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シンガポール航空搭乗記:往路編(カンボジア・ベトナム徘徊記②)

 さて、前回の記事ではカンボジア・アンコール航空に乗るとどうなるかということを記したが、今回はシンガポール航空に乗るとどうなるかを記しておきたい。こちらについては乗ったことがある人が多くいると想定されるのであまり実用性はないかもしれないが、せっかくフライトしたので記録しておこうというわけである。
 今回搭乗したのは往路便が羽田~シンガポール~プノンペン、復路便がハノイ~シンガポール~成田だった。機材はそれぞれ777-300ER、737-800、737MAX8、A380-800の4機種で、4区間4機種搭乗を達成している。これは飛行機好きとしての矜持のようなもので、できるだけ同じ機材には乗りたくないのである。キャセイパシフィックに乗ってタイに行ったときもA350-900、A330-300、777-300ER、A350-1000と4区間4機種搭乗を達成したが、できるだけ多くの機種に乗れるように予約の際には細心の注意を払っている。
 執念を燃やすところが間違っているのではないかという指摘はまさにその通りなのだが、この執念を台無しにする要素はもう一つあってそれが機材変更である。まだ日本が緊急事態宣言だのまんぼうだのと騒いでいた頃に「JALのジェット機に全機種乗る」という頭のおかしい個性豊かな旅行をしたことがあるのだが、その時は最後のフライトで767-300に乗って全機種達成になるはずが機材変更を食らって達成することができなかった。日本の航空会社ではあまりないことだが、前回搭乗したキャセイパシフィックは特に機材変更の多い会社で、確か2区間目が機材変更になっていたはずだ。もっとも、機材変更のおかげで4区間4機種が達成できたのでこの時は結果オーライではあったのだが。
 今回も機材変更が発生しており、その理由はアラスカ航空の737MAXが起こした非常口のドアが吹っ飛ぶという事故である。どうも機材の点検が入るようで、737MAX8で運航されるはずの便が737-800に変わってしまった。これは乗客としては大問題である。最新の機材である737MAXは機内Wi-Fi(しかもシンガポール航空はクリスフライヤーに入会するだけで機内Wi-Fiが無料である)があり、個人モニターもついているのだが、737-800にはこのどちらもついていない。シンガポール航空は「737-800NG」などと言っているがこのNGはNew GenerationではなくNegativeの略であると勝手に思っている。もはや何もNewではない。いつまでもCOVID19を「新型」コロナウイルスと呼んでいるようなものである。

出国に成功。失敗する人はいないと思うが。

いざ、搭乗(SQ631便:777-300ER)

 さて、人生初のシンガポール航空での空の旅は羽田を朝9時前に出発するSQ631便からスタートである。羽田なら777かA350、成田ならこれらに加えてA380に乗ることもできる。787もあったような気がするがあまり定かではない。何はともあれ、飛行機に乗り込むことになった。
 乗ってみると巨大なビジネスクラスのシートが出迎えてくれた。写真を撮り損ねたが異様に大きなシートである。1-2-1のシート配置の巨大シートが並んでいた。エミレーツのビジネスクラスには乗ったことがあるが、それと比べても大きなシートである。エミレーツのビジネスクラスだって決して狭いわけではないが、こちらは一人に与えられた空間の半分がサイドテーブルなのでシート幅という意味ではそれほど広くはない。それに対し、こちらはサイドテーブルがないのでただでさえ大きな空間のほぼすべてがシートになっている。かなり良い座席なのだなということが十分に見て取れた。
 見て取れたという表現からわかるかもしれないが、今日、私が搭乗するのはビジネスクラスではない。残念ながらエコノミークラスである。プレミアムエコノミーを抜け、その先がエコノミークラスになっている。当機材のエコノミーは3-3-3配列なので777のエコノミーとしては恵まれた方である。777で9列配置になっているのはシンガポール航空とJALくらいのものだろう。ひどいのはエミレーツで、この会社はA380と777で座席配置が同じ3-4-3なのだが、快適性には天と地ほどの差がある。エミレーツに乗るなら絶対に、何があろうとA380で運航されるフライトを選ぶべきである。

幅はそれなりにあるがシートピッチは広くない。

 座席には毛布と枕が置かれていた。この点については何もなかったキャセイパシフィックよりは良いだろう。ただし、7時間以内のフライトなのでアメニティは配られない。この点はキャセイパシフィックと同じである。隣の席が空いていたので毛布と枕はそこに置いておくことにした。おそらく空席をはさんだ窓側の人がスターアライアンスの上級会員で、隣席ブロックされていたのだと思う。ありがたい限りである。
 飛行機の座席指定をどうするかというのは飛行機オタクの間でも結論が出ない問題である。私は2時間超えのフライトでは通路側、それ以下なら窓側を指定することにしている。目安としては羽田~札幌、福岡あたりなら窓側、沖縄なら通路側を指定する、という感じだろうか。トイレに行きやすいというだけではなく、機内の散歩にも便利だし荷物の出し入れにも便利だしいいことが多いのである。難点は離着陸の景色を見づらいということだが、この問題も機外カメラの普及によってだいぶ解消したと思う。と言っていたらこの777には機外カメラがなかったのだが。そんなわけで隣が空席の通路側というエコノミークラスの中ではそれなりに理想的な環境を手に入れることができた。一番はエコノミーファーストが理想だが、残念ながら当便はほぼ満席である。ま、仕事で海外に行く頃にはビジネスクラスで行くことになるだろうからこういう旅をしておくなら今のうちというわけだ。

