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人の話が聞こえない。 Vol.3/大場遼平(ビジュアルアーティスト)

こんにちは、新橋のOLラッパー・ノセレーナです。先日、RAGFAIRのおっくんのボイパにのせてラップさせて頂いたんです。人生、色んな事が起きます。

この連載「人の話が聞こえない。」は、自分の世界を持ち過ぎているせいで人の話があまり頭に入ってこない。そんなメンバーが集まり、ユニークな生き方をしている人の話を聞きに行こうというインタビュー企画です。

第3回目のゲストは、私の出身校である多摩美術大学の友人で、ビジュアルアーティストの大場遼平くんです。大場くんがたまに行くという渋谷のカフェにてお話を聞いて参りました。


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大場 遼平(おおば りょうへい)
http://ryoheioba.com/
東京を拠点に活動するビジュアルアーティスト、セットデザイナー。2016 年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2018 年イギリス、ロンドンのチェルシーカレッジオブアート、ファインアート学士課程を取得。留学後はアメリカ、韓国の展覧会などで作品を発表。日本では2018 年に創立されたエシカルファッションブランドTSUNAGUを母体としたウェブ情報サイト「FLAT. 」のメインビジュアルを製作。


現役で多摩美を受けたら、デッサンも平面構成も最低点(笑)

― この間のイベント※ ではありがとね! 今日は色々聞いちゃいたいと思います。よろしくね。

うん、よろしくね。

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※この間のイベント:2018年11月3日、大場くん主催の音楽×アートイベント「PLUTO」。ビジュアルは大場くんのデザイン。私はここで初めてオリジナルのラップを披露した。


― 大場くんはビジュアルをつくったりDJやったり、色々やってるよね。そもそもなんで多摩美に入ったの?

小さい頃から漫画が好きだったんだよね。「シャーマンキング」と「ワンピース」が絵を描くきっかけ。

― え、意外!

そうかな(笑)。

― 大場くんて尖ってるイメージだったから。

そう(笑)? でも、高校生になって漫画が好きなことが恥ずかしくなって、絵を描かなくなった時期があったな。

― 分かる! 私も萌え系の漫画とかすごい読んでたのに、高校から読まなくなった…。

あるよね(笑)。それで大学の進路を考えたとき、したい勉強が特になくて、絵を描くのが好きなことを思い出したんだよね。

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筆者


― へー、それでデザインやろうってなったの?

えっとね、ちょうどNHKのプロフェッショナルで佐藤可士和さんが特集されていて。それでグラフィックデザインの存在を知って、かっこいいなあと思った。

― 私たちの世代のスターだよね! 私は箭内道彦さんみたいになりたくて美大目指したなー。受験、どうだった?

それが、現役で多摩美を受けたら、デッサンも平面構成も最低点(笑)。新宿美術予備校で浪人することになって、学科も実技も誰よりも頑張ったつもりだよ。

― そうなんだ。入学してみてどうだった?

燃え尽きた(笑)。自分が広告をやらないといけないのは何故だろう? ってなって、やりたいことが分からなくなった。

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大場くんの作品。シュールかつユーモラスな作り込んだセットが特徴


― かっこいい作品つくる同級生がいっぱいるから、よく分からなくなるよね。今の作風はどうやって確立したの?

写真を始めたことがきっかけだね。美大に入ると、皆とりあえず一眼(レフカメラ)を買うじゃない?

― 買うよねー(笑)!

自分も1年生の夏休みに買って、最初は渋いモノクローム写真を撮ってたんだけど、合ってなくて。それで秋冬ごろ、Tim Walkerの写真集「Story Teller」を見た瞬間に「やば!」って、モヤモヤしてた部分が晴れたんだよね。

― ああ、Tim Walker、素晴らしいよね。でも、大場くんがああいう幻想的な世界観に惹かれたのって何でなの?

元々ファンタジー映画が好きで、写真でもその密度が出せるんだ! っていうのがしっくり来たんだよね。一枚の写真から物語を想像できる面白さ、みたいな…。

― なるほどー。

それで、大学1年生が終わった19歳の春休みにグループ展をやることになって、作ってみたら意外と上手くいって。見に来てくれた友人たちからの評価も上々だったから、向いてるのかもと自信になった。

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― そうなんだ! あと、大場くんの作品に面白いヘッドドレスがよく登場するのは何で?

洋服を作るには専門的な知識が必要だし、かぶり物ならなんとか作れる上に、頭回りが非現実的なだけでビジュアルとして面白くなるから(笑)。

― そんな理由だったんだ(笑)。

うん(笑)。


つくることが救いだった

― 多摩美卒業後はロンドンに留学したんだよね。どうだった?

ロンドンの大学院「チェルシーカレッジオブアート」へ1年留学したよ。最初はヘアメイクのコースがいいかと思ってたんだけど、「この作風を続けたいなら現代アートだね」とアドバイスを受けて、現代アートのコースを専攻した。アートの文脈にある、ポートレート写真の領域を研究してたよ。

― そうなんだ。ロンドンの生活はどうだった?

