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ヒットの法則:原理見直しの法則

今日もご覧いただきありがとうございます。
今日はプラスのはさみ、フィットカットカーブを見ていきたいと思います。
地味な進化でも、時代に合わせた進化であれば、きちんとヒット商品につながるケースです。
(トップ画像引用元:https://bungu.plus.co.jp/product/cut/std/fcc_std_koukin/

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、これは違うのでは?など意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がると思います。

フィットカットカーブについて

「フィットカットカーブ」は文房具メーカーのプラス株式会社が販売しているはさみです。このはさみは、刃の部分がカーブしているのが特徴です。

フィットカットカーブ。刃がカーブすることで刃の根元から先端まで楽に切れる。
(引用元:https://bungu.plus.co.jp/product/cut/std/fcc_std_koukin/)

はさみで物を切るとき、はさみの刃が開きすぎていても、閉じすぎていても、手の力がうまく伝わらず、切るのに苦労するそうです。
例えば、厚みのある段ボールを、はさみの刃を目いっぱい開いて、刃の奥の方で切ろうとしてももなかなか切れません。また、使用期限の切れたクレジットカードのような少し硬いものを切るときに、はさみの刃をちょっとだけ開いて、刃の先端だけで切ろうとしても、滑ってカードが逃げてしまいます。
つまり、はさみの二つの刃には、切るのに適した角度があり、その角度を一定に保つために、刃をカーブさせている、というのがこのフィットカットカーブです。
この商品は、11/12放送の「がっちりマンデー」で取り上げられ、その放送によると、通常年間100万本売れれば御の字と言われるはさみ市場で、年間300万本を売り上げるヒット商品となっているそうです。

ヒットの法則:原理見直しの法則

さて、通常であれば、例えば「新開発の特殊素材でできた刃で切れ味UP」のような商品のほうが、新しい感じがしますし、華やかな企画に感じます。しかし、この「フィットカットカーブ」は、刃の形状だけと、一見、地味な進化をしています。
しかし、この地味な進化は、非常に理にかなっていると思います。

まず、この商品が生まれた時代的な背景を考察です。昔に比べてはさみが切る物の対象は増えたことが想像されます。例えば、クレジットカードや、ETCなどの普及で、期限切れのカードを切って廃棄する必要が出てきます。また、通販の普及で段ボールを切るような機会も増えているでしょう。また、趣味で布を切るニーズも増えているようです。
その一方で、日本の人口はご存じの通り、高齢化が進んでいます。
つまり、はさみが切る対象は増えて、はさみを使う力が必要になる一方で、使用者は力が弱い方が増えているわけです。

ここで、はさみの切れ味を上げるためにどうするか、となるわけですが、プラスは新規の素材やコーティング開発には進まず、はさみの原理の見直しを行い、刃の形状を変えました。
もし、ここで新規の素材など大幅な開発に移行していた場合、投資も大きくなりますし、うまく開発できなかった際に新商品を出すことができないといったリスクが大きくなります。
今回の原理の見直しによる、地味な進化であれば、投資も少なく済み、企業側のリスクも減ります。さらに、投資が少ないことから商品の価格も抑えることができ、消費者にもメリットが生まれます。
普段、華やかな商品開発に目が行きがちですが、地味な進化も、メーカー、消費者双方にWin-Winをもたらすことができるでしょう。

地味なだけでは売れない

一方、原理の見直しだけで進化ができればそれでよいか、というと決してそうではありません。地味な分、その魅力はユーザーにしっかり伝えないといけないですし、そもそも進化の方向性が、世の中の流れに沿っている必要があります。
プラスでは、会社全体として、商品を使う際の力を軽くすることに取り組んでいるようです。この背景には前述の高齢化といった流れがあるでしょう。

つまみを長くしたことで、軽く開くことができるクリップ「エアかる」
(引用元:https://bungu.plus.co.jp/product/bind/clip/airkaru/)
軽い力で紙を閉じることができるホッチキス「フラットかるヒット」
(引用元:https://bungu.plus.co.jp/product/bind/hotchkiss/fl_karu_hit/)

また、商品の魅力をユーザーに伝えるための工夫も見られます。一番わかりやすいのは商品名でしょう。もし、これらの商品がこれまでの商品と同じ「はさみ」や「クリップ」「ホッチキス」という商品名だったら、地味な進化だけに見過ごされます。
商品発売時にはリリース発表し、フィットカットカーブでは10周年記念モデルを発売したり、売上No.1キャンペーンを展開したりと定期的な話題つくりや販促展開がされています。

2017年には売上No.1キャンペーンを実施。
(引用元:https://bungu.plus.co.jp/special/campaign/201710fcurve/)

手堅い商品の開発だけでなく、販促まで含めたマーケティング全体の重要性が伺えます。
これを裏を返すと、制約条件の中で、大きな進化をもたらすことができない商品でも、その魅力をしっかり伝えることができれば、売上に繋がる、言えそうです。マーケティング全体の重要性を考察できる、良い事例だと思います。

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