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「これは本物のカレーか?」 ~あなたの街は何カレー?~

1、外食カレーの流儀

もはや国民食とも言うべきカレー。

自宅はもちろん、キャンプ、給食、外食など、カレーが出てきて嬉しい、と思うシーンは意外に多いものです。

特に外食のカレーは、気合を入れてチョイスしたいもの。私は、外食のカレーは美味しくないと意味がないと思っています。なぜならば、これだけカレールーやレトルトカレーが溢れている現代において、自分で美味しいカレーを作ることが容易になってきているからです。

「自分で安く美味しいカレーが作れるのに、わざわざ外でカレーを?」

この内なる声に勝つためには、この回答しかありません。

「ここのカレーは、自分では作れないほど美味しいから!」

ゆえに、外食のカレーに対する期待のハードルは高いのです。だから、外食のカレーは美味しくないと意味がないと思っているです。

では、どれくらい美味しければ、ハードルをクリアできるのか?

私は、「ココイチ基準」というものを設けています。

泣く子も黙るカレーのチェーン店、ココイチ。あえてカレーを外食に選ぶ際、もし期待外れだったとしたら、内なる声がささやきます。

「…これなら、ココイチのほうが良かったんじゃね?」

その内なる声を封じるためにも、ココイチ基準をK点越えするようなカレーの名店をもっと探したい、と思う今日この頃です。

※ちなみに、最近は松屋のカレーの美味しさにも目覚めていますので、「松屋基準」というものもあります。

2、街はカレーのようなもの

ここから「おすすめの名店カレーはこれだ!」とか、「カレーに欠かせないスパイス10選」などのnote記事にしても良いのですが、それではこのnote記事を書き出した理由から外れてしまいます。そういう記事は全国のカレーソルジャーたちに任せるとして。

この記事では、街をカレーに例えて、その地理と歴史との関係を述べます。

「へ? インドの街の話?」

…いえ、そうではありません。

良い街は、名店のカレーにも似た魅力、また食べたくなる(行きたくなる)中毒性があるのです。ここでは、日本の街をカレーに例えます。

一番わかりやすい例。京都を思い浮かべて下さい。

日本が世界に誇る観光都市。クールジャパンにしてホットジャパン。外国の方が「Oh!」と唸るような「ザ・ジャパン」の地理的な要素が目白押しかと思えば、その底には、794年から続く半ば怨念にも似た歴史的な要素も蠢き、訪れた人を魅了します。あえて例えて言えば、1200年以上も煮込まれたカレーのような街です。この味の深みと辛みとジワジワ来る美味しさは、他の街には出せない。「ココイチ基準」を軽くK点越えします。また食べに来たい、と思わせます。

何となく、意図がおわかりでしょうか?

「地理」「歴史」「その街ならではの特色」を、次のように置き換えます。

◆「地理」=スパイス
◆「歴史」=煮込み時間
◆「特色」=具材・トッピング

京都ならこうですね。

◆「地理」=スパイス=京都盆地・日本の真ん中・日本の「都」
◆「歴史」=煮込み時間=794年から約1200年以上
◆「特色」=具材・トッピング=日本文化の粋(数えきれない…)

一言で言えば「ザ・ジャパンカレー」。外国の方を連れていくなら、一番わかりやすい街です。東京よりも「歴史」、つまり煮込み時間が800年以上も違います。京都の人が東京を「仮の首都」とみなしているのもむべなるかな、と思えるほどの圧倒的な煮込み時間。代々「秘伝のたれ」を受け継いできたそば屋かうなぎ屋かと思えるほどの、唯一無二のカレー。

では、他の街でも例えてみましょうか。

3、オリエンタル福岡・スープ札幌

まずは「地理」=スパイスに注目してみましょう。

まずは福岡の街から。福岡県の県庁所在地は「福岡市」です。しかし福岡の中心はどこかと聞かれれば、多くの人が「博多」と答えます。新幹線の駅も「博多駅」です。もうこの時点で、香ばしい匂いがぷんぷんしますね。福岡と博多という二重スパイス。その種明かしはこちらをご参照↓。

一言で言えば、「それまで博多だったのに、江戸時代の殿様、黒田長政が新しく福岡の地名を使い出した」のです。大宰府も近くにあり、2000年以上も中国大陸との関係が深かった港町、博多。そこを新しく治めることになった黒田氏が使い始めた地名、福岡。しかも元々は、黒田氏の旧領だった岡山県にある地名だったそうです。輸入したスパイスを使うようなものです。…地理の話が、歴史の話になってきましたね。そうです。地理(スパイス)にも歴史ありです。

あえて取捨選択してまとめると、こんな感じでしょうか。

◆「地理」=スパイス=中国大陸との玄関口・九州一の都市
◆「歴史」=煮込み時間=2000年以上の港町+400年以上の城下町
◆「特色」=具材・トッピング=どんたく・ホークス・博多ラーメン…

京都と同じく、特色があり過ぎて、列挙しきれません。

それでも無理やりまとめますと「オリエンタルカレー」と言ったところでしょうか。アジアンな味わいがありつつも、港・城下町・ホークスと言った混然としたスパイス・煮込み・具材がからまり、しかも現代でも日本を代表する都市として活躍し続ける福岡。極上の味わい。

ちなみにうどんも美味しいので、「カレーうどん」もいいかも(笑)↓。

次にいきましょう。南の九州を取り上げたので、北の北海道を。

北海道と言えば、札幌。ここも人気が高いですよね。「実際に見たら三大がっかり」と言われる(?)、イメージ先行の時計台をはじめ、札幌ラーメン、雪まつり、北海道大学…と「具材」には事欠きません。

しかし、煮込み時間はさすがに少ない。明治時代に「屯田兵」たちの開発が進んで以来ですから、約150年くらいでしょうか。もちろんアイヌ民族の歴史も入れればもっと長いでしょうけど、街としての歴史は比較的浅い(京都や福岡に比べれば)。サラッとしています。

◆「地理」=スパイス=石狩平野・開拓地・北海道一の都市
◆「歴史」=煮込み時間=明治時代以来、約150年
◆「特色」=具材・トッピング=時計台・雪まつり・札幌ラーメン…

そんな札幌を一言でカレーで表すとすると?

「スープカレー」です(笑)。札幌はスープカレーの本場ですし↓。

サラッと湿気の少ない気候、良い意味で新鮮なスタイル、でも情熱的な後をひくスパイス、スープカレーはぴったりかなと思います。

ここまで、いくつかの街を例として取り上げましたが、あくまでこれは私のイメージに基づく、一つの例えです。住民の方なら「いやいや、うちの街は○○カレーだし」と思われるかもしれません。

そうなれば望外の喜びです。ぜひ、あなたもカレーで例えてみて下さい。その過程で、新たな街の魅力が発見できるかもしれません。

4、あなたの街は何カレー?

いかがでしたでしょうか? この記事では、京都・福岡・札幌を事例にして、街をカレーに例えて、その地理と歴史との関係を述べてみました。

さて、あなたの住む街は、何カレーですか?

名だたる有名な街を例として挙げたので、謙遜されるかもしれませんね。

「残念ながら、地理(スパイス)も歴史(煮込み時間)もありきたりで、特色(具材・トッピング)もなくて、どこにでもあるレトルトのワンコインカレーのようなものですよ…」

と思っていませんか?

街づくりは、カレーづくりに似ています。

確かに、地理・歴史・特色は大事です。しかし、何より大事なのは、料理人の情熱ではないでしょうか。そして、魅力を知ってもらうための発信ではないでしょうか。美味しいカレーを作って、みんなに知ってもらって食べてもらって美味しいと思ってもらいたい、その気持ちと行動。住民による街づくりの「情熱」と、その魅力を「発信」することが大事です。

地理(スパイス)も歴史(煮込み時間)も、あなたが知らないだけで、実は唯一無二のスパイス(地理)や、人知れず煮込んできた時間(歴史)があるかもしれません。具材(特色)は、新たに作ることもできますし、実際作ってきた人もたくさんいます。博多ラーメンや札幌ラーメンが、2000年前からあったとでも思いますか? そこに情熱と発信が加われば、いつしか人気のカレー屋さんとなり、また来たいと思われる店(街)になる、かもしれません。決して他店の味のコピペでは、魅力あるカレーは作れません。

この記事の締めとして、この漫画のこの巻を紹介します。カレーを題材にした漫画も増えてきていますが、やはりこちらから。

作・雁屋哲さん、画・花咲アキラさんの『美味しんぼ』の24巻、「カレー勝負」です↓。

カレーを語る上で、この巻は外せないでしょう。個人的には初期の「カレー屋さんが記憶喪失?になる話」も好きですが。

カレー屋さんに来て(しかも始めて来た店で)「これは本物のカレーか?」「まず第一にカレーとは何か?」と店長にズバズバ聞く海原雄山、さすがです。街づくりで言えば、「これは本物の街か?」「まず第一に街とは何か?」と聞かれるようなものです。答えられますか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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