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未発売映画劇場「シェラ・デ・コブレの幽霊」

幻の映画として大いに有名になったので、今さらな感じもするんだが、今回は「シェラ・デ・コブレの幽霊」のお話。

とはいえ、知らない人もいるだろうから、ざっくり説明しよう。この「シェラ・デ・コブレの幽霊」とは、1967年8月20日(昭和42年)にNET(現テレビ朝日)の「日曜洋画劇場」で放送され、当時の多くの子供たちにトラウマを与えるほどの恐怖を植えつけた「怖い映画」だ。

元々はアメリカでお蔵入りとなったTVシリーズ(後述)のパイロット版で、海外ではいくらか放送されたものの、逆にアメリカでは試写以外で見た人はほとんどいないのだとか。

そんな事情からか、その後日本でも再放送されることはほとんどなく、伝説化していた。

そのまま時は過ぎ、2009年8月28日に大阪で放送されたTV番組『探偵!ナイトスクープ』で取り上げられ、番組中で国内にプリントが現存していたことが紹介されて話題になったのだ。その後、このプリントで上映会も開かれたが、映画そのものの権利者が不明らしく、現在のところソフト化などは見込みがないようである。

なので、実際に見た人は大いに自慢していいと思う。私は見たもんね

映画の中味とか、その数奇な来歴とかはネット上にもいっぱい書かれているので、省略。興味のある人は自分でググってね。英題は The Ghost of Sierra de Cobre 

さて、その「シェラ・デ・コブレの幽霊」が初放送された時のことを調べていたら、突然、私自身、その時にテレビを観ていたことを思い出したのだ。それまでまったく忘れていたのだが。

といっても、その時、映画そのものは見ていない。

昭和42年の夏休みのこと。

その日曜日、私は親に連れられて、家のあった東京・練馬から、横須賀にあった父親の実家を訪ねていた。

夜になって、そろそろ帰るかということになった時、茶の間のテレビでちょうど「日曜洋画劇場」が始まり、解説の淀川長治さんが喋りだした。なぜか印象に残ったのが、「今日は恐怖映画を2本立てでお送りします」ということと、その1本が「ミイラ再生」だったことだ。

当時は怪獣ブームから妖怪ブームに移行したくらいの時期だったと思う。まだ映画にはほとんど興味はなかったのだが(当時小学校3年生)、たぶん「ゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔くん」にはハマっていた時期なので、ミイラ男のほうが記憶に引っかかったのだろう。

なので、その時点ではもう1本が何だったかは、まったく意識されなかった。だが調べてみたら、その時の放送こそが、「シェラ・デ・コブレの幽霊」が放送された回そのものだったのだ。

残念なことに、ちょうどそのタイミングで出発することになったので、肝心の本編をまったく見ることはなかった。いまから思えば、惜しいことをしたもんだ。

これを覚えている理由のもう一つは、この訪問がわが家の引っ越しの挨拶だったからだ。この月末に、練馬から兵庫県の西宮に転居した。忘れがたい夏だった(笑)

そして、時は流れてそれから43年後、2010年の8月に東京で開かれた日本SF大会(TOKON10)で、「シェラ・デ・コブレの幽霊」が上映され、私もめでたく本編と遭遇したわけだ。

さすがにすでにいい大人になっていたので、トラウマになるほどの恐怖は感じなかったが、けっこうよく出来たゴーストものだとは感じた。

むしろ、もしもこのTVシリーズ(「The Haunted」というタイトルが予定されていたらしい)が実現していたら、という方に興味を持った。

1964年の企画だったそうだから、のちの「事件記者コルチャック」などよりもはるかに早くホラー系の探偵ものが実現していたことになる。さすがは「アウターリミッツ」の名プロデューサー、ジョセフ・ステファノだ。

シリーズを予感させる設定がちらほら見え隠れしていた(主人公の事務所に飾ってある絵画とかね)ので、実現していたら面白かっただろうな、とかついつい考えてしまった。

主役の建築家兼心霊探偵を演じていたマーティン・ランドーにとっても、もしこのシリーズが実現していたら、1966年スタートの「スパイ大作戦」には出ていなかっただろうから、大きな分岐点だったのかもしれない。

もしそうなっていたら、彼もあれほどのキャリアを積めたのか。あるいはこれをきっかけに、もっとビッグになっていたのか。そのへんは、神のみぞ知る。

まこと、人生いろいろでございます。

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〔追記 2017/7/17〕今日、マーティン・ランドーの訃報が流れてきた。合掌。この「シェラ・デ・コブレの幽霊」は、ひょっとしたら彼の運命を変えた作品なのかもしれない。ぜひとも陽の目を見せてやりたいが……

〔追記 2018/8/3〕 ついに陽の目を見るらしい。2018年10月16日にDVD&BDでのリリースが予告された。アメリカのamazonではすでに予約が開始されている(なぜかDVDだけだが) これは嬉しいと同時に、ちょっと悔しいね(笑)

〔追記 2018/11/22〕 ということでアメリカで発売されたBDが、わが家にも到着。例のヴァージョンとはラストが違うんではという噂があるけど、いままで見た人が少なかったのだし、私もおぼろげな記憶しか残ってないから、確認しにくい(笑) もったいないので、BDはまだ見ていない(未開封です)



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