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【突撃!ナレトーーク】第12回 片岡あきらさん

ナレーター界を盛り上げるべく始動したメディアプロジェクト『HITOCOE』。

ナレーターのさかし(坂下純美)とあこ(甘利亜矢子)、そしてHITOCOE編集長のあきら(片岡あきら)が、ナレーターの皆さんのライフスタイルや人生観、それぞれの働き方を紹介していきたいと思います!

今回は、世界を照らす太陽系ナレーター・片岡あきらさんです!

片岡あきらさん
東京都蒲田出身。「お日さまに成る」と書いて「晟」と読む、太陽系ナレーター。明るくぽかぽか寄り添う声で世界中のメディアを照らす。
国内海外の世界的企業へ、世界トップレベルのナレーションを提供し、Google、Amazon、Apple、Microsoftなど…各業界、各国の世界最大手との取引実績を持つ。ヴェルサイユ宮殿内でも片岡氏のナレーションが流れている。
近年では、スクールや大学で講師を務めると共に、ナレーターメディア『HITOCOE』を立ち上げ新しいナレーター文化の創造を追求している。
〇Twitter…@akiranarrator
〇HP…https://kataokaakira.com/

得意なことを仕事に!声の仕事を志すように

さかし:さっそくですが、ナレーターになるまでの経緯をお聞きしたいです。あまりこういう機会なかったですよね?
 
あきら:なかったです。以前、西山はるかくんにインタビューを受けたことがありますが…。

あきら:自分のことを話す機会ってあまりなくて、どちらかというと人の話を聞くのが好きで聞く側に回っちゃうんですよね。

僕は、声優になりたくて養成所に入るところから始まって…
 
さかし:声優になりたいと思ったきっかけは?
 
あきら:高校生、大学生のころ、「自分はこれで生きていきたいな」というような将来の自分像、職業像のようなものが全然なかったんです。それで「自分は何して生きていけばいいんだろうな、どういう仕事をしていけばいいんだろうな」というのが結構曖昧でした。
周りは意識が高い友達が多かったから、それにも影響を受けていて身の丈以上の夢を描いていたのもあるかもしれません。例えば友達の中には「国連の職員になりたい」とか「アフリカに行って学校を建てたい」という人もいました。
「僕もそういうのに携わってみたいな~」と漠然と思ってはいたんですけど、でもなんだか自分の芯から湧き上がるような願望ではなかったんですよね。

でも同じころに「片岡くんの声っていい声だよね」と友達から言われることが増えて、そこから「自分の長所は声なのかな?」と感じるようになって。そこから自分の好きなことや得意なことを仕事にしていきたい、声の仕事を目指してみたいと思い始めました。
20歳ぐらいのとき、11年前かな?
 
さかし:そのころだと、声の仕事=ナレーションとはならないですもんね。
 
あきら:そうなんです。「声優」が最初に浮かびました。声優志望の方は「このアニメの声優さんに憧れて」とか「この声優〇〇さんの演技にすごく影響を受けた、私もこうなりたい」という感じで目指し始めることが多いという印象ですが、僕はそれまでにたくさんアニメを見ていたというわけでもなく、「自分の声を活かした仕事がしたい」という起点だったから、養成所に入ったときにみんなの知識がすごくて、僕は追いついていくのに結構大変でした。
そのときは結構アニメも面白いなって思って見てたんですけど、だいたい女の子が出てくるアニメだったんですよね。深夜アニメをよく見ていて、男性よりも女性のほうが割合が多かった。今でこそ男性アイドルみたいなアニメも結構出てますけど、そのときって全主演キャスト男性みたいなアニメってそこまで多くなかった気がします。かわいい女の子が前面に出てくるような感じだったから、僕が知ってる声優も女性の声優のほうが多くて。

あきら:そこからアニメを見始めたんですけど、男性の声優さんを参考にしたいのに、女の子が出てくる作品が多かったこともあって女性の声優さんばかり目に入って。男性のクラスメイトが「この人めちゃくちゃかっこいい声だよね」って男性声優の話題を振ってくれても、始めのころは「え、あ、そうだよね~(笑)」って雰囲気をあわせるぐらいのことしかできなかったですね。話についていくのがちょっと大変だったかもしれない(笑)
 
