清書のヒタチオオミヤ_完成イラスト

1、還暦

6年ごとの世代考察ですから、今回で10回目の記事になります。6×10=60歳。55歳から60歳までの世代について考察します。

前回の49歳から54歳までの記事はこちらから↓。

二字熟語のキーワードは「還暦」です。「十二支」(じゅうにし)でいうと12年、それを5回ですよね。なぜ5回か? それは、十二支の他に「十干」(じっかん)というものもあって、それを組み合わせた「暦」が、60年でまた同じものに「還る」ので、還暦と言います。十干十二支と呼ばれるものです。「えと」と私たちは十二支のことを呼びますが、厳密には「えと」という呼び方は「きのえ」「きのと」などの十干から来ていますので、十二支のほうとは直接は関係ないんですよね…。

ちなみに、この十干十二支、日本史などではよく出てきます。「壬申(じんしん)の乱」や「戊辰(ぼしん)戦争」など。一番わかりやすい例が、高校野球の聖地で有名な「甲子園」(阪神甲子園球場)でしょうか。これは「甲子」の年にできたから、甲子園です。甲子=十干でいうと「甲」、十二支でいうと「子(ねずみの意味)」の年。「きのえ×ね」です。これを「こう×し」と読む。球場ができた1924年が「甲子」の年だったから甲子園。甲子の年は、全部で60ある十干十二支の一番最初の年で縁起がいいからそう呼ぶようにしたとか…↓。

12×10で120ではないのですか?と思いがちですが、順番が関係ない総当たりで考えていくとそうですけれども、この場合は同じ組み合わせなら同じと考えます(例:「甲子」なら、「甲子」と「子甲」の2つが考えられるが、十干が前、十二支が後なので、どちらも同じ)。となると、12と10の最小公倍数である「60」で一回りとなります。そもそも、120歳で還暦にしてしまうと、現代医学ではほぼ到達できないですからね…。詳しい説明は、こちらのサイトをご参考にして頂ければと思います↓。

さて、60歳で還暦と言えば、やはり「お祝い」「赤いちゃんちゃんこ」というイメージです。還暦のお祝いについてはこちらを↓。

成人式の20歳はともかく、30歳や40歳、50歳に比べて、60歳は祝福ムードがありますよね。なぜなんでしょうか? そのあたりから始めていきます。

なお、タイトルの「六十の手習い」につきましては、こちらを↓。

2、60歳はめでたいのか?

まず、60歳と言えば「定年退職」が思い浮かびます。…65歳じゃないんですか? 70歳ですよね?と思われるかもしれません。そう、定年退職の年齢は時代とともに引き上げ傾向にあります。それと連動して「再就職」の問題もずれこんでいくでしょう↓。

次に、「年金」も思い浮かびます。…60歳からはもらえないのでは? そう、年金制度は猫の目のように変わり、こちらも引き上げ傾向にありますので、現在30歳代の人がもらう頃には、(制度自体が無くなっていなければ)80歳とか90歳でようやくもらえるようになるかもしれませんね↓。

家族的なことを言うと、「子どもの結婚」「初孫誕生」なども、このあたりの世代かもしれません。仮に30歳あたりで子どもができていたら、子どもも約30歳。自分の頃と照らし合わせて、そろそろ孫を抱きたいな…と考えるのは当然の心理。しかし、ご存知の通り「晩婚化」「少子化」は容赦なく進んでおります。こちらも引き上げ傾向。「孫疲れ」の言葉も↓。

身体が動くうちに孫のお世話を手伝いたい、70歳や80歳になってからだと自分の身体が動くかどうか…。そう、60歳が視野に入ってくると、「健康」と「老化」の問題が生じてきます。これまでの世代でももちろん個人に応じて生じてきたと思いますが、加齢による老化は、生き物である以上避けられない。一例を挙げると「白内障」。60歳になると、80%以上の方が発症し、80歳代になるとほぼ100%が発症します。誰もがかかる目の病気です↓。

こう考えていくと、視界がぼやける感じがしますね。

定年退職や年金はどうなるかわからない。健康や老化の問題もある。子ども世代の先行きも不安定だ。もちろん、自分の親世代の「介護」「死去」「相続」などの問題もからまってくるでしょう。不安だらけの冬支度。まだ「更年期」の影響もあるのに…。一休禅師がおっしゃるように、門松は冥途の旅の一里塚、という気分になってしまうかもしれません↓。

3、めでたくもありめでたくもなし

なんだ、60歳と言っても、めでたくないじゃないか。しかし、だからこそ、60歳をもう少し考えてみたいと思うのです。

まず、定年退職と年金について。ここまでの「働き方改革」やら「年金改革」やらの流れを見れば、もう以前のような古き良き時代、終身雇用と年金生活が崩壊に向かっているのは自明の理です。それをわかった上で能動的に60歳に向かうのと、わからないまま受動的に60歳を迎えるのとでは違うじゃないですか。ましてやこのSNS全盛時代、少し検索すれば、先達が何をしているのか、隣の人がどんな「手習い」をしているのか、すぐわかるじゃないですか。「100回同じことを聞かれても笑顔で答えます」的な、中高年向けのパソコン教室も至る所にありますよね。おそらく近い将来には、中高年向けの「プログラミング教室」「AI活用教室」も、至る所にできてくるでしょう。いや、もうあります。例えばこちらなど↓。

そう考えると、学ぶ意欲(と最低限のお金)さえあれば、いくらでも新しいことを学ぶチャンスが多い世代なのではないでしょうか。世の中は需要の多いところにビジネスが生まれます。少子化の子ども向けよりも、たくさんいる中高年向けに需要があるとなれば、以前とは比較にならないほど「学びのチャンス」があると思われます。それは幸せなことではないか。

