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机上の空論(かーろん) カーリングを計算してみる (3)

今回は計算しない

カーリング経験のない私がカーリングの理解を深めるための自習です。
机上の空論(カーろん)カーリングを計算してみる(1) (2) の記事の続きですが、今回は計算はせず、実際の試合のデータと前回の計算結果を比較してみようと思います。


実際の試合のデータ取得方法

前回計算したのはストーンの速度が中心ですが、実際の試合のストーン速度を把握するのは難しいので、ホッグ-ホッグ間秒数とストーンが停止した位置をデータとして扱うことにします。
できれば、多くの試合のデータで確認した方がよいのですが、データの取得・整理だけでも膨大な時間が必要になるため、今回は5月に開催された第39回全農日本カーリング選手権の女子予選の1試合のみを使用します。
データの取得はストップウォッチ、記録用紙、リモコンを用意し、一投ずつホッグ-ホッグ間秒数を計測し、ストーンの止まった位置を記録します。(一投のみホッグラインがテレビカメラの画角から外れたため測定できませんでした。1試合は10エンドで160投ですが、159投のデータとなりました。)
ストーンの止まった位置は、1フィート区切りの図を参考に目測で0.5フィート単位で記録します。テレビ画面をみての目測なので、厳密で正確な値ではありません。その点ご理解お願いします。

記録用紙と位置マップ


実際の試合のデータ整理結果

測定したデータを表計算ソフトに入力し、グラフにして整理しました。
横軸をストーンが止まった位置、縦軸をホッグーホッグ間秒数でグラフにしたのが図3.1です。ドローショットで他のストーンに当たらなかったもののみをプロットしています。プロットしたドローショットは83投です。
テレビ画面での測定ですが、傾向がわかるのでそれなりに測定できているのかなと思います。

図3.1

このデータを前回作成した計算結果のグラフと重ねてみたのが図3.2です。
横軸がストーンの位置、縦軸がホッグーホッグ間秒数、線が計算したもの、丸印が実際の試合のデータです。
計算はスイープを考慮していませんが、実際の試合では、スイープをしており、ショットによってスイープの状況が異なるので、比較は難しいですが、大雑把にみてみます。

図3.2

ハウス内では、それなりに計算の線にのっているようにみえますが、3,2,1番とハウスより手前(投げ手側からみて)になるほど計算の線は実際のデータから外れてしまっています。
計算のホッグーホッグ間秒数よりも早い秒数でも止まることになるので、実際のストーンは計算のストーンの速度変化より、停止直前の速度低下が急激なのかもしれません。
実際のホッグーホッグ間秒数とストーン位置の関係は直線的なようです。
また、このグラフでは、ゲームの前半と後半で色を分けてみました。
前半1~5エンドが緑色の丸、後半6~10エンドが橙色の丸です。
後半の方が滑りにくいアイスになっている傾向がでているように見えます。


ウェイト別頻度の傾向

せっかくデータを整理したので、各ポジションでのショットのウェイト別頻度の傾向をみてみました。ホッグーホッグ間秒数を0.5秒刻みで区分けし、何秒のショットを何回投げているのかをカウントし、グラフ化しています。こちらはテイクショットのデータも含めた整理で159投のデータです。

まずはフロントエンドです。
リード、セカンドのウェイト別頻度をまとめたものが図3.3です。
上が赤チーム、下が黄チーム、左がリード、右がセカンドです。
同じポジションの比較は上下で見比べ、リード→セカンドの流れは左から右にみてください。

図3.3

赤チームはリードでハウスにストーンを入れ、セカンドでガード、テイクをする進め方、黄チームはリードでガードを置き、セカンドでハウスに入れてくる進め方の違いがよくわかります。

次にバックエンドです。
サード、フォースのウェイト別頻度をまとめたものが図3.4です。
上が赤チーム、下が黄チーム、左がサード、右がフォースです。

図3.4

このデータを見るとやっぱりサードはいろいろなショットを投げなければいけないことがよくわかります。
フォースのショットを赤チームと黄チームで比較するとドローが多いかテイク多いかで違いがはっきりしています。
この試合は赤チームが勝利しています。赤チームが黄チームのフォースに難しいテイクを投げさせるように組み立てた結果だと考えられます。
全体的にみると赤チームは同じ人が同じウェイトのショットを多く投げており、黄チームは同じウェイトのショットの回数が少ない傾向がでています。赤チームは黄チームに色々なショットを投げさせたととらえることができ、この状況が試合の結果につながったとみることができそうです。


実際の試合のデータを整理してみて

実際のデータと計算のデータでは、違いがあり単純な計算では難しいことがわかりました。ただ、ホッグーホッグ間秒数とストーン停止位置の関係は計算したような曲線ではなく、直線的な(比例に近い)関係のようなので速度設定の換算は計算したときに思っていたよりもやりやすいのかもしれません。(といってもかなり難しいことだと思いますが)
また、ウェイト別頻度の傾向を整理することで、各ポジションの役割、難しさについて少し理解が進んだかなと思います。

2022.07.10

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