さかし:確かにそれだと大変ですね。
 
あきら:今考えると、当時はそこまで他の人に興味がなかったのかもしれない。でもこれから自分が入ろうとしている業界の先輩だし、もしかしたら自分が事務所に入ってご一緒するかもしれない人だし、学ばなきゃいけないと思いました。
今でこそ僕も声優養成所の講師をやってるので、「今トレンドの声優さんがどういう喋りか知っておいたほうがいいよ」って言うんですけど、同時に「お前が言うなよ!お前も全然興味なかっただろ!」ってセルフツッコミ入れてます(笑)

現在は専修大学にて国内海外のナレーション事情についての講義もしている

声優養成所卒業、自立したナレーターを目指す

さかし:養成所の期間どうでしたか?
 
あきら:クラスの課題とかやるのは楽しかったです。クラスメイトにも講師の方にも恵まれていたので、順調に進級もしていったし、素直に学んでいきましたね。
 
さかし:卒業時は事務所のオーディションを受けるんですか?
 
あきら:通っていた養成所では、基礎科と本科を1年ずつ、研修科に3年通い、計5年通いました。進級のたびに事務所所属オーディションがあるんですけど、これが3次審査まであって
2次審査はボイスサンプルオーディションみたいな感じなんですけど、僕はいつもそこまででした。
 
さかし:卒業後フリーになって、その後は?
 
あきら:養成所で所属オーディションを受けましたが、同時に一緒に受けて、そして諦めていった人たちとかも見てきたんです。すごく上手な人たちも落ちるんですよね。僕が通っていた養成所は生徒が多かったので、本当にトップ1%未満ぐらいの人しか受からない。箸にも棒にも引っかからない。
僕が最後にいたのは5、6人所属者がいるようなクラスで、生徒のレベルも高かったんですけど、そんなクラスにいる人たちもオーディションを受けると落とされるんです。そしてそこの事務所オーディションに落ちたからといって、声優を目指すこと自体を諦めて実家に帰っちゃったりする人もいる
それがとてももったいないな、と感じて。
他にも事務所はいっぱいあるのに。講師も「うちの系列の事務所じゃなければ仕事できる実力を持ってる人、このクラスにいっぱいいるよ」って言ってるのに。
今目指している事務所が声優業界の全てだと思ってしまっている。それを見てすごく不条理だな、もったいないなって。
それでこの仕組みどうにかならないのかなと思ったし、辞めていった人たちに対して「声優業界ってここが全てじゃないのに。もうちょっと視点広げてみればいいのに」と思って。そこから「事務所に自分の人生を左右されないような、自立したプレーヤーになっていきたい」という想いが湧いてきました。
それから次に学ぶ場を探しているときに、「自立したプレイヤーを育成する」「自立したナレーターを目指す」というキャッチコピーを掲げたスクールバーズを見つけました。
自立したナレーターを目指そうと、卒業から半年あけてスクールバーズに入りました。

さかし:そこでナレーションを学ぶことになるんですね。
 
あきら:養成所の最後のクラスで、僕が尊敬していた講師の方に「君はナレーションがいいね」って言われたんです。ナレーションもすごく味がある方で、この人みたいになりたいと思っていたんです。だから真似とかしながらボイスサンプルを作ったりしていたので、その方が言ってくださるならと。
あと、風の噂で「ナレーションは声優よりもギャラがいい」と聞いていたので(笑)
僕は養成所に入るときに、「声の仕事で一生食っていきたい」と思っていたので、現実を考えたらナレーションに一本化していくほうがいいんじゃないかと思って、ナレーションに振り切ることを決めましたね。
 
さかし:バーズは何年通いましたか?
 
