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しくじり商品研究室:バルミューダ The Gohan

今日もご覧いただきありがとうございます。

商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.biccamera.com/bc/item/3593186/

バルミューダ The Gohanの例

バルミューダ The Gohanについて

バルミューダ The Gohanは、家電メーカーであるバルミューダが2017年に発売した炊飯器です。
特徴としては、二重の釜で、蒸気の力だけでお米を炊き上げます。その際、100度を超えない加熱で、米の表面を傷つけず、香りとうまみを米粒の中に閉じ込めるそうです。また、おいしさを損ねてしまう保温機能はあえて搭載していません。
”踊り炊き”やIHによる強力な火力を訴求する主流の炊飯器とは大きく考え方が違うのがわかります。なお、昨年秋にモデルチェンジしていますが、商品として基本的な性格は変わっていません。

バルミューダ The Gohanの新モデル
(引用元:https://www.balmuda.com/jp/gohan/)

そんなバルミューダ The Gohanですが、数年前、知り合いの業界関係者から聞いたところによると、炊飯器はそれほど売れていないとのことでした。大ヒットしたトースターの裏でひっそりと売られている炊飯器を今日は見ていきます。

しくじり要因

バルミューダ The Gohanが失敗した要因として大きいものとして、訴求が直感的に理解できない点が挙げられます。前述の通り、バルミューダ The Gohanは蒸気でお米を炊き上げる点が大きな特徴であり、これが美味さの理由だとしています。

バルミューダ The Gohanの構造。二重の釜で蒸気を使ってお米を炊き上げる。
(引用元:https://www.balmuda.com/jp/gohan/story)

ところが、日本人にとって、お米を蒸して炊き上げる、しかもそれがおいしいというイメージはあまりないのではないかと思います。
例えば、旅館や飲食店で釜飯を見ることがあります。炊き立てのご飯は、やはり美味しいですが、釜飯の釜は直火のイメージです。また、小中学校で飯ごうを使ってお米を炊いたことがある方も多いのではないでしょうか。こちらもやはり直火の加熱です。

釜で炊いたご飯は直火で炊き上げている

炊飯の工程として”蒸らし”は知っていても、蒸して炊いたご飯、というのはあまり接点がなく直感的に理解が出来ません。
一方で大ヒットしたトースターは、パサパサしたパンよりしっとりしたパンは美味しいと経験から理解している人が多く、さらに加熱で失われる水分を補う為に蒸気を吹きかけるという工夫も理解しやすく、直感的に美味しいトーストが出来そうというイメージに繋がります。
訴求の内容が、直感で美味しさという価値に変換されず、結果、商品の価値も伝わらないのがバルミューダ The Gohanだと思います。

ユーザーの経験値が直感に繋がる

バルミューダ The Gohanは訴求における直感的な理解の重要性がよくわかる例だったと思います。
直感的な理解に大きな影響を与えるのが、ユーザーの経験値です。どんなにニーズが大きくても、訴求につながる経験をあまりしていないユーザーが多い商品では、購買に繋がらないでしょう。
商品が溢れている現代においては、差別化を狙うあまり、説明的な訴求になってしまうシーンが多々あります。売上を考えた時に、ニーズや市場規模に目がいきがちですが、それだけでなく、経験値を持つユーザーの規模をいかに大きく出来るか、説明的な訴求になる場合もいかに直感的な理解に近づけられるか、が売上を左右することになるでしょう。


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