学究のツクバ修正

1、思春

6年ごとに世代を分けて書いている記事も3回目。今回は、13歳から18歳までの世代です。

前の7~12歳については、こちらの記事になります↓。

この13~18歳の世代のキーワードは「思春」です。思春期の思春ですね。まさに思春期にストライクの世代です。

思春期と言えば甘酸っぱいもの。日本初の乳酸菌飲料カルピスは、2019年7月7日(昨日ですね)で、100回目の誕生日を迎えたそうです↓。

1919年の七夕に生まれた飲み物を、私たちがまだ愛飲していることを知ると、開発者の三島さんも喜んでいるでしょうね。

カルピスの生まれ故郷、モンゴルでは、馬が自由に草原を駆け回っています。この世代はまさに「馬」のようなもの。他の世代と比べて、どこまででも走れる元気と体力が溢れる反面、しっかり手綱を握っていないと、どこまででも突っ走ってしまう危険性があります。

ちなみに、この記事のタイトルについては、こちらをどうぞ↓。

2、学校と部活という名の手綱

さて、学校制度的に言えば、13~15歳が中学校、16歳~18歳が高校、にぴったりはまるようなイメージです。

とはいえ、前回もご紹介した「世界の学校体系」によると、世界的にはそんなにぴったりしているわけではない↓。

日本においても、「小中一貫校」「中高一貫校」「高専」「中卒で働き始める」「定時制高校」「通信制高校」「高卒認定」など、様々なパターンがあります。中学3年、高校3年、とは、一概に決められないのです。そもそも、15歳までが「義務教育」なわけですから16歳からは「義務」ではない。もう少し言うと、義務教育の「義務」とは、「子どもが学校に行く義務」ではなく、「大人が教育を受けさせる義務」なんですね↓。

とはいえ、日本社会において、13歳~18歳の大多数の人が、いわゆる「学校」に行っている事実は厳然として存在する。

このような状況は、以前はそうでもありませんでした。高校への進学率の推移を見てみましょうか。戦後の推移↓。

昔は高校に行く人のほうが少なかった。しかし、いわゆる「高度経済成長」の時期に高校進学率は伸び続け、今では100%に近いほどになった。

しかしその裏側では↓。

通信制高校の割合が増え、不登校や中退する生徒もいる。「通信制高校ナビ」のこの記事の最後にありますように、

「どんな選択をしようとも、だれも正解を知らないのだから、何を選んでも間違いではないだろう。大事なのは、本人が持てる選択肢の中から納得して選べるかどうかだ。」

と言えるのではないでしょうか。

そもそもなぜ、この世代は「学校」がメインとなってしまうのか?

1つには、推測ですが、「学校」と「部活」という手綱でエネルギーがありあまっているこの世代をコントロールする狙いがあるような気がします。

この世代を過ぎた読者の方は、ご自身の13~18歳の頃を思い出してください。…いわゆる「若気の至り」「血気盛ん」「箸が転んでもおかしい」「部活に一生懸命」「趣味に一生懸命」「〇〇に一生懸命」などのエピソードはありませんか?

この世代の裏テーマは「保護者への反抗と自己の覚醒」です。

要は、自分自身が成長していくので、それまでは無条件で受け入れてきた環境から抜け出したい。自分はもう何でもできるという「脱出願望」「全能感」、まだまだ経験が足らない、お金もない、世間知らずだという「葛藤」、徐々に身体的にも性を意識するというどうしようもない「欲求」「衝動」がないまぜとなることが多い。とんでもない犯罪や、ヤンチャ的な反社会的行動に走ってしまうこともあれば、自分が信じられないために、スゴイと思った人や作品に、必要以上に熱中してしまうこともある。

「反抗期」「中二病(厨二病)」という言葉は言い得て妙で、このどうしようもない精神状況をうまく表している言葉だと思います。

私もこの世代の自分自身のことを思い返していくと…赤面するようなことだらけです(苦笑)。比較的当たり障りのない経験で言うと、中学→高校の際に、カルチャーショックを受けたことを思い出します。

中学は「自宅周辺」の社会だったんですが、高校は「全県レベル」になりますので、当然、クラス数が増える。今まで行ったことのない地域からのクラスメイトもいる。私などは、同じ中学からの同学年の生徒がほとんどいなかった。出身中学で言うとレアキャラだったんですね。中学までは「オンリーワン」、高校からは「ワンオブゼム」。たくさんの生徒の中の1人に過ぎなくなる。そうなると「キャラ」を作っていき、個性を出さないと生きていけない(と思い込む)。ほとんど若手芸人の世界です。中学までの「お山の大将」が、高校に行くと同じレベルか上のレベルの人たちと会って自信を喪失する、というパターンはよく聞きます。私は、どちらかというと「自分の外」に押し出していったのですが、「自分の中」つまり「内省的」ともすれば「自分の世界に引きこもる」人もいるのだろうなと思います。

