湖畔のカスミガ_ウラ修正

1、平成時代の希望とは

令和元年(2019年)に、平成時代(1989年~2018年・2019年の4月まで)を振り返るのは、もはやスタンダードです。

このnote記事では、ヤフーニュースの『若者を覆う「希望の格差」への懸念』という記事をまず取り上げて、平成時代と令和時代の「希望」について考えてみたいと思います。

筆者は、社会学者の山田昌弘さんです。略歴はこちらより↓。

『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』『「婚活」時代』などの著作があります。「パラサイト・シングル」「希望格差」「婚活」などは、いま普通に目にする言葉。このような言葉を生み出すためには、しっかりと世の中を流れとらえてそれを言語化することが必要です。山田さんは、家族社会学やジェンダー論の観点から、平成時代を見つめてきました。

ヤフーニュースの記事内の見出しはこちら↓。

◆「現状不満・将来楽観」から「現状満足・将来悲観」へ

◆若者から格差が生まれ、広がっていった

◆「パラサイト・シングル」の変化

◆娘に「好きな人と結婚してほしい」

◆問題は「希望の格差」

詳細は、実際の記事や著作を読んで頂ければと思いますが、あえて取捨選択して、私なりに要約を書くとこのような内容です↓。

昔は現状に不満を持ちつつも「将来は良くなるだろう」と楽観していたのが、平成時代には現状に満足して将来を不安視、悲観している。変化があらわれてきたのは1990年代後半。「アジア金融危機」の影響の山一や拓銀の破綻から。90年代のバブル崩壊の影響が実感されだして、良い大学を出ても就職できない、就職しても会社は安泰ではない、と思われるようになった。フリーターやパラサイト・シングルも増加。キャリアや収入がないから結婚に踏み切れない。今では「好きだけでは結婚できない」という人も増えている。問題は、努力が報われるかどうかという希望の格差である。

この記事の内容を元に、自分なりの考えを書いていきます。

2、集中による衰退

もう1つ、平成時代を考えるために、この記事を取り上げましょう。

平成研究家の後藤武士さんの著作に、『読むだけですっきりわかる平成史』があります。最初に平成時代の歴史をまとめたのは、この後藤さんではないかと思います。文字通り、平成の出来事が1年ごとに書いてあり、そこに後藤さんなりの解釈が添えられてあって、すっきりわかる。

「キーワードで振り返る平成30年史」も連載されていました↓。

その最終回の記事がこちらです↓。

後藤さんはこの記事で、平成日本は「衰退」したと解釈して、その理由を「集中」というキーワードを挙げて、具体的な事例を述べています。

◆「東京一極集中」…1990年(平成2年)に国会で成立した「国会等の移転にする決議」が、見事になかったことにされている。

◆「エコカー減税による需要の集中」…2009年(平成21年)にエコカー減税でハイブリット車などへの買い替えが集中、その後、国内需要が減る。自動車メーカーに打撃、海外移転が進み「製造業」「加工貿易」が衰退。

◆「エコポイント制度による需要の集中」…2009年(平成21年)にエコポイント制度でTVなどの家電の買い替えが集中、その後、国内需要が減る。家電メーカーに打撃、海外移転が進み「製造業」「加工貿易」が衰退。

◆「業界再編による集中」…フランチャイズチェーンの増加と、大型ショッピングモールによる店舗の集中、それによる個人商店の衰退。

◆「民意の集中」…小選挙区比例代表並立制の導入、政党への集中。

このように、政治・経済、両方にわたって「集中」が行われた結果、衰退が進んだと述べられています。確かに、集中すると多様性は失われますね。便利になる反面、良い意味での競争が行われにくくなり、活性化はしません。一番消費者にわかりやすい「業界再編による集中」を考えてみると、どこに行ってもショッピングモールがあり、コンビニがあり、牛丼屋やマックがあり、ユニクロがある。その一方で、駅前商店街や個人の飲食店や衣料店が閉店している。大企業は拡大し、中小企業・零細企業は苦しい。

記事の最後でご後藤さんは、「10年おき陰陽の法則」「生前退位による祝福ムードの幕開け」「内からの外圧」を挙げて、令和最初の10年は明るくなっていくのではないかと予測されています。リーマンショック後遺症からの2010年代からの反動、自粛ムードとは無縁の令和時代の幕開け、外国人受け入れによる変化のきざし、などです。

ただいずれにしても、政治においても経済においても、平成時代は暗中模索が続いた時代で、それまでの「高度経済成長」「安定成長」の昭和の常識が通用しなくなった時代、と言えそうですね。

3、希望復活の種

ここまでは、山田昌弘さんと後藤武士さんの記事を取り上げて、平成時代の「希望」と「政治経済」の変化をまとめてきました。

ここからは、私の考察です。

まず希望については、「頑張っても報われない」状況があるのであれば、「頑張れば報われる」状況にすべきでしょう。どうやれば「報われる」と感じるかどうかは、その人次第です。収入的・金銭的に満たされないと「報われる」と感じないのであれば、お金を得る方向に向かう。しかし現在は、ただお金があっても「報われる」と感じる人は少ないのではないか。つまり「やりがいのある」「自分の好きなこと」をやれるかどうかも重要。