あきら:バーズは半年で1期と数えるんですが、3コースをそれぞれ1期ずつ通って、1年半通いました。
 
さかし:下から入って全部のクラスを順番に半年ずつ受けていったんですね。ここで片岡さんがフリーのナレーターとしてやっていく土台ができあがったんですね。

スクールバーズで同期の鈴木健太さんと

初めてのお仕事は500円

あきら:養成所を卒業してスクールバーズに入るまでの半年間も、「事務所に左右されない自立したプレーヤーとして生きていこう」という決意をしていたから、オンラインで自分の声の販売場所を構築したりなどしていたんです。名義は変えてたんですけどココナラも使っていたし。バーズに入るまでの期間も、入った後も、小さい仕事を結構してたんです。そこで初めて「声の仕事でお金を得る」という経験をしたんです。すごく感動しました。一番最初の仕事は500円とかだったと思うんですけど。
 
さかし:どんな仕事内容で500円?
 
あきら:ピアノ教室のイベントで生徒さんのお名前の読み上げとかだったのかな。
建築系の企業から「うちはCADを使った設計が得意ですよ!」みたいな、企業VPの仕事もやりました。ドラマで使われる、チンピラとか極道モノとか結構ヤンチャな方々が着るファッションを美術協力してる会社から声をかけていただいて、結構ドスの効いた声で「おめぇら!今はこれが安いぞ!」ってキャンペーンのナレーションに起用していただいたり。
ちょこちょこそういう仕事をしていました。でも声で生計を立てていく金額感には届かなかったですね。
 
さかし:小遣い稼ぎみたいな感じですよね。
 
あきら:そうなんです。だからどこかで転換しないと駄目だなって思って。その覚悟を決めるために、僕も自分の本名である片岡晟をナレーターの名前としてブランディングをはかることにしました。黄色い宣材写真も撮って、ナレーターとしてオンラインでの営業を始めたっていうのがターニングポイントでしたね。
営業としてまずInstagramを使い始めるんですけど、僕の本名で開設したのが2017年7月だったので、バーズに入って1年経とうとしてるぐらい。
 
さかし:バーズで勉強しながらも、やってみようと思ったことはどんどん試していった感じですね。

Instagramで開拓した、SNS営業の道

あきら:そのときバーズは割とテレビに振り切ってる教育で、しかも僕よりうまい人が無数にいるわけですよ。猪鹿蝶のプレイヤー陣しかり、クラスメイトしかり。そこで僕がどうやってナレーターとして売れていけばいいのかということを考えました。僕なりの戦略を立てないとと。
スクールバーズって、クラスのこととかスクールのこととかをFacebook上でやり取りしたりするんですよね。みんなFacebookで繋がっている。僕が勝てる土俵を、バーズのコミュニティ以外のところで作りたいと思って、それでInstagramを選んだんですよね。
元々写真を撮るのが好きでずっと使っていたので、Instagramに土地勘があったんです。
それで改めて「片岡晟」のアカウントを作ってナレーターとしていろいろと活動できないかなと、いろんな制作会社の人をフォローしたり、コメントしたりいいねしたりとかして、ちょっとずつ僕の存在を知ってもらうようにしていきました

Instagramで知り合った制作会社様と赤坂のスタジオにてナレーション収録(2018年)

さかし:そのころはまだインスタで仕事を獲得していくナレーターってあまりいなかったですよね。
 
あきら:僕はそのとき他の人は全然知らなかったですね。
 
さかし:モデルケースがあったわけじゃなくて、片岡さん自身がインスタを使ってみるともしかするといけるんじゃないか?と思ってやってみたって感じなんですね。
 
あきら:そうです。やっていく途中で、おかけんさんMC MASA!さんと知り合ったりとか。
 
さかし:インスタ繋がりだったんですね!
 
あきら:最近はインスタあまり触ってなかったんですが、この前Voiceover Japan Awardsでノミネートいただいたので、その報告でめちゃくちゃ久しぶりに投稿したんですよ。
そうしたらインスタで交流のある方達から「おめでとう」と温かい声をもらえて、「やっぱりインスタいいな」ってホーム感を久々に味わったので、またインスタ使ってみようかなってちょっと思ったりしてます。

Voiceover Japan Awards 2022授賞式にて満面の笑み!

さかし: Twitterのほうが営業できる、仕事に繋げられるという人もいるだろうし、自分に合ったプラットフォームを選ぶのは大事ですね。
片岡さんは自分はインスタならいけるかも!と思ったