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人の話が聞こえない。 Vol.1/ゴトウユキコ(漫画家)

こんにちは、新橋のOLラッパー・ノセレーナです。毎晩、苦情に気を付けながら部屋でラップを練習しています。

この連載「人の話が聞こえない。」は、自分の世界を持ち過ぎているせいで人の話があまり頭に入ってこない。そんなメンバーが集まり、ユニークな生き方をしている人の話を聞きに行こうというインタビュー企画です。

記念すべき第1回目のゲストは、話題の原作『夫のちんぽが入らない』(以下、『おとちん』)をコミカライズされた漫画家・ゴトウユキコさんです。とってもシャイな方のようで、「飲みながらなら、話せます」というご連絡をいただきました。吉祥寺の居酒屋にてお話を聞いて参ります。


私も誰かの味方になりたくて、漫画を描いています

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ゴトウユキコさん(左)、筆者(右)


~2018年10月某日、吉祥寺の居酒屋~

― ゴトウさん、はじめまして、ノセです。本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

― あ。その腕時計、データバンクですか?私もゴールドのやつ持ってます!

あ、これ。人と交換したんです。

― え?

(ゴトウさんと仲が良い編集長シノキ)
ユキコちゃん、この間「時計かわいいね!」って言われた人に、自分の時計あげてたよね(笑)。

― 時計、あげちゃったんですか!

ふふ(笑)。

― それでは、ざっくばらんに取材を始めさせて頂きますね。ゴトウさん、小さい頃はどんな子どもだったんですか?

外を走り回る子どもでしたね。

― ええっ!それは意外です。漫画はいつ頃から描かれていたんですか?

保育園のときから漠然と漫画家になりたいと思っていて、小学生の頃には描いていました。クラスメイトが登場人物の漫画をノートに描いて、回し読みしてたり。

― わあ、ゴトウさんに描いてもらえたらめっちゃ嬉しいですねぇ。

でも中学生になってから恥ずかしくなって。漫画が好きなのを隠して弓道部に入りました。

― お気持ち分かります。私も中学時代、漫画オタクだったんですけど吹奏楽部に入りました(笑)。漫画家として食べて行こうと思ったのはいつからなんでしょうか。

高校を卒業してエクレア工場に就職したのですが、そのタイミングで新人コミック大賞に入選して。「漫画だけで食べていきたい」と思い、それからですね。

― すごい。エクレア工場!?気になります。実際に漫画家になってみてギャップはありましたか?

人としゃべらないといけない場面が多かったのが意外でした。月1で編集さんと打合せしたり。

― 漫画家さんって一週間の働き方、どんな感じか気になります。

とくに決まってないですよ。描くときは描くし、休むときは休みます。

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筆者


― 「ゴトウユキコ」さんって、ペンネームですよね?由来はあるんですか?

“ゴトウ”はアジカンの「後藤」正文さんから、“ユキコ”は山本直樹さんの漫画『フラグメンツ』の登場人物「雪子」さんからです。

― アジカンゴッチのゴトウさんだったんですね!音楽、よく聴かれるんですか?

はい。最近はあんまりですけど、前はラジオをよく聴いたりライブにも行ったりしてました。

― すてき。私、一応ラッパーなのでいつか観にいらしてください!!!

はい(笑)。

― 普段はどういうものからインスピレーションを受けているんですか?

ゴールデン街へよく行きます。そこで出会った人とか。

― へぇー、身近な出会いが漫画の一部になっていくんですね。

はい。あと、映画を観ていて「これをやってみたい」とモチーフにすることもあります。最近観てよかったのは『うる星やつら beautiful dreamer』です。

― チェックしてみます。漫画家さんでいうと、どんな方から影響を受けているんですか?

えっと…花沢健吾さん、安達哲さん、松本剛さん、山本直樹さん。あと…浅野いにおさん、とかですね。

― 漫画家さん同士で付き合いはあったりするんですか?

特にないです。売れている人を見ると嫉妬してしまって、相手がどんなに良い人でも余計な感情を持ってしまうから自分がいやになりますし…。

― (なんて素直で可愛らしい方なんだろう。)なるほどなあ。あと今日ぜったい伺いたいと思っていたのですが、ゴトウ先生はなぜ「エロ」をモチーフにされるんですか?

描きたいから描いているだけです。

― (なんて素直な方なんだろう!)

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ゴトウさんの手


― ちなみに、ご自身の性癖…とか、フェチとか、もしあれば伺いたいです。

メガネフェチです。メガネをかけてる人は、200%増しでかっこよく見えますね。

― メガネですかー!(だからゴッチ好きなんだなあ。)ちなみに、好きな男性のタイプは?

