190920夕焼け

過程訪問 ~「イバーランドの県道」制作ノートまとめ~

1、過程の詳細 ~制作ノート目次~

5回にわたり、茨城県市町村擬人化×ゲームブック「イバーランドの県道」の制作過程をnote記事に書いてきました。本記事はそのまとめです。

5回の概要は、以下の通りです↓。

1:「きたいばらきに会いたい」 発想の原点・ゼミ生の設定
2:「男女逆転ゼミ」 2つのゼミ・世界観の設定
3:「1人だけど1人じゃない」 イラストの外注・市町村紹介制作
4:「選択肢の連続」 ゲームブック制作
5:「SNSの感動」 SNSでの情報発信

5回の記事へのリンクは、以下からどうぞ↓。

2、過程の感想 ~設定・見える化・深化・告知~

5回に分けて「過程」を書いてきた、全体的な感想です。

1回目と2回目は「設定する」段階でした。まずは設定。これがないとお話にならない。1回目は個々の設定、2回目は全体の設定です。その設定の中では、取捨選択したものもありました。記事では書きませんでしたが「人口の多い少ないで大きさを変える」ですとか「1~4年生に分ける」などがあります。キャラの名前も、全体のバランスを見てけっこう変えています(古来のバンドウ→古府のイシオカとかぶる→武者のバンドウに変えるなど)。このあたりは「裏設定」として残していこうと思います。

3回目は、その設定を「目に見える形にする」段階です。目に見える形になると、それまで文字だけで追ってきたものが、イラストとして目の前に現れます。これは、かなりテンションが高まります。と同時に、そのイラストからまた新たな発想が生まれていきました。

4回目は、その新たな発想に基づいて「作品を深める」段階です。具体的には、「イラスト中心」の市町村紹介メインの擬人化から、「ゲームブック」という文字テキストの擬人化にも深化させました。目に見える形にしたものを、さらに説明して遊べるようにした、というところでしょうか。全体の構成も、ゲームブックの作品名「イバーランドの県道」を前面に出したものになりました。元々の全体のタイトルは、当初は「プロイバゼミ@44」だけだったものが、「プロイバ×プロラキ合同ゼミ@44×2」となり、さらに「イバーランドの県道」と変わっていきました。

5回目は、こうして整ってきた作品を、「情報発信して告知する」の段階です。具体的には、twitterとnoteを通して公開していきました。ゲームテスターさんをお願いして、note上の下書き機能でテストプレイもして頂いたのですが、このテスターさんもtwitterやnoteを通してお願いした方々です。SNSがないと知り合えなかった方々です。twitterでは断片的な情報を個別に出していき、noteにおいては本記事のように、こうやって制作過程をも公開することができました。

まとめると、以下の通りです。

1:「個々の設定」→キャラ設定
2:「全体の設定」→全体の設定
3:「目に見える形にする」→イラスト化
4:「作品を深める」→ゲームブック化
5:「情報発信して告知する」→SNSで投稿

もちろん、このような制作段階が、必ずしも正しいとも思いません。今回はこのような段階を経て制作しましたが、他の視点からのアプローチもあったのではないかと思うところです。

3、過程の問題 ~作りたいから作っただけ?~

最も大きな問題点を挙げますと、いわゆる「プロダクトアウト」に偏り過ぎたかなと思っています。この「プロダクトアウト」という考え方については、「ferret」というマーケティングのサイトから、以下の記事を参考にして書きたいと思います↓。

それぞれの定義は、以下の引用の通りです↓。

プロダクトアウトの一般的な定義は、会社の方針や作りたいもの、作れるものを基準に商品開発を行うことを指します。プロダクトを作ってから、どのように販売していくかを考えるスタイルです。
マーケットインの一般的な定義は、プロダクトアウトとは反対に顧客の意見・ニーズを汲みとって製品開発を行うことを指します。

言い換えると、こういうことです。

プロダクトアウト:作りたいものを作ってから売り方を考える
マーケットイン:顧客の意見・ニーズ・売り方を決めてから作る

まさに今回の制作過程は、プロダクトアウトの典型ですね。

もう少し「マーケットイン」の考え方を取り入れるのならば、「茨城県市町村擬人化」にどれくらいのニーズがあるのか、「ゲームブック」にどれくらいのニーズがあるのか、両者の認知度はどのくらいか、どのように売るのか、を突き詰めてから制作を始める方法もあったように思います。

擬人化の中でもマイナーな「市町村」を題材にし、かつ「茨城県」という魅力度ランキング最下位常連の都道府県を題材にして、どのくらいのニーズが見込めるのか? 「ゲームブック」という、1980年代にブームになったものの、いったん下火となったスタイルに、どれくらいのニーズが見込めるのか? それを掛け合わせたところで、元々の母数が少ないところでどのくらいの相乗効果が見込めるのか…?例えば、「47都道府県擬人化×推理ゲーム」などにしたほうが、ニーズも認知度も格段に上ではなかったか。販売もしやすかったのではないか。

とはいえ、私は今回このような制作過程をたどったことを、まるまる否定するつもりもありません。先ほど挙げた記事も、「プロダクトアウトは悪ではない」という論調で書かれています。引用します(太字引用者)↓。

実際、「プロダクトアウトからマーケットインへ」という論調は一時期声高に叫ばれていましたが、果たして本当にプロダクトアウトは悪なのでしょうか。
プロダクトアウトの代表的な企業としては、先に例で挙げたSONYや、世界的大企業であるAppleなどが挙げられます。時代を変える革新的なプロダクトを制作する企業はほとんどが「プロダクトアウト」タイプに分類できます。
これらの製品は従来なかった製品であり、ユーザーに意見を聞いても作れるものではありません。プロダクトアウトは悪かというと、決してそんなことはないのです。

確かに、ユーザーに意見を聞いたら「47都道府県擬人化×推理ゲーム」の発想は出てくるかもしれませんが、「茨城県市町村擬人化×ゲームブック」の発想はまず出てこないと思います。その点において(おそらく)「ニッチ中のニッチ」の作品です。「時代を変える革新的なプロダクト」になれる可能性が、(少しは)あるのではと、勝手に前向きに解釈しています。

引用記事では、このように続きます↓。

「顧客のニーズを無視して企業側の意志のみに基づいて製品開発が行われる」というのは、継続不可能なモデルではないでしょうか。
それはプロダクトアウトではなく、ただ「企業の思い込みで作るもの」であり、マーケティングを介さずに開発に乗り込んでしまっている状態です。
Web担当者フォーラムの編集長である安田氏は、「マーケットインは顕在化した顧客のニーズに、プロダクトアウトは潜在的な顧客のニーズに対してアプローチするもの」という論を展開しています。

要するに、こういうことでしょう。

プロダクトアウト:見えないニーズにアプローチ
マーケットイン:見えているニーズにアプローチ

となれば、プロダクトアウトの権化のようなこの「イバーランドの県道」は、見えないニーズ、潜在的な顧客へと、積極的にアピールして、世の中に広めていく必要があるのかなと思いました。

顧客の、自分自身も気づいていないような潜在ニーズを掘り起こすという意味では、プロダクトアウトの方が難易度は非常に高いでしょう。
しかし、顧客に驚きと感動を与えられるのも成功したプロダクトアウトの製品に多く見られる特徴です

と、引用記事にも書かれていましたので、せっかく時間とお金をかけて制作したこの「イバーランドの県道」を、「顧客に驚きと感動を与える」ものへとブラッシュアップ・パワーアップ・アップデートしていきます。

4、過程の再生 ~「桃鉄のテキスト版」~

そのヒントの1つは、ゲームテスターをしていただいた、たけさん(@office_sgk)の紹介ツイートにあるように思います。

「桃鉄のテキスト版」という、簡潔なキャッチフレーズを頂きました。

これは、私の中では少々意外でしたが、的を得た言葉です。各市町村をめぐってゼミ生からアイテムや経験を得るので、似ているかなあと漠然とは思っていましたが、いざこうして言葉にして頂くと、私の頭の中でしっかりと結びつき、広告の言葉としても使える、と感じ入りました。

桃鉄=桃太郎電鉄。コンピュータゲーム(TVゲーム)です。全国各地を鉄道でめぐるボードゲーム形式で、対戦もできます。全国各地の駅では、特産品やその土地ならではの物件が販売されており、これらを買うことで資産を貯めていきます。2020年には最新作も出るようです↓。

この桃鉄は、地理の学習にものすごく効果がある。どの都道府県のどの駅に何があるか、ゲームで楽しく遊びながら学べる。

その名作になぞらえて紹介してくださったたけさんに感謝です。

他には、このような言葉で紹介してくださった方もいます↓。

「脱出ゲームの会社とコラボ」。ありがたいお言葉です!

「noteでゲームという斬新な発想」「市町村擬人化という斬新な発想」と、斬新さを紹介していただきました。ありがたいことです!

このように、SNSを通して告知したりテストプレイして頂いたりすることで、自分ではない他人からの視点から、新たな魅力を見つけ出して頂くことができる。これが「SNSの感動」の1つです。

ゲームテスターさんの感想一覧(一部)は、こちらの記事をどうぞ↓。

もし読者の方が、「イバーランドの県道」をプレイして頂き、感想・長所・短所などを感じることがございましたら、お知らせ頂きますと幸いです。フィードバックして次の展開へと反映させて頂きます↓。

5、「過程訪問」を終えて

「イバーランドの県道」の、制作はひと段落しましたが、これを世の中に広めるという道においては、まだスタート地点から出発したばかりです。

一日で例えると、設定という「朝」、制作という「昼」が終わり、灼熱の太陽が落ちかけてまさに夜に向かう「黄昏時」、アフターファイブの「夜はこれから」という感じです。

その意味では、また折にふれて「過程訪問」という振り返りをしていきたいと思います。

最後に1つ、note記事を紹介します。

カワグチマサミさんとまえだたかしさんの漫画家対談のnote記事です。

前田デザイン室さんは、「過程」を公開していただけるのでとても参考になります。ましてやカワグチマサミさんのここまでの「過程」(家庭ができたエピソードも?)まで載っているとあれば、これは必読かと。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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