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令和元年・夏場所雑記

完全に予想外でしたよね、令和最初の優勝者。

まさかまさかと思っているうちに朝乃山が平幕優勝を遂げてしまいました。場所前に出ていた相撲各誌の展望号をチェックしましたが、朝乃山に触れた記事はほぼなし。NHKの相撲中継でも期待の若手特集で朝乃山を取り上げていなかったし、相撲マスコミ、評論家各氏は総懺悔ものですね(笑)

平幕優勝は昨年初場所の栃ノ心以来。平幕優勝の歴史では、わりと近接して発生したほうですね。【参照 史上最強の平幕優勝】

しかし、その栃ノ心の優勝以降に、御嶽海、貴景勝、玉鷲が初優勝しているので、なんかもっと平幕優勝があったような気がしましたが、彼らはいずれも役力士だったんですね。

新年号・令和の最初の優勝力士が平幕優勝になったわけですが、前にも書いたように、平成最初は北勝海、昭和最初は宮城山と、いずれも当時の横綱で、大正最初の優勝者のは当時大関。いずれも看板力士だったので意外といえば意外ですかね(もっとも昭和と大正は元年には本場所がなかったので2年ですが) 

明治ですか? 優勝制度が始まったのは明治42年夏場所なので、明治最初はナシ。

ちなみに、明治年間の優勝はたったの7場所で、そのうち5場所を制したのが太刀山。はい、今回の朝乃山が百数年ぶりの富山県出身力士の優勝といわれていましたが、その前の富山県出身優勝の大先輩が、この名横綱・太刀山です(最後は大正5年夏場所。優勝は通算9回。そのほかに優勝制度開始前に優勝相当成績が2回ある)

さて、場所前にはノーマークだった朝乃山ですが、その時点で話題の中心だったのは新大関・貴景勝。結果はご存知のとおりで来場所はいきなりカド番となります。負傷個所が膝だけに、ケガが治るかどうかが最大の焦点でしょう。

その貴景勝ですが、4日目の土俵で負傷して翌5日目から途中休場。ところがわずかに3日間休んだだけで再出場しました。

これはいただけません。全治3週間とかの診断が出て休場したのに、3日で治るわけがありません。もし治ったとしたら、最初の診断はなんだったんでしょうか。

そのあげくに、1日相撲を取っただけで再休場。これではよぶんに不戦勝を配給しただけじゃないですか。

本人が出たいと主張したらしいのですが、ここは師匠である千賀ノ浦親方、そして相撲協会が止めるべきだったでしょう。こういうのを「根性がある」とか「責任感が強い」とかいって褒めるからいけないんです。無理するのは本人の損になり、場合によっては土俵生命を縮めかねない暴挙であることをしっかり教えねば。無理をした結果がどうなるかは、つい先日に引退した横綱が示したではないですか。

第一、出たり休んだりするのは、入場チケットを買った観客に対して失礼。貴景勝が再出場したのを見て、休んでいた3日間のチケットを買っていた観客はどう思ったでしょうね。不戦勝になった玉鷲栃ノ心の相撲を見たかった観客もしかり。このへんまで考えなければいかんでしょう、看板力士とその周囲は。

今場所は、関脇の逸ノ城も、中日から4日間休んだあとで再出場しました。このへんはいまのところ本人と師匠に任せっきりで野放し状態。休場の可否などは協会指定医での診断に統一するとか、相撲協会(特に審判部)は検討すべきですね。

ついでに、その審判部についてもひとこと。物議をかもした13日目の栃ノ心対朝乃山の一番ですが、その際の審判長だった阿武松親方(もと益荒雄)の場内説明はいかにも不十分で稚拙でした。

いまはあの説明は場内の観客だけでなくテレビで見ている全国の視聴者にも向けられています。なにしろ生中継しているんですからね。

テレビであの一番を見ていた視聴者(私自身もそうでした)は、おそらくほぼ全員が「栃ノ心の踵、出てないじゃん」と突っ込んだはず。少なくともビデオではそう見えましたね。

ただし、これはあくまで「ビデオで見た」限りの話。TVカメラは土俵よりもやや上方にあり、必然的に見下ろす形となるので、踵や指先が砂についたかどうかは正確に見て取りにくいのです。

対して、審判の視線は土俵と同じ高さ。ましてや、髪の毛一筋、砂粒ひとつがついても勝負あったの世界なのです。

だから、ビデオはあくまで「参考」(「ビデオ判定」という呼び方が誤解を招きますね) これは、サッカーや野球でも同じですが、あくまでビデオは参考で、最後は審判の判断で決するのです。

というあたりを、あの阿武松親方がしっかり説明できたかというと、とてもとても。だいたい、当該力士の四股名すらあいまいではいけないです。

じつは今場所、幕下あたりからの相撲はテレビ中継で、連日けっこうびっしり見ました(退職してヒマだったからです。相撲観戦45年余でこれだけ見たのは初めて) で、下位のほうでも物言いがつく相撲はけっこう多いのですが、その際の場内説明は、担当者によっての巧拙の差が大きすぎます。明快に簡潔に要点を説明できる人と、もたもたと言い淀んだあげくに東西を間違えたりする例もしばしば。私見では後者のほうが多い感じ。これでは、審判の判定の信頼度が揺らぎます。

ましてや阿武松親方は審判部部長の要職にあるのです。これでは困りますね。

相撲協会は、審判員たちを対象に、プロのキャスターでも呼んで場内説明の講習会などを開くべきでしょう。説明の組み立て方や滑舌、誰に対して何を説明するのかなどのイロハから特訓してはいかがでしょうか。

肝心の相撲内容についてが最後になりましたが、今場所はとにかく面白い相撲が多かった。これは特筆しておきましょう。幕内では平幕上位での三役昇進をめぐる若手力士の競い合い(阿炎、竜電、明生、正代ら)、下位では小兵力士の大活躍(炎鵬、照強、石浦ら)

そして幕下上位の出世争い。琴鎌谷、貴ノ富士、一山本、木崎海、竜虎、豊昇龍、さらには納谷塚原といった、若手の有望株がいよいよ上昇してきて、激しい競争になっています。場所後にはこのうちの数人が十両昇進をはたすと思いますが、来場所以降も引き続き彼らの出世争いが繰り広げられるでしょう。さらにはその後からも、若い力がどんどん上がってきています。

まずは今週水曜日の十両昇進力士の発表、そして名古屋場所の番付発表を楽しみに待ちましょう。

そうそう、栃ノ心も大関復帰でドラマを作りました。いろいろ波乱はありましたが、そもそもケガさえなければ大関陥落などする力量の人ではありません。大関復帰など当然、来場所からはさらに上を目指してもらいましょう。

そんなこんなで、なかなか見ごたえのある、令和最初の本場所でした。

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