柄本明です。

― シブいところ来ますね…!

そうですか?

― そうだと思います(笑)。漫画の話に戻りますね。今までスランプになったことってあるのでしょうか?

あります。デビューしたときは「新しいことをやってる!」って注目されましたが、そういうのってずっとは続きませんから。最近、スランプ気味になっていたところに、ちょうど『おとちん』の話が来たんです。はじめて原作がある漫画を描いて、ゼロから勉強させてもらっています。もっと売れて欲しい。

― 『おとちん』の反響、どう感じていらっしゃいますか。

『おとちん』を出してからよく褒められるようになりました。でも、こだまさんの原作があってのことだし、自分の力ではないから短編集(『36度』)を褒められる方が嬉しいです。

― 『36度』拝読しました!すごく面白かったです。知られたくない自分の内側を暴かれてしまう感じがして、ひーってなりました(笑)。

ありがとうございます(笑)。『36度』を描いてから、女性からファンレターがたくさん来るようになりました。嬉しいです。

― あの漫画を描いているゴトウさんなら包んで貰えそうって思っちゃう気持ち、分かります。

皆、色んな秘密を持ってるんですね(笑)。

― あの、プロの漫画家さんにめちゃくちゃ失礼なことを申し上げますが、初期作品『R中学生』と最新作『おとちん』を比べると、絵が段違いに上手くなっていますよね。描き方を変えたり特訓されたんですか?

『R中学生』は、よくあれを掲載してくれていたなと思います(笑)。なにか特別なことをしたわけではなく、ずっと描いていたら今のかたちになっていました。

― そうなんですね。プロはすごいです。漫画を描いていて、楽しいですか?

ラクガキは楽しいけど、お金が発生すると締切りがあるからあまり楽しくないですね。

― あはは(笑)。お仕事ですもんね。描きやすいキャラクターってありますか?

うーん…、男性は描くのニガテです。

― えーーーっ、ゴトウさんが描く男の子大好きです。すごくかっこいいです。

ありがとうございます(笑)。『おとちん』の「さち子」は描きやすいです。あと黒髪ボブの子は描きやすいですね。

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― そうなんですね。ストーリーを考えるためのネタ帳とかってあるんですか?

ネタ帳はないですが、最近日記をつけています。楽しかったことを書いたりしています。

― 次に描いてみたい物語の構想は、色々あるんでしょうか。

あります。

― わ、それは楽しみです。ファンタジーとか、違うジャンルはやらないんですか?

ファンタジーもやってみたいですね。元々好きなんです。

― ゴトウさんのファンタジー、すっごく読みたいです!

ありがとうございます(笑)。

― 楽しみにしています。この先について、不安はありますか?

これからも描き続けるのは不安だけど、不安がなくなることの方がよくないと思っています。

― かっこいい。確かにそうですね。最後に、この「人の話が聞こえない。」は生きるのがあまり上手くない人に勇気を届けたいという想いで始まった企画なのですが、そんな読者の皆さんにメッセージを頂けますでしょうか。

私も誰かの味方になりたくて、漫画を描いています。

― かっこいい…。ありがとうございます。これからも応援しています。

ありがとうございました。ラップ、頑張ってくださいね。

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2018年11月19日のゴトウさんのTweetより


***人の話が聞こえた。編集後記***

手が白くてきれいで、やわらかい佇まいのゴトウさん。静かに「淫乱なんですか?」と豪速球の質問を投げかけてくださったり、ここに書ききれなかったお話が沢山あるのですが、ゴトウさんの担当編集者・小島典之(おじまのりゆき)さんにもお話を伺っていたので、以下よりお楽しみください。

~ゴトウさんの担当編集者・小島さんより~

ゴトウさんの漫画は、ヤンマガ「ちばてつや賞」で『R-中学生』の第一話が掲載された時からすごい才能だなと感じていました。その時にも担当に名乗りをあげたんですが、希望者が多すぎてじゃんけんで決めることになって負けたんです(笑)。他の担当がついてもずっとゴトウさんの作品を追っていて、事あるごとに編集部内でゴトウさん好きだとずっと公言していたら、前任者が異動する時に指名してもらえました。

自分の欲望とか悩みとかを漫画や物語にする意味って、普段は離れた場所で「自分しかこんな悩み抱えていない」とか「自分はもしかしたら変態かもしれない」って思っている人たちに、「自分だけじゃないんだ」と救いを与えられるってことだ思います。今回の『夫のちんぽが入らない』は、原作を通して彼女が描きたいことを読み手にそのまま届けられていると感じています。


■本記事で紹介した漫画


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