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エアポート一族の誕生

500円映画劇場でたくさん見てきた「エアポート・シリーズ」 その数およそ40本以上と思われるこの一族の全貌は、いまだきわめられずにいるわけです。 【参照「エアポート一族の陰謀」】

で、シリーズの全貌のほうはともかくとして、そのルーツはというと、こちらはわりとはっきりしています。「エアポート一族の陰謀」にも書いたように、そもそもは、アーサー・ヘイリーのベストセラーを映画化した「大空港」(1970年)がルーツ……いやいや、「大空港」って、邦題に「エアポート」が入ってないじゃないですか(原題はもちろん「AIRPORT」ですが)

じゃあ「エアポート・シリーズ」の元祖はというと、これもはっきりしていて、「大空港」の続編である「エアポート’75」なわけです(1974年の映画なんだけど) これがたぶん、邦題に「エアポート」の文字を冠した最初の映画。公開前の映画雑誌の新作情報では「大空港’75」って書かれたりしてましたね。

横道にそれますが、この「エアポート’75」は、おそらく邦題に年号を配した最初の映画でもあると思われます。いまではフツーに使われる手法ですがね。

ついでにさらに横道にそれれば、それまではほとんど「続」とか「新」とかを冠していた続編映画の邦題に、初めて算用数字を冠したのは、たぶん「ダーティハリー2」(1973年/日本公開は1974年)ですね。公開当時にずいぶん斬新に感じたのを覚えています。

これと「ゴッドファザーPART2」(1974/日本公開は1975年)が続編映画の邦題に革命を起こしたのは間違いないところ。「エアポート’75」とあわせて、この1年ちょっとで洋画の邦題センスのトレンドが劇的に変わったんですね。

で、その「エアポート’75」ですが、考えてみたら私、初公開当時に見ただけで、その後ほとんど再見していないんですね。別にそうつまらなかったわけではなく、その後の続編群もちゃんと見ているのに。まあたぶん、たまたま再見の機会がなかっただけなんでしょうが。でも「パイロットが心臓発作を起こした小型機が、たまたまジャンボ機に空中衝突する」という天文学的低確率の事故という初見時の印象が強くて、いまさらソフトを買う気にならなかったのも事実だけど。

ところが先日、この「エアポート’75」がamazonのプライムビデオに出ているのを見つけました。プライム会員ならば見放題

ということで、およそ45年ぶりに「エアポート’75」を再見してみました。

あらためて見てみると、うーん超大作といえばいえるんだろうが……チャールトン・ヘストンはともかくとして、現在では誰がスターで誰がそうでないのかわからなくなっている程度のオールスターキャスト。まあ実際、当時でもテレビ畑のスターがほとんどだからね。後年の「タワーリングインフェルノ」あたりとくらべると、やはりかなりの小粒感は否めない。

天文学的低確率は別としても、ストーリーは案外平板で、次々と訪れる危機というほどでもない展開。事故発生までの人物紹介が長すぎるせいだろう、いざ事故が起きても、無事着陸のクライマックスまで駆け足で通り過ぎる感が強いですね。映画全体が107分しかないせいもあるでしょう。ずっと後輩の500円エアポート映画諸君と、長さはさほど変わらないのですから。

ただ、こうした欠点をカバーして余りあるのが、ホンモノのジャンボ機を使った、その迫力。

そう、CGなどなかったこの時代、じっさいの飛行機を使っての空中撮影を駆使した映像は、迫力というかリアリティ満点。ジャンボ機のみでなく、衝突する小型機はもちろん、救出に飛んでくる軍の高速ヘリコプターに至るまで、すべてホンモノ。これはけっこう凄いですよ。

いくらCGが発達したとはいえ、やはり本物の迫力には一歩も二歩も譲るものがあります。

考えてみたら、兄貴分の「大空港」でも旅客機の飛行シーンは特撮だったし、当時実機を駆使した迫力は評判になっていたのを思い出しました。これがこの映画のヒットにつながり、その後も陸続と(公認非公認の)続編群を生みだした、その要因だったんですね。

そんなわけで、一族誕生の秘密は、なんとなく納得いった気がしました。

ついでにそのまた続編である「エアポート'77/バミューダからの脱出」(1977年)も再見してみました。

こちらもあんまりいい印象が残っていなかったんですが、やはり「エアポート’75」の欠点はそのまま引き継がれていますね。まあキャストは若干ボリュームアップしてましたが。

「エアポート’75」を救った実機使用の撮影は?

ご存知のように、こちらはジャンボ機が海底に沈むという無茶なストーリーなんですが、さすがにホンモノのジャンボ機を沈めることはできなかったようで、残念ながらモデルを使った特撮でした。まあ無理もないか。

だがこちらの見せ場は、ホンモノの海軍と沿岸警備隊が協力したという救出劇で、こちらは迫力満点。なんとか映画自体の大作感を守ったようです。

このあと、ジェニングス・ラング製作によるこの正統エアポート・シリーズは、世紀の怪作「エアポート'80」(1979年)で打ち止めとなります(これはまだ再見する気にならん)

だから、その後の「エアポート一族」に関しては責任取れませんよということでいいんです(笑)

【画像のリンク先はamazon.co.jp】

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