』です」「えっ、どうして『SEE OFF』のことをお米券って呼んでるの？」「これが僕たちの伝統です！」。で、先生に聞いたんですけど、先生も「もうわからない。昔からお米券って呼んでる」。…「なんでお米券なんだろう？」っていうようなことをTwitterで言っていたら、「これじゃないですか？」とフォロワーの方がお米券のテレビCMのURLを送ってくれたんですよね。それを見たら、やっぱり似ているんですよ。『SEE OFF』に。たぶん違う曲なんですけど、曲調が似ているんですよね。なのでたぶん、北海はそこから取って「お米券」と呼んでいるみたいなんですよね。…「『SEE OFF』です」って言っていたからわかっているんですよ。でも、伝統の呼び名はやっぱり継承しなきゃいけないので。「先輩たちがつけた呼び名は勝手に変えるわけにはいかない。我々の代で……」っていう感じで。…

茨城県で取り上げられた曲が、兵庫県の甲子園で全国に広まり、北海道では「お米券」と呼ばれる。良い音楽、雰囲気に合った曲というのは、みんなが聴きたい、演奏したい、この曲で応援したい、という魔力を持っている。それが代々、各校の応援団に受け継がれていく…。このことを示す、非常に面白いエピソードだと思いました。

４、2019年、令和の新たな魔曲は…

この記事では「魔曲」を取り上げてきました。2019年、令和の新時代のこの夏も、どこかの球場で新たな魔曲が生まれるのではないかと思います。

まとめにいきますと、人は誰でも心の中に「魔曲」を持っていると思うんですよね。「勝負曲」と言い換えても良いかと思いますが、この曲を脳内に流すと、テンションが上がり、逆転も容易に思えてくる、というような曲。プロ野球でも、選手の入場シーンではお気に入りの曲が流れてテンションが高まりますよね。

別に一曲に絞る必要はなく、自分の状況に合わせて流せるように、たくさんの魔曲を持っていてもいいんじゃないかと思います。ぜひ、皆さんも「ここぞ！」という時に脳内に流す魔曲をストックしていってはいかがでしょうか？ 

ちなみに、私の一番の魔曲は、『孤独のグルメ Season3』の「エレキのツンドラ」です。こちらから視聴できますので、よろしかったらどうぞ↓。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。