そのような状況を打破、あるいは管理する1つの方法が「部活」です。

しかしこれも千差万別で、「小さい頃から甲子園を目指してきたから野球部」あるいはサッカー部、バスケ部、などという人は悩まなくてもいいかもしれませんが、そういうのが無い人は、どの部活に入るか悩む。運動部系の部活、文化部系の部活、あるいは「帰宅部」となる。意外とこの「部活選び」は、この世代だけではなくこれ以降の世代にも大きく影響を及ぼします。高校野球の世界では、野球の強豪校に進学するために、親元を遠く離れて寄宿舎に入る、などという事例もたくさんあります。

大袈裟に言うと、この世代での「部活体験」の有無が、精神的にも肉体的にも、これ以降の人生の土台に大きく影響を与えるように思うのです。有る人は有るなりに、無い人は無いなりに…。

3、学歴という名のモノサシ

違う視点で考えてみましょう。「学歴」についてです。

中学と高校は、「留年」や「落第」が、大学や専門学校に比べると少ない。よく言われることですが、日本では「入試」が難しくて「卒業」は簡単です。そもそも学校でどんなことを学んだのかが重要なのに、なぜ世間の大人たちは学歴で人を見ることが多いのか?

参考文献を1つ挙げましょう。浅羽通明さんの『大学で何を学ぶか』↓。

この本を、私は高校3年生(18歳)の時に、むさぼるように読んだことを覚えています。1996年の初版なので、もう25年近くも前の本なのですが、現在の社会にも共通する部分が多いように感じます。

内容は逐一は挙げられませんが、学歴に即して1つ挙げると、このような記述があります。

「やはり民間企業は東大生を欲しがる。それは、個人の能力以上に、彼らの背後につながる人脈、東大OBという『世間』が欲しいのである」

個人の能力よりも、学歴につながる「世間」の方が、価値がある。もちろん、個人の能力がものをいう個人事業主・フリーランサーや、プロ野球などの競争社会ではそうは言えない部分がありますが、世の中では「学歴という世間」を重視する部分も多いということです。いや、実力主義に見える政治家の世界でも、立候補した人の「学歴」を見たりしませんか? 海外の学校を出ていたりすると「すげえなあ」と思いませんか? お笑い芸人でも、大学を出ていたりすると知的な感じがしませんか?

そのようなことをひっくるめて、13~18歳でどのような「進路」を決めていくのか? 中学・高校が「大学進学への予備校化」しているという指摘もあります。一方で、夢を追って、プロの野球選手やサッカー選手を目指す人もいる。最近では、「高校生起業家」の例も増えています↓。

自分の頭で、どのように考え、どのように過ごすか。保護者の「スタンドの射程範囲外」に行きがちな世代だからこそ、重要ではないでしょうか。

4、ダンクと先生

テーマを「思春」と置いたのに、あまり「恋愛」とか「親友」などのワードを出さずに、学校や学歴がメインの記事になってしまいました…。

そこで最後に、漫画を2つご紹介しましょう。この世代は、漫画の主要な読者層の世代なので、石を投げれば当たるほどに作品が多いのですが、特に2つをチョイスします。

というか、1つめは紹介するまでもないかもしれません↓。

井上雄彦さんの『SLAM DUNK』(スラムダンク)です。

1~2巻は、ヤンキー漫画かバトル漫画かって感じなんですが、ここまで良質の青春スポーツ漫画になるとは…。「野球」「サッカー」に加えて「バスケ」が部活界の花形になったのは、間違いなくこの作品の影響です。

あの松井秀喜さんも、八村塁選手のNBA1巡目指名に際して、野球離れを危惧してこの作品を口に出すほどの名作です。主人公の桜木花道が「非モテ」「バスケ未経験者」という設定が、逆に共感を呼んだのでしょうね。

2つめは、こちらは逆に、スポーツとは無縁。しかし、スポーツ以上の情熱(情念?妄想?)が燃え盛っています。

武富健治さんの『鈴木先生』です。ドラマ化・映画化もされています。

スラムダンクの安西先生とはまた異なるスタンス。中学校の先生である鈴木先生の、過剰なまでの苦悩っぷりをどうぞ味わってみてください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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