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しくじり商品研究室:ネイト・ロボット掃除機

商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.biccamera.com/bc/item/3007640/

ネイト・ロボット掃除機の例

ネイト・ロボット掃除機について

ネイト・ロボティクス(以下ネイト)はカリフォルニア州サンノゼに本社を置くロボット家電メーカーです。
日本では2010年代にビックカメラなどの量販店でロボット掃除機を展開していました。
一言でいうと、ルンバにも負けない高機能なロボット掃除機で、特に室内マッピング機能は時代を先取りしていました。

ネイトと丸型ロボット掃除機の比較。壁際までしっかり掃除できるという。
(引用元:https://shopeu.neatorobotics.com/ja)

ところが、現在、日本におけるロボット掃除機の市場は、「ルンバ」のiRobot社が圧倒的なシェアとなっています。
ルンバとの戦いに敗れ、ネイトのロボット掃除機を見ることはほぼなくなってしまいました。
その背景にはどのような要因があったのか、見ていこうと思います。

しくじり理由

前述したように、日本におけるロボット掃除機の市場はルンバ(iRobot)が圧倒的なシェアを持っています。
他の市場ではあまり見ないほど圧倒的過ぎて、正直ロボット掃除機の分析は避けたいと思っていましたが、なんとか考えてみたいと思います(笑)

①ニーズと技術の格差

本体上部からレーザーを照射、部屋をマッピングする。
(引用元:https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=k_duEnKHlOk)

ネイトのロボット掃除機は大きく以下2点をルンバとの差別化としていました。
①ルンバのランダムな動きに対し、室内をマッピングすることで、効率よく掃除する
②本体の前端に回転ブラシをつけることで、壁際まで掃除できる
それでいて、価格は2011年発売のBV75で¥65,000で、当時のルンバと同等の価格帯でした。
一言で言えば、ルンバよりも高性能な掃除機が、ルンバと同等の価格で買えるにも関わらず、ネイトを選ばれませんでした。
この理由として、まず、マッピングの価値が伝わなかった可能性があげられます。
2011年というと、まだまだロボット掃除機は広まり始めた段階で、
ロボット掃除機も壁にぶつかって方向を変えるのがメインでしたし、Aiもこれほど進歩していない時期でした。
このころユーザーが求めていたのは、人がやるのと同等の掃除効果を求めるのではなく、「とりあえず掃除を代わりにやってくれる」手軽さを価値としてとらえていた時期だと考えられます。
その中で、マッピング効率よく掃除ができる、壁際まで掃除ができる、人の手に変わるような訴求はイメージできなかったでしょう。

②機能と合致しないデザイン

また、デザイン面でも製品コンセプトと一致しない部分が挙げられます。
高性能さを謳う一方で、製品のデザインはシンプルで、フレンドリーな印象です。

フレンドリーな印象の白基調でシンプルなデザイン。
(引用元:https://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1411/19/news171.html)

ルンバに対して唯一高性能に見える部分はディスプレーですが、それも非常に小さく、デザイン面で印象に残りません。
人の手に変わる高性能を当時はまだ理解できなかった、かつその高性能さも伝えにくいデザインになっていることで、ルンバの二番煎じと見られてしまったのが失敗の要因だと考えられます。

理屈はわかりやすく

今でこそ、画像認識、それによる自動運転、さらにはAiなどが広まり、「室内をマッピング」といった技術は理解しやすいでしょう。しかし、ネイトが販売されていたタイミングでは、ルンバの「ブラシでゴミを掻き込む」「ぶつかったら方向を変えて部屋中動き回る」といった理屈はわかりやすかったのだと思います。
今回のネイトの例からは、導入期において、「訴求の理屈はわかりやすくあること」「商品側の技術進歩と世の中の技術進歩が合致しないと、その価値は伝わらない」ということが学べると思います。

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