機内から見えた富士山。主翼の下に他の飛行機も写っている。

 CAのお姉さま方が美しいということで評判のシンガポール航空だが、お兄さま方もイケメンぞろいである。今の時代に容姿端麗が採用の条件になっている(明文化されているかは知らないが)というのはなかなか面白い。ま、誰しも同じ接客を受けるなら美男美女にしてもらった方が気分はいいだろう。見た目では相手が日本人か中国人かわからないので英語で話していたのだが、どうも3人くらいは日本人CAが乗っていたらしい。ビジネスクラスに1人、エコノミーに2人だったと思うが、ファーストクラスに英語のできない客が乗っていたらどうするのだろうか。ま、ファーストクラスに乗れる人が英語を話せないなどということはそうそうないだろうから心配する必要もないのかもしれない。
 座席の背もたれはアップライトでも少し倒れたような状態になっていて座り心地は良かった。ただ、シートピッチが狭いので画面がやたらと近くにある印象を受けたので、ここは減点である。リクライニングを倒すと、ちょうどいい距離感になった。この辺はキャセイパシフィックの方がうまくやっている。A380だとどうなるか楽しみである。
 飛行機は羽田空港のRWY05から無事に離陸した。GE90のサウンドはいつも通り素晴らしかった。A350のTrentXWB、767のCF6と並んで私が好きなエンジンである。座席がエンジンより後ろだったのでスプール音は今一つ楽しめなかったが、これはエコノミーの宿命なので仕方ない。

チーズinハンバーグならぬチーズonハンバーグである。

 上空ではまず飲み物とナッツが配られ、しばらくしたら機内食が配達されてきた。そういえば昔、ナッツの出し方が気に食わないと言って飛行機を空港に戻らせた社長令嬢がいたのを思い出す。そんなことはどうでもよいのだが、機内食はたしかハンバーグと焼き鳥丼から選べたと思う。私はハンバーグを選択したが、とてもおいしい機内食だった。高校生の頃に乗ったエア・カナダの機内食は絶望的にマズかったが、それ以降に乗ったエミレーツ、キャセイパシフィック、シンガポール航空の機内食で大外れは引いていない。考えてみればこれだけ高評価を得ている航空会社ばかり乗っていて機内食がハズレという事態はあり得ないので当然と言えば当然である。ちなみにキャセイパシフィックと同様にハーゲンダッツ付きだった。あとから持ってきてくれるあたりはさすがである。
 出発からおよそ6時間が経過した頃に飛行機は降下を開始し、カリマンタン島の上空で二周くらいホールドし、チャンギ国際空港に着陸した。風が強くてふわふわ揺れていたが、着陸はとてもスムーズだった。飛行機は左の車輪を先につけ、次に右の車輪をつけて着陸したので、この時の風はおそらく機体の左側から吹いていたはずだ。機外カメラがあればクラブをとっているのを見られたと思うと、つくづくもったいないことをしたと思う。帰りのA380に期待である。

さて、骨董品のような737-800に乗り継ぎ。

プノンペン行きへ乗り継ぎ(737-800NG)

 さて、シンガポールでプノンペン行きのフライトに乗り継ぎである。何と乗り継ぎ時間は65分しかないのだが、ゲートがほとんど隣同士だったので全く問題はなかった。予想外に時間があったのでゲート近くをウロウロしていたが、通路でいきなり礼拝を始めたムスリムの集団がいたのには驚かされた。彼らがどこでも構わず礼拝をするのは知っていたが、まさか空港の通路で祈り始めるとは思いもしなかった。このムスリムたちが同じフライトに乗り、しかも隣の席に来るということをこの時の私はまだ知らない。
 チャンギで気を付けなければいけないのはセキュリティチェックがゲートのすぐ手前にあるということである。普通の空港は大きなセキュリティチェックが二か所か三か所くらいあり、ゲート前には何もないというのが一般的だがここはゲートごとにセキュリティチェックがあるのだ。つまり、うっかり空港内で水を買ってしまうと搭乗直前に没収されることになるというわけである。旅行好きの間ではよく知られたことだが、パスポートコントロールを通過した後でも水を売っているので、知らないで行くと買ったばかりの水を没収されるという悲劇が頻繁に発生するのがこの空港なのだ。

