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しくじり商品研究室:スズキ・キザシ

今日もご覧いただきありがとうございます。

商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.suzuki.co.jp/suzuki_digital_library/1_auto/kizashi.html#p1

スズキ・キザシの例

スズキ・キザシについて

キザシはスズキが2009年に発売した乗用車です。海外市場をメインターゲットとして開発され、トヨタや日産といった乗用車メーカーの作る自動車と同等の大きさを持つ、堂々としたセダンです。
自動車に詳しい方にとっては、キザシ=覆面パトカーとしておなじみかと思います。というのも、国内販売約3,400台のうち、1/4以上の約900台がパトカー(覆面でないものも含む)として警察へ導入されたからです。なお、国内販売3,400台というのは売れている車の1ヶ月分にも届きません。
最終的にメイン市場にしていた海外でも売れず、国内でも売れなかった車の代表の一つとなってしまったキザシを今日は見ていきたいと思います。

しくじり理由

大人の事情の塊

キザシは生い立ちからして”大人の事情の塊”で、大人の事情に振り回されしくじり商品になってしまいました。
スズキは兼ねてから単価の高い乗用車市場への参入を進めてきました。世界戦略車のコンパクトカー「スイフト」で参入に成功し、次に目指したのは上級セダンでした。そこで開発されたのがキザシです。

世界戦略車として成功した「スイフト」
(引用元:https://www.suzuki.co.jp/suzuki_digital_library/1_auto/swift.html#p1)

当時スズキはアメリカの自動車メーカーGMと資本関係にあったため、GMの力を活用しながら、キザシをアメリカで販売しようとします。
しかし、GMとの資本提携解消、リーマンショックをきっかけにアメリカ市場を撤退、当初もくろんでいたアメリカでの販売が消えました。
単価の高い乗用車に参入したいという、大人の事情から生まれ、GMとの資本提携という大人の事情頼みで商品を開発、その資本提携が経済状況でご破算になる・・・大人の事情に振り回され、窮地に立たされました。

しかし、商品が魅力的であれば、アメリカ以外の欧州や日本でも売れたはず。ところが、大人の事情の塊で、世界戦略車という割には、アメリカを強く意識したものになっています。
例えば、背の高いデザインです。下記の記事を見ると、キザシはスポーティを目指していたようです。(https://response.jp/article/2009/11/01/131829.html#:~:text=10%E6%9C%8821%E6%97%A5%E3%82%88%E3%82%8A,40%E6%AD%B3%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%80%82
しかし、実際にキザシを見てみると、背が高い印象を与えるデザインです。これは大柄なアメリカ人を想定した物と思われます。

キザシのサイドビュー。前後が短く見え、のびやかでスポーティとは言いにくい。
(引用元:https://carview.yahoo.co.jp/article/detail/85bcadc48efe860fead7626795b6a21c673be267/photo/?page=13)


キザシの参入した市場はセダン市場はライバルが多々存在する市場です。ライバルが多いのであれば、その分特徴をしっかり出していく必要があるでしょう。しかし、キザシは、BMWやアウディ、日産スカイラインといったスポーティなセダンでもなく、ベンツやレクサスといったラグジュアリーなわけでもなく、マツダ・アテンザのクリーンディーゼルといった技術的な特徴があるわけでもない、中途半端な車となっています。

やはりユーザー不在の商品開発

GMの力を借りてセダンを売ろう、というその想いだけで形になった車がキザシです。当時の情報をいろいろ調べていると、セダン市場に入りたいという企業側の想いが多く、他車と比べたときのユーザーメリットがあまり表現されていません。セブンカフェドーナツと同じ香りがします。
https://note.com/hitlabo/n/nef1d87eff54b

企業が商品を開発する際、何らかのビジネス上の目的から入るのは一般的ですが、ユーザーへのメリットが必ず必要です。売上を上げるといった”本音”と合わせて、ユーザーにベネフィットを用意する、言い方は悪いですが、”建て前”をセットで考える必要があります。


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