いくら安定しているからといって、やりがいを感じられない、自分の嫌いなことを仕事にしていては、報われないと感じる人が多くなってきていると思うのです。平成時代は、「オタク」の意味が劇的に変わった時代です。「気持ち悪い」から「自分の好きに生きる」に変化した。しかもSNSが発達して、同好の士も見つけやすく、孤独感も減った。「好きなことで稼ぐ」が、書店でもネット上でも躍っています。

そう考えるとまずは、一人ひとりが「何に希望を感じるのか」「どうなったら報われると感じるのか」を突き詰めて、その人なりの答えに向けて進んでいくしかないかなと思います。

「大企業に就職」「結婚して子どもを持ちマイホーム」「老後は悠々自適の年金生活」だけが良いとされた時代は終わりました。「個人事業主で」「独身子ども無しで」「老後もライフワークで」、希望を持って働いている人もたくさんいます。政治経済で「集中」が進む半面で、人が目指す方向は一人ひとりで「分散」していきますし、またそうあるべきだとも思います。

過去の記事でも取り上げましたが、「プロティアン」的な生き方、「ライフパズル」的な考えが、より求められていくでしょう。ある一様の生き方のみで希望を感じるとなると、その生き方ができなくなったら終わりです。様々な生き方に希望を見出すことができる力。これこそが求められます↓。

次に政治経済については、これは後藤さんの解釈にうなずくことも多かったです。「過度の集中」が行われてきた平成時代。

これは端的に言うと「バブル崩壊への危機感」が生み出したものだと思われます。ここまでの「過度の集中」が行われてきたのは、「集中しないと生き残れない」「まとまらなきゃ」という危機感があったからです。それまで牧歌的に何となくやっていても好景気で生き残れてきた。何となく就職もうまくいった。会社もうまくいった。それを許せない状況が生まれた時、大きいものは、小さいものを飲み込む形で生き残ろうとします。東京はより大きくなります。コンビニチェーンは拡大。その一方で地方は人口減となり、パパママショップはコンビニに変わるか廃業かの選択を余儀なくされました。

しかし、大雨で川が氾濫した後に、種が運ばれて芽吹くように、集中が進めば、それに反発して分散していこうとする動きも、また生じるものです。

例えば「東京一極集中」に対する「地域おこし協力隊」もその1つ。課題も多いこの制度ですが、地域再生に取り組む人材が増えてきているのも事実です。鹿児島県の元協力隊の山下大裕さんは、この地域おこし協力隊を題材とした映画を作ろうと全国に取材旅を敢行、クラウドファンディングでの資金調達を図っています↓。

「コンビニチェーン」に対しては、「フリーランスの増加」「個別対応の増加」が挙げられます。画一されたサービスが拡大する一方で、画一的でないサービスを望む人も、また増えていくものです。そのような人のための情報も増えてきました。例えばフリーランスの高田ゲンキさんは、『世界一やさしいフリーランスの教科書 1年生』という本を出して、フリーランスという働き方を紹介しています↓。

いわゆる「昭和的な職業観」からはイロモノ・キワモノ扱いされてきた「フリーランス」という働き方が、徐々に浸透していくのではないかと思います。ちなみにフリーランスとフリーターの違いはこちらを↓。

最後に、後藤さんが触れていた「内からの外圧」について。日本はこれから、人口がどんどん減少していくでしょう。しかし、世界的に見れば、人口はむしろ増加の一途をたどっています↓。

となると、ただ単純に「日本」を残したい、「日本の人口」を増やしていきたいのであれば、国民となれる要件を緩和して移民を受け入れれば良いのではないか?という視点もあります。しかし、そう簡単ではない。大相撲で大活躍した力士でさえ、「日本国籍」を取得するのが難しい現状があります。要件を緩和して移民を受け入れて「多民族国家」となったら、それは「日本」と言えるのか?という議論もあるでしょう。

しかし現状、海外から訪れる外国人は増えており、「日本国民」となることを望む人も増えていくでしょう。国際結婚をして、ハーフの子どもももっと増えます。当然、外国的な文化、「内なる外圧」も高まります。後藤さんが記事で述べているように、日本では「外圧」によって、政治・経済・文化の大変革が行われてきました。「明治維新」「敗戦と平和国家建設」などの事例です。「バブル崩壊」は、外圧ではなく内部の話だったので、そこまでの大変革は起きませんでした。しかし、この「内なる外圧」が高まり、「国際状況の変化」などによる実際の外圧も高まっていくことによって、変わらざるを得ない部分も増えていくと思います。

折りしもSNSで情報がぱっと広がる時代ですからね。ちょうど昨日の7/20には、「闇営業」問題で宮迫博之さんと田村亮さんが会見を行いました↓。

芸能界の闇も、このように情報公開されていきます。今まで暗黙の了解、言わなくても分かるだろの世界は、外国的な文化では通用しなくなります。

沢渡あまねさんは『仕事ごっこ』という本を書いて、これまで当たり前であるかのように行われてきた仕事を、童話をモチーフに描いています↓。

その”あたりまえ”、いまどき必要ですか?

パンドラの箱が、1つずつ開かれていった平成時代。まだ箱の中にあるものも、令和時代にはどんどん開かれるでしょう。そのさらなる変化の時代には、一人ひとりが自分軸を持って、荒波に向かって帆を立てて、風を読みながら立ち向かうべきかなと感じています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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