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未発売映画劇場「ジェシー・ジェームズ対フランケンシュタインの娘」

はい、夏の納涼怪奇映画大会第2弾ですよ。

前回の「ビリー・ザ・キッド対吸血鬼ドラキュラ」であきれた人、まだまだ甘いです。世の中には、まだこんな映画だってあるんだから。ホントに世界は広いでしょ。

といっても、今回の「ジェシー・ジェームズ対フランケンシュタインの娘」は、それほど広い世界の話ではないです。

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「ビリー・ザ・キッド対吸血鬼ドラキュラ」と同じ1965年の作品。前回の最後にちょっと書いたように、監督が同じ「早撮り」ウィリアム・ボーダインなだけでなく、製作、脚本、撮影、音楽といった主要スタッフもほぼ同じメンバーなのです。

そう、この映画はアメリカのエンバシー映画が「ビリー・ザ・キッド対吸血鬼ドラキュラ」とセットで製作して配給した、2本組み映画の片割れだったのです。

製作陣の誰かが、どっちかを作るときに「このネタ面白いから、もう一本いけるんじゃね」などと余計なことを思いついたに違いないですね。どっちも西部劇なので、ロケ地もいっしょですみますし。ドラキュラとフランケンシュタイン、どっちを先に思いついたかはともかくとして。

ただ、見ていてなんとなく、フランケンシュタインのほうがちゃんとしている感じはしましたね。セットも組まれてるし。だからこっちが先だったのではと推測しときます。

舞台はメキシコの村。

村はずれにそびえる城館(いかにも絵な感じの書き割り) そこにはフランケンシュタインの孫を名乗る兄妹が住み、非道な実験を繰り返していた。どうやら村の若者を次々に実験台にしていたらしく、住民は逃げ出し、もはや誰もいない状態。兄のほうは罪悪感からそろそろ嫌気がさして着ているものの、祖父さん大尊敬の妹・マリア・フランケンシュタインのほうは、まだまだヤル気十二分。

そこらへんへやってきたのが、名うてのアウトローのジェシー・ジェームズと相棒のハンク(筋肉隆々)

地元の悪党と組んで駅馬車強盗を企てるが、裏切にあって連邦保安官の待ち伏せを喰う。なんとか脱出するが、相棒のハンクは重傷。

そこで行きあったのが、くだんの村から逃げてきた若い美女。

彼女の案内でジェシーとハンクは、このあたりで唯一の医者であるフランケン兄妹の屋敷へ。

実験材料に事欠いていたマリア・フランケンシュタインは、さっそくハンクに改造実験を施してしまう……

おいおい、タイトルは「娘」(原題JESSE JAMES MEETS FRANKENSTEIN'S DAUGHTER)なのに、実際には「孫娘」なのかよ(笑)

屋外を昼間からぶらぶらしているという言語道断なドラキュラと違って、こちらのフランケンシュタイン博士は、いちおうそれらしい科学装置がある実験室を用意しているなど、それなりにちゃんと作られています(でも毒薬の瓶にでっかく「毒薬」と大書してあるあたりはやっぱりちょっとね)

それと余計なことかも知れないが、この孫娘が行なっているのは、どうやら人造人間の製造ではなく、脳移植みたいだが、まあそのへんもいいでしょう。

ビリー・ザ・キッドとドラキュラには時代的なずれがあったのは前回指摘したが、今回は大丈夫。

ジェシー・ジェームズはもちろん実在の人物で、1847年生まれで1882年死去(諸説あるようですが) 兄のフランクと組んで強盗団を組織し、西部各地を荒らしまわった無法者で、高額の賞金につられた仲間の裏切りで射殺されたとか。アウトローの実像なんてそんなもの。のちの世になって、義賊だったなどの虚像が膨らみ、小説や映画で主人公になって名を馳せたのは、ビリー・ザ・キッドと同じパターン。

いっぽうでメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』が発表されたのは1818年だから、うん確かにこのマリア・フランケンシュタインが、かのビクター・フランケンシュタインの孫ってのは、時代的にはしっくりくるな。

ただ、肝心の(肝心だよね)フランケンシュタインのモンスターが、ちょっと迫力不足なのが、この映画を隠れた大傑作でなくしてしまった最大の原因といえましょう。

剃りあげた頭の周囲に、ぐるりと縫い目がある大男なだけで、鉢巻き巻いたスキンヘッド男にしか見えないし。だいたい映画の終盤まで実験が成功しないので、モンスターの出番が少なすぎるぞ。

そりゃ、ユニバーサル映画の版権問題があって、あのフランケンシュタインの怪物スタイルが使えないのは承知してますがね。もうちょっとなんとかならなかったのか。

作劇でも、たとえばジェシー・ジェームズが、もともとは自分の相棒だった改造人間を前に、殺すべきか苦悶する、なんてシーンでもあればドラマチックだったかもしれないが、そんな場面はないし(その時ジェシーは気絶中で、改造人間を仕留めるのは×××。ダメだな、このジェシー・ジェームズは)

けっきょくは非常に薄味なフランケンシュタイン譚になっていたのだが、低予算映画であることを勘案すれば、まあやむを得ないか。

作ってる側が思っていたほどの名案ではなかったらしい、この2本セットの西部劇+怪物映画。たぶん儲からなかったんだろう

そのおかげで、引き続いて「ワイアット・アープ対狼男」とか「ワイルド・ビル・ヒコック対ミイラ怪人」「カスター将軍対ゾンビ軍団」とかが作られなかったことは、言うまでもない。

そしてこの2作とも、日本ではもちろん劇場公開されず、テレビ放送はされたらしいが、ソフト化されることもなかったのであります。残念でした。

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未発売映画劇場・納涼怪奇映画大会は、もう一本だけ続けようと思ってます。

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