貧乏過ぎたし、卒業制作の時期は本当にしんどかった。同居人がドラッグ中毒で、こわくなってアトリエに逃げたんだけど、翌日帰ったらチェンソーで部屋のドアが破られていて。

どうやら、その同居人が爆音で音楽をかけていたのを、他の住人が通報して警察が強引にこじあけたらしい。そういうこともあって、鬱で自律神経をやられちゃったんだよね。

― うわあ、それはきつい。どうやってストレス発散してたの?

ちょうど日本でラップブームになって、暴力的な歌詞を聴いたり、ラップバトルをYouTube で見るのがストレス発散になったかな。

― そんな精神状態のなか、よく卒業できたねえ。

つくることが救いだった。卒業制作は部屋まで作り込んだよ。特にコーナー(部屋の角)を作り込んでいくと、写ってない部分まで世界が続いているように空間が立ち上がってくる感じがして好きなんだ。良い評価で卒業できてよかったよ。

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― 留学してみて、どんなことを学べた?

「アーティストとして食べていけない時間を、いかに精神的な面で健康に過ごすか。後はお金を生みだすシステムを確保することの大切さ」を痛感したよ。経済的な感覚を持ってデザイナー的にアートを作っていくという方法が自分には向いていると思った。自分の根底は、デザイナー気質なんだなと気付けたよ。

― 現実だね。

ロンドンの留学を通して、アートの裏側を少し見ることが出来たかなと思う。情熱や感性のままに制作して、作品をお金に変えることが出来ているアーティストは本当に少ないんだなと思ったよ。

― 美大で技術だけ学んでも、社会に出たときに食べていけないもんね。

そうなんだよね。日本の大学でも、そういうアートマネジメントとか、確定申告のやり方とか教えて欲しいよね(笑)。

― (ひときこディレクター・オダ)大場くん、自分の会社つくっちゃいなよー。会社化すると、「看板を持っている」という社会的信頼を得られるのは大きいよ。ちなみに仕事を得るポイントは、自分の欲望をあきらめないこと、エゴをつらぬくこと。

参考にさせていただきます!

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まずは誘われたイベントに行ってみるとか、一歩を踏み出してみよう

― ところで、DJはいつからやってたの?

DJ は帰国してから。最初は電子音楽のトラックを作って、大学1年生の頃からライブをしてたよ。入学したての時は「踊ってばかりの国」みたいなことがしたくてジャズ研究会でギターをやろうとするもできず、輪に入れなかった(笑)。

― そうなんだ(笑)。それじゃ、サークルは入らなかったの?

テクノ研究会に入ってたよ。廃部寸前で、盛り上げよう! という空気があって。楽器を弾けないからこそ作れる音楽みたいなものに、面白さを感じたんだよね。

― 美大って、音楽やってる人も結構いるよね。

うん。大学2年生のときにイベント「実験音楽祭」を主宰して。タカラマハヤくん、片岡フグリさんとかに出演してもらったよ。

― 大場くんはイベント主催しちゃうのもすごいよね。

人が集まる仕組みに興味があって。音楽を通して、色んなテイストの企画を試してみたいと思ってるよ。ゆるいのも、尖ってるのも。

― 今度のゆるい企画もどうなるか楽しみだね! (※2019年3月に大場くん×筆者でイベントを企画中)これから作ってみたいものってある?

映画の美術にどんなかたちでもいいから関わってみたいな。演劇、物語、ファッション、音楽がつまった総合芸術として、映画への憧れがいちばん強いなあ。

― そうなんだ! 絶対できるよ。ちなみに、好きな映画って何?

一番観た邦画は「ピンポン」だね。窪塚洋介さんみたいになりたいと小さい頃思ってた(笑)。

― あ~、圧倒的だよね。最後に、この「人の話が聞こえない。」は生きるのがあまり上手くない人に勇気を届けたいという想いで始まった企画なんだけど、そんな読者の皆さんにメッセージを下さい!

まずは誘われたイベントに行ってみるとか、そういう一歩を踏み出してみるといいんじゃないでしょうか。少しだけでも聞き上手になれると、案外いいことがあったりするよね。

― この連載にピッタリのコメントありがとう(笑)。今度のイベントもよろしくねー!

こちらこそありがとう。うん、かましましょう!

■大場遼平×ノセレーナ企画イベント
ノセナイト~昼の部~ 「顔で聴く音楽会」

日程:2019年3月9日(土)14:00~18:00
場所:焙煎DISCO 茶蔵(高円寺)
出演:鋭意、調整中。大場くんはDJ、私もラップやります。是非!

***人の話が聞こえた。編集後記***

大場くんは映画のようにストーリーを感じられるビジュアルをつくるのが上手なので、日用品や家具のような、人の生活に寄りそうプロダクトのアートディレクションに向いてそうだなあと勝手に思っています。何かお仕事のご相談あれば、ぜひ大場くんにご連絡を!
obaobaryohei@gmail.com

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Editor in Chief:シノキユウコ(スーパー主婦)
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Editor:ノセレーナ(OLラッパー) 
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Director:オダヨウスケ(馬喰町バンド・Bass)
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