茨城弁

1、Dr.コトー診療所

地域医療に鋭くメスを入れる漫画、山田貴敏さんの『Dr.コトー診療所』

医療設備も少ない南海の孤島へ、東京の大学病院出身の外科医、五島健助がやってきたところから話が始まります。着任初日、診療所を訪れた患者はゼロ。しかし、徐々に地域からの信頼を得ていく…というストーリーです。

吉岡秀隆さん主演でドラマ化もされています↓。

今回のnote記事は、この「Dr.コトー」が、「地域おこし協力隊」に似ているのではないか、というお話です。

2、地域おこし協力隊との共通点と相違点

まず、共通点を挙げてみましょう。

◆都会から地方へ
◆特殊技能を持っている
◆地方にはない視点を持っている
◆最初は受け入れられない
◆新参者扱い
◆徐々に地域に溶け込む
◆わけありのように見られる
◆いずれ地域を去るかもと心配される
◆定住してくれればいいのにと思われる

…どうですか。似ていませんか?

地方から見れば、なんで縁もゆかりも無い都会者が、わざわざこんな地方まで来たんだろうと、不審に思います。しかし、その持っている特殊技能と、地方にはない視点で、徐々に地域に溶け込みます。定住してくれればいいのに。ただし期間限定で、いつかは去るかもしれない。

もちろん、このようにうまくいく協力隊ばかりではありませんし、いつ去るかわからない民間のDr.コトーに比べて、協力隊は定住を前提とした最長3年の半公務員という違いもあります。ですが、根本的なところにおいて、共通する部分が多いように思うのです。

それは「自ら望んで都会から『その』地方にやってきた」という点です。

Dr.コトーは(ネタバレなのであまり書きませんが)東京を離れる理由はあったものの、その島に来る以外の選択肢もあったでしょう。日本全国に過疎地はたくさんありますので、もちろん理由はあるものの、別に他の地域でも良かったはずです。しかし、そこに来た。船酔いを押してやってきた。地域おこし協力隊も同じです。今やたくさんの自治体が採用していますので、選択肢は多い。しかし、そこを選んで来ている。自らの意志で。

加えて「地方にはない技能と視点を持っている」という点も大きい。

Dr.コトーは島の人たちの病気を治します。それは、今までに無かったことです。以前は、病気になったら船に乗って、遠い病院まで通わなければならなかった。しかし、Dr.コトーは、患者の違和感や体調不良を察し、診断し、適切な治療を行うことができる。地域おこし協力隊も同じです。以前は、都会の業者に頼まなければ進まなかった「情報発信」を、協力隊がやってくれる。地域の違和感や組織不良を察し、(自分なりに)診断し、適切な企画やイベント・事業を行うことができる。

ただし、決定的に違う面があります。それは、Dr.コトーが原則1人の判断で治療を行うのに対し、地域おこし協力隊の事業は(原則)その自治体の担当者の許可が必要である、という点です。半公務員で自治体に雇用されている形式がスタンダードなので、しょうがない面はあります。

ただし、何でもコトーは1人で治療にあたるわけではありません。

Dr.コトーには、看護師で助手の「星野さん」がいます。ドラマでは柴崎コウさんが演じてましたね。コトーと助け合い、その島の情報(人間関係など)をコトーに伝え、患者との橋渡しをする、大活躍の名サポーターです↓。

さて、地域おこし協力隊における、この「星野さん」にあたる役割は、誰が担うのでしょうか?

…もうおわかりですね。それは、「自治体の担当職員」です。

3、担当職員は星野さんになれるか

星野さんは、コトーと助け合い、その島の情報(人間関係など)をコトーに伝え、患者との橋渡しをする。

担当職員は、地域おこし協力隊と助け合い、その地域の情報(人間関係など)を隊員に伝え、地域住民との橋渡しをする。

してますかね?

もちろん、協力隊員は、さまざまな背景と技能と視点を持った人たちです。Dr.コトーのように確かな技術は、まだ持っていないかもしれない。しかし、あえてその地域を選び、色々な大事なものを断捨離して、その地方に飛び込んできた人たちですから、やる気はあるはずです。

そのサポートを、星野さんのように、してますかね?

もし、Dr.コトーのサポートを星野さんがしなかったら、看護まで丸投げにしていたら、島の情報を伝えなかったら、コトーの医療パフォーマンスは半減していたでしょう。地域おこし協力隊のサポートを担当職員がしなかったら、協力隊の地域おこしパフォーマンスは半減すると思います。

このような辛い事例も起こりうるわけです↓。

「星野さんのように、診療所の仕事だけに専念できないんだ。役場の他の仕事もあるんだから。そもそも人手が足りないから協力隊を採用しているんだから、自己判断でどんどんやってよ! 頼むよ!」と思われるかもしれません。しかし、それならそれで、協力隊の活躍しやすい環境を整備したり、首長や地域のキーパーソンとの渡りをつけておくなり、民間の応援団を作るなり、丸投げにしてもやれることはあるはず。信頼して範囲を決めて権限移譲するのと、ただ単に勝手にやらせるのとでは、雲泥の差があるのです。

このあたりが、ミスマッチングや任期途中で失意の退職などを防ぐ、鍵になるのではないかと思います。

もちろん、地域や住民という自然相手・人間相手の仕事ですから、そんなに簡単にいくものではないでしょう。地域おこしは、薬を渡せば治る、手術すれば治る、というわけではありません。体質改善のように、何年もかかる課題もあります。頑固な(ましてや新参者の)人の言うことを聞こうともしない地域住民(Dr.コトーで言えば患者さん)も多いかもしれません。

しかしだからこそ、地域の事情に詳しい担当者の力が、地域おこし協力隊には不可欠なのです。もし、自分では支えきれない(というか行政だけでは基本支えきれない)のならば、自分の代わりに隊員を支えてくれる「民間の協力者」「民間の応援団」を作る。Dr.コトーでも、協力者がどんどん増えてきて、医療がやりやすくなってきてましたからね。

もし、地域おこし協力隊の「採用段階」から携わる担当者がいるのなら、まずは自分が「Dr.コトー」の視点を持ってみる必要があるのでは。自分の担当地域の現状を診断し、何が課題かをつかみ、足りないものを認識する。その上で、適切な「地域おこし協力隊」=「その地域に合ったDr.コトー」を連れてくる。外科の先生が必要なのに、皮膚科の先生を連れてきたら、やってやれないことはないでしょうけど、かなりミスマッチングですよね…。

自治体の担当職員は、星野さんです。例えを変えれば、ポケモンマスターです。猛獣使いです。地域おこし協力隊の方と「協力」して、ともに課題にチャレンジしてくれれば、隊員の方も心強いのではないかと思います↓。

4、わが医を得たり

この記事では、「Dr.コトー診療所」を切り口として、地域おこし協力隊について考えてみました。

最初は「ポケモンマスター」を切り口にしようかなと思ったのですが、「ミュウツーの逆襲」をまだ観てないので…(笑)。ただのポケモントレーナーではなく、ポケモンマスターを目指すことが大事ですね。ぜひ「自治体の担当職員」の方には、ただの協力隊トレーナーではなく、協力隊マスターを目指していただきたいです。素晴らしい協力隊、GETだぜ!(笑)

なお、地域おこし協力隊につきましては、こちらのnote記事もぜひ↓。

また、「伊豆おこしプロジェクト」を手掛ける「てらけんさん」のブログ記事も、とてもよくまとまっているので、参考になります↓。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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