次に家族と健康について。今まで元気だった方よりも、持病をお持ちでしたり、病院に通っている方のほうが、寿命が長いと聞いたことはありませんか? いわゆる「一病息災」の考え方です↓。

この記事を一部引用すると、

自分が健康だと思っているのに、職場の健康診断などで高血圧などを指摘されて戸惑うケースは多い。複十字病院糖尿病・生活習慣病センター(東京都清瀬市)の及川真一センター長は「病気をネガティブにとらえずに、次の病気を予防するための好機ととらえてほしい」と訴える。

だそうです。ここですね。病気をネガティブにとらえるか、チャンスととらえるか。80歳代になれば、ほぼ100%白内障になるんです。冥土にはいずれ行くんです。だからこそ、その旅程のプランを立てて、色々な緊急時に備える。旅行には「プランを立てる楽しみ」というのがあります。たとえ冥途の旅としてもです。生と死は隣り合わせ。時間は有限。それを痛感する55歳から60歳だからこそ、積極的に冬支度を始めるべきです。

最後に、仕事と引継ぎ、キャリアプランについて。退職などが近づいてくると、「自分はこれからどうするのか」「いま扱っている仕事はそうすべきか」などの問題が出てきます。しかし、そもそも定年退職という考え自体が、終身雇用前提のサラリーマン的発想です。すでにそれを見越して、一生続けられる資格業務(弁護士など)であったり、フリーランスであったり、そのような仕事をしている人も、たくさんいますよね。

「俺はそうじゃない、どうすればいいんだ!?」という方は、逆に考えるチャンスととらえるべきです。先ほど述べた通り、学びのチャンスは増えてきているのですから、いわゆる「ライフワーク」を探して身につけることを考えてはいかがでしょうか? その際には、もちろん1から新しいことを始めることも良いですが、自分の今までしてきた仕事、自分が持ってきた興味、そのあたりを掘って芋づる式に探すと探しやすいと思います。

その観点において、「引継ぎ」はとても有効です。自分の仕事の棚卸し。毎日追われてきた必死にやってきた仕事を、「他の人がしやすいように」という視点から点検して、書類やマニュアル、データベース化していく。属人化から「見える化」へ。その中で、これはやっていて楽しかった、これは仕事とはいえ嫌だった、そのような感想が多々出てくると思います。それらをまとめて、自分のこれからの「旅のしおり」にするとともに、引き継いでくれる人が実用できる「ガイドマップ」ができあがれば、これほど自分にとっても周囲にとっても幸せでめでたいことはないように思うのです。

60歳を、めでたいととらえるか、めでたくないととらえるか。一休禅師は、「門松は冥途の旅の一里塚」のあとに、こう続けました。「めでたくもありめでたくもなし」。客観的に100%めでたいとか、めでたくないとか、そうではない。答えは自分の中にあるのだと、私はそう解釈しています。

なお、いまは業務の属人化を防いで見える化を促すツールはたくさんあります。手前味噌の記事ですが、そのうちの1つ「Bizer Team」を紹介した記事はこちらとなります↓。

これからのキャリアの組み立てについては、自分の軸を持って変幻自在にキャリアを組み立てる「プロティアン・キャリア」の発想が、より求められていきます。プロティアンの働き方については、こちらの記事を↓。

4、ガラスの中間管理録

いかがでしたでしょうか? この記事では、60歳の還暦あたりにスポットを当てて考えてみました。

漫画的に言えば、このあたりの世代、いわゆる「アラカン世代」の登場人物は、とてもキャラが立っている人が多いように思います。ここまでの人生の深みと重みを感じさせつつ達観しており、清濁併せ呑む黒い魅力、目的のためには手段を選ばない迫力と言いますか…。主人公の王道は、少年や少女ですからね。その主人公を助けるとなると、やはり、いぶし銀の特殊な技能と強烈なキャラを持った人が多い。冨樫義博さんの『幽☆遊☆白書』の幻海とか…(彼女が本当にアラカンかどうかは不明ですが)。

その中でも私が、ベストオブアラカンのキャラと認定しているのが、美内すずえさんの『ガラスの仮面』に出てくる「月影先生」です↓。

この記事を書くために1巻から少し読み返してみたんですが、いや、月影先生の暴れっぷりは最初から凄まじいですね…(汗)。「マヤ…恐ろしい子…!」と陰から見守る謎の存在と思いきや、発声練習と称して主人公の北島マヤにボディブローをかますとか…。「紅天女編」になってちょっと(ちょっとなのか?)中だるみ感はありますが、そこまでの展開はまさにジェットコースター的で、読み出すと時間を忘れそうになるので無理やり読み返すのをやめました。「少女漫画」と言われていますが、私の中では「スポ根漫画」です。男性にもおすすめですので、未読の方はぜひ。ちなみに私が好きなエピソードは、北島マヤが無双状態で圧倒的に他のモブキャラを蹴散らす伝説のオーディションの場面です(即興劇「毒」など)。

男性のベストオブアラカンと言えば…。やはりこの方でしょうか。何といっても主人公になりましたからね↓。

トネガワ先生ですね。協力:福本伸行さん、原作:萩原天晴さん、漫画:橋本智広さんと三好智樹さんの『中間管理録トネガワ』。もともとは福本伸行さんの『カイジ』に出てくる1人の敵キャラに過ぎなかったのですが、その圧倒的存在感から主人公になりました。「どうせ一発モノのギャグマンガだろう」と誰もが思った予想を覆し、ベストセラーになっています。まさに「悪魔的スピンオフッ……!!」という感じです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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