ご覧の通りモニターなしである。

 ゲートに着いた時にはもうセキュリティチェックが通過できるようになっていたので早速通過し、中で待つことにした。ちなみにセキュリティチェックを通ってしまうと中にはただ椅子が並んでいるだけである。どんな人が乗るのかと思って周りを見渡してみたら欧米人が最も多く、次に中国人、そして例のムスリム軍団が目に入った。しかもこのムスリム軍団はやたらと大荷物で、お揃いのスーツケースを持っていた。そのスーツケースが規定の重量をはるかにオーバーしているらしく(空港スタッフが持ち上げても数センチしか持ち上がらず、「too heavy!」と言っていた)、それを貨物室に預けないことには出発できないらしい。ただ、この御一行様は英語ができないらしく職員が四苦八苦していた。そしてこの貨物の積みなおしのせいで飛行機の出発が20分ほど遅れることになってしまった。手荷物の規則にはきちんと従って欲しいものである。
 今回のフライトでは窓側の席を指定しておいた。飛行時間がそれほど長くないからそうしたのだが、通路側二列に例の英語が通じない二人が座っているではないか。身振りで中に入れてくれと頼んだらなんとその二人が窓側へ移動してしまった。違う、そうじゃないと言いたいのだが英語が通じない相手(しかも老人)になすすべはなく通路側に座る羽目になってしまったわけである。しかもこの二人、しばらくしたら謎の鳥を食べ始めた。何の鳥だかよくわからなかったのだが、スズメと鳩の中間くらいのサイズの鳥を焼いたものと米を食べていた。その手で座席だのひじ掛けだのを触るのはさすがにやめて欲しいのだが。

外航のリンゴジュースは美味しくない、義務教育で教えて欲しかった。オレンジジュースはおいしい場合が多い。

 今回の機内食はとても簡素だった。メインは箱詰めされたマカロニかホッケンミーが選べたのでマカロニを選んだが、お世辞にも絶品ではなかったと思う。芯が残っている感じがした。シンガポールまで来た時の機内食は何だったんだ、というのが素直な感想である。ま、2時間の路線で機内食を出してもらえるだけ感謝すべきかもしれない。ちなみに隣の人はハラールの特別食を頼んでいたのだが、座席がズレていたせいでCAが混乱していた。ムスリム用の食事が指定されている席に行ってみたらムスリムというよりは僧侶に近い髪型の東洋人が座っている横にムスリムが座っていて、しかも二人には英語が通じないのである。私だって英語が達者なわけではないが、私の方を見ながら「Do you speak English and are you a Muslim?」と聞いてきたから「I speak English and I’m not a Muslim.」と答えたらずいぶんとホッとしたような顔をしていた。CAも大変である。そのあとも荷物をどうするかという話でGoogle翻訳を使いながら必死のコミュニケーションを試みて、どうしようもなかったのか私に向かって「Do you speak Cambodia?」と聞いてきた。
 そんなこんなで飛行機は降下を開始し、スムーズに着陸した。小さい空港なのであっという間に到着し、飛行機から降りることができた。あとはカンボジアのVoAを申請して入国するだけである。

入国に成功。

カンボジアのビザを取得する

 カンボジアは日本のパスポートを持っていてもビザがいる珍しい国である。ビザがいるとは言っても到着時にビザが取得できるし、最近なら電子申告もできるので必ずしもここに書く方法でビザを取らなければいけないわけではないのだが。ここでビザを取る場合のいい点はパスポートにビザを貼ってもらえる点、悪い点は時間がかかる点である。取得料金も違うらしいのだが詳しいことはよく知らない。パスポートにビザを貼ってもらうという経験をするためにVoAを取得することにした。ちなみにVoAというのはVISA on ARRIVALの略である。Arrival Visaではなくこういうのが普通らしい。よく知らないが。別にどちらでも通じると思う。
 申請方法は超簡単で、これができないなら家から出ない方が良いと思うくらい簡単である。パスポートを渡してお金を払い、その辺で待っていると名前を呼ばれるのでビザの貼られたパスポートを受け取るだけである。ちなみにカンボジアの入国カードと税関申告書は飛行機の中で配られるので先に書いておいた方が良いと思う。要するに到着した便に乗っている人が大挙して窓口に押し掛けるのでそれなりに待ち時間が発生するから、地上でカードを書くという時間を節約することで少しでも競争で優位に立とうというわけである。ちなみに名前を呼ばれるときは「Japanese、ニホンジン!」と呼ばれた。その場に日本人は私しかいなかったのでこれでわかるわけである。まあまあ失礼な気がしないでもないがイミグレとパスポートコントロールというのは旅行者が絶対に逆らえない相手だから何を言われても我慢するしかないわけだ。

なぜぶつからないのか不思議である。

 プノンペン国際空港から市内までは適当に移動すればいい。バスがあるかは知らないが、私はGrabを使うことにした。市内まで18000リエル、日本円で言うと680円くらいだった。帰りは11900リエルだったので時間や混み具合でだいぶ変動するらしい。ちなみにこれはトゥクトゥクの料金で、車だと倍くらいになる。スーツケースがあるとトゥクトゥクに二人で乗るのは難しいが、一人なら余裕である。ひったくりには注意した方が必要だが、カンボジアに4日間いて危険を感じた場面は今のところ発生していない。
 次はシェムリアップからプノンペンまでバス移動した記録を書こうと思っている。もしかしたらアンコールワット訪問記が先になるかもしれないが。

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