神速のシモツマ

1、成人

世代考察の4回目。今回は19歳から24歳までの6年間です。

二文字熟語のキーワードは、「成人」です。…そのままですね。しかしちょっと考えてみてください。なぜ二十歳(はたち)で成人なのか?

そもそも、二十歳未満は成人ではないのか? 人に成っていないのか? いや、人ですよね。ですが、いわゆる成人ではない。法律的な制限もある。

確かに、「権利」という観点から言えば、例外的ではありますが、お母さんのおなかの中にいる「胎児」にすら権利がある(とみなす)という法解釈もあります↓。

しかし、二十歳になるまでは、色々な権利が制限されている。「お酒は二十歳になってから」は、一番わかりやすい例ですよね。

以前は「選挙権」も二十歳になってからでした。二十歳というのは、区切りが良いのです。でも日本では、今は十八歳から選挙権を持つようになっていますよね。時代の要請で「成人」が引き下げられた例です。

いや、もっと歴史をさかのぼると、男子には「元服」という儀式があった。元服が済めば大人です。これは人によっては10歳くらいで元服していそうです。早いですね。女子の場合は「裳着(もぎ)」あるいは「着裳(ちゃくも)」という儀式があったと言います↓。

先程出てきた飲酒可能な年齢についても、世界に目を向ければ、特に二十歳ということにこだわっていません。こちらをご参照ください↓。

キューバの西側にある国「アンティグア・バーブーダ」では、なんと10歳からお酒が飲めるそうです(驚)。いかに「二十歳=成人」という概念が、あやふやで人工的なものかがよくわかります。

イメージ的にもどうですかね…。二十歳未満でもしっかりしている人もいれば、二十歳以上でも「子どもか!」と言いたくなる人もいます。毎年恒例、「荒れる成人式」などをニュースで見ると、つい眉をひそめたくなるものです。本当に個人差というのはあります↓。

「成人」だけれど、どこかまだフワフワしている「不安定」な世代、それが19歳から24歳を彩るイメージなのかもしれません。

ちなみに記事のタイトルについてはこちらを↓。

二十、二十歳、どちらの表現もあるようですので、この記事では二十歳(はたち)にしています。どんなに優れているように見えた神童でも、「子どもバイアス」が外れて、成人して時間がたってしまえば平凡な人に見える、ということわざです。

2、自由という名の恐怖

この世代の、もう1つの重要なキーワードから考察しましょう。

ずばり「自由」です。

高校を卒業して、大学あるいは専門学校、就職して自由になる。親元から離れて一人暮らしで自由、お財布も自由。また、自動車免許を取って自動車を買って自由に動ける。恋愛も自由。結婚までできる。ああ、なんてフリーダムなんだと、いよいよ俺の人生ここからだと、解放感に浸る人もいるかもしれません。それもそのはず。ここまで(18歳まで)は、たとえ自由があったとしても「制限付きの自由」の場合が多かった。保護者の影が常につきまとっていた。それが、直接的に薄れていく。

しかし、ですね。自由というのは怖い面もあります。自動車に乗ったら事故を起こすかもしれない。成人していたら責任はすべて自分に来ます。恋愛して結婚して子どもができたら、親の責任が生じます。仕事を始めてミスをしたら、保護者のせいにはできませんよね。つまり自由と「責任」はトランプの表裏のようなもので、「自分で決めるんなら責任も取れよ」という感じなのです。「権利」と「義務」のようなものです。

19歳からは、「単線型」から「複線型」に本格的に進路が分かれていくのも影響しているかもしれません。高校は大多数が18歳の学年まで。そこからは「四年制大学」「短大」「専門学校」「予備校生」「就職」あるいは「フリーター」「ニート」など、もう千差万別です。

歌手の中島みゆきさんの歌で、「狼になりたい」というものがあります。佐藤剛さんの記事が鮮やかに情景を説明しているので、引用します↓。

24時間営業の飲食店ほど、この世代の舞台として似合う場所はありません。働く店員もそのくらいの年齢。お客さんはくたびれたサラリーマンももちろんいますが、夢は有るけどカネの無い若者たちも多い。牛丼をぱくつきながらビールを飲む。「みんな、いいことしてやがんのにな」と思う。

そう、この世代ほど、同年代のことが気になる世代はないように思います。それまでは1つのレールに乗っていたのに、複線型で色々な人生に分かれていく。「同窓会」は1つの検証会場ですね。子どもができて親になる人もいれば、大企業に勤め出してピカピカに見える人もいる。中にはアイドルや芸能人、プロ野球選手としてすでに成功している人もいるかもしれない。一方で、売れないミュージシャンとしてフラフラしている人もいれば、家にずっと引きこもる人もいる。借金を背負っている人もいるかもしれない。もう亡くなっている人もいるかも…。容赦なく「個人差」が出てきます。

哲学者ニーチェの言う「ルサンチマン」を抱える人も増えてくる。訳しにくい言葉ですが、あえて和訳すれば、「弱者が強者に対する憤りや憎悪」でしょうか。ちなみに、ルサンチマンという芸人コンビがいましたが、片方の吉尾伸介さんが亡くなられて解散しています(もう1人の浅川さんは、ピン芸人のルサンチマン浅川としてご活躍中)↓。

一方で、夢を追えるのもこの世代の特権。金はないけど馬力はある。徹夜をしてもたぶん大丈夫。女性ならば、与謝野晶子の詠む「おごりの春」を過ごしているかもしれません。チヤホヤされやすい世代です↓。

ちなみに、三菱商事、ローソン社長を経て、サントリーホールディングスの社長に就任した新浪剛史さんは、「学生に戻れるなら歴史を学びたい」そうです。そう、歴史、大事ですよね↓!

何でもできる。何にでもなれる。途中、途中、途中…。福本伸行さんの名作『カイジ』の主人公のカイジも、この世代という設定です↓。

私もこのコンビニのシーン、とても好きです。心をえぐられるようなルサンチマンとコミュ障っぷりが、胸を打ちます。

自由という名の恐怖と常に戦う。そのような世代なのかもしれません。

3、オタクと美術

さて、今回の記事では、19歳~24歳の一断面をお見せしました。

大学論とか就職論もしてみたかったのですが、どちらかというと根源的な部分を掘り出してみました。

「大学と自由」と言えばこの漫画。木尾士目さんの『げんしけん』です↓。

初代だけでなく二代目も出ています。オタクライフを余すところなく描ききっています。ファンタジーなのにリアルな名作。

神戸や美術がお好きであれば、こちらはいかがでしょうか↓?

木村紺さんの『神戸在住』です。木村紺さんは作品ごとに絵柄も変わり、守備範囲の広い漫画家さんです(『巨娘』『からん』などもおすすめ)。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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