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1、智辯和歌山VS明徳義塾

2019年(令和元年)8月13日(火)。101回目の夏の甲子園大会。

和歌山県代表の智辯和歌山と、高知県代表の明徳義塾。ともに名門校同士の対戦。どっちが勝ってもおかしくはありません。かたや智辯和歌山は名将高嶋監督の後継者である中谷監督が率いて、「C」の一文字の応援で有名。かたや明徳義塾は馬淵監督、あの松井秀喜さん五連続敬遠で有名。春夏を通じて、甲子園での対戦はこれで3回目。

特に、2014年3月のセンバツでは、延長15回サヨナラワイルドピッチという劇的な幕切れで、球史に残る一戦として名高いです↓。

2002年の夏には、決勝で戦っています。いずれも明徳義塾の勝利。智辯和歌山にとっては、明徳義塾に勝つ、というのは悲願だったのです。

さて、結果はどうだったのか?

◆智辯和歌山7-1明徳義塾

見事、甲子園では3回目の対戦で、智辯和歌山が勝ちました。その様子を見ていた人たちからは、こんなつぶやきがもれました↓。

代表して3人の方のツイートを引用しましたが、同様のことをつぶやく人は多数いました。もちろん、私も同感でした。マジ=本当かよ=マジック、にかかっている点が、このツイートのキモです。

今回のnote記事は、智辯和歌山の「魔曲」についてです。

2、ジョックロック

そもそも、魔曲とは何か? 私は、以前にこのnote記事を書きました↓。

簡単に言うと、高校野球のブラバンの応援で、この曲が鳴ると予想がつかないプレイが生まれたり、逆転したりする曲、のことです。魔力を帯びた曲、だから魔曲。

その中でも特に有名なのが、智辯和歌山の魔曲、ジョックロックです。

この記事によると、ネタ切れで曲を探している中で、ヤマハのデモテープに入っていた曲から、偶然に採用されたとのこと。まさか作曲した方も、この曲が智辯和歌山の応援に使われて、「甲子園に住む魔物を呼び起こす」とまで言われるとは予想すらしなかったでしょう。

このジョックロックが鳴り響く7回、智辯和歌山は、同点のイレギュラーゴロ、3本のホームランなどを含む猛攻で、一気に明徳義塾を突き放したのでした。まさに「魔曲マジ魔曲」。新聞の記事でも取り上げられました↓。

普通のショートゴロがイレギュラーし、同点打となる…。

1イニングで3本ものホームランが飛び出る…。

これだけ見れば、まさに魔曲の面目躍如、です。

3、人事を尽くしてマジックを待つ

しかし、と私は思い直しました。

これは、魔曲ジョックロック「だけ」の逆転劇ではないと。

実際にバットを持って打席に立っているバッター。采配する監督。ジョックロックを奏でる一人ひとりのブラバン奏者、そして応援席の皆さん。関係者全員が一丸となって作り上げた逆転劇ではないか。そう、甲子園は1つの曲を流せば必ず勝てるような、甘い場所ではないのです。もしそうならば、智辯和歌山は毎回優勝しているはずです。

事実、先ほどの記事の中には、やれるだけのことをやる、智辯和歌山の選手の姿勢について触れられていました。一部のみ引用します↓。

黒川たちが言うように、打球が不規則にはねる「イレギュラー」はたまたま起きるのか。智弁和歌山で1年夏から5季連続でショートを任されてきた西川は苦笑いで答えた。「分からないです。でも……」。この日は4本のゴロを受けたが、「一度もイレギュラーはなかったです」。右の手のひらは真っ黒だった。
智弁和歌山の内野手は守備位置につく前に、荒れた走路を手でならす。できる限りの範囲を、丁寧に。西川は言う。「やれることをやらずに打球がはねたら、後悔するので」
二塁を守る黒川も同じ。春までは、つばの裏に「手でならし攻めろ」と書いた帽子をかぶり、ノックを受けてきた。試合後、勝利チーム側でインタビューを受ける黒川の右手は、甲子園の黒土にまみれていた。(小俣勇貴)

「やれることをやらずに打球がはねたら、後悔するので」

もちろん、手でならしたら絶対にイレギュラーしないかというと、そうではないかもしれません。明徳義塾の内野陣も、あらかじめ手でならしていたかもしれない。しかし、大事なことは心がけです。凡事徹底。そういうことを気付かされる、とても良い記事でした。

また、6回からエースを投入、ぴしゃりと押さえて、7回の反撃ムードを作った好投と采配も、ビッグイニングを呼び込んだのではないでしょうか。決して、魔曲だけが魔物を呼び起こすのではないのです。

ベンチにいないただの第三者の目であえて言うならば、明徳義塾サイドも「魔曲封じ」に動ける余地もあったのではないか、とも思います。

それまで6回をいい流れで押さえてきたピッチャーを交代させる。非常に難しい継投ですが、ちょっと嫌な感じになった時に、次のピッチャーにスパッと代えていれば、間を取れば、智辯和歌山サイドを焦らしていれば、3本ものホームランは喰らわなかった、かもしれません。結果が出た後の「タラレバ」なら、何とでも言えますが…。

野球は心理的なスポーツ。これだけ「魔曲」が喧伝される世の中では、実際に選手の心理にも影響を及ぼし、パフォーマンスにも影響が出るのかもしれません。しかし、心を落ち着かせ、甲子園にいると見せかけて実は自分の中にいる「魔物」を呼び起こさないようにするのも、同じ選手です。

いずれにしても、「魔曲」を生み出すのは、すべて人の行動なのです。

4、令和最初の優勝は?

いかがでしたでしょうか?

今回の記事では、智辯和歌山の「魔曲」について取り上げました。この劇的な試合を味わって、ここで書いておくしかない!という感じでした(笑)。

甲子園大会も、いよいよ決勝に向けて盛り上がってきます。令和最初の優勝校はどこなのか? 目が離せませんね。個人的には、茨城県代表の霞ケ浦高校を破った「履正社」に優勝してほしいのですが…。いや、1回戦負けはしましたが、今年の霞ケ浦は本当に強かったんですよ…(残念過ぎる)↓。

それでは、甲子園と言えばやはりこの漫画!とオススメをしておいて、この記事を締めます。水島新司さんの「大甲子園」です↓。

初版1983年って、30年以上も前なんですね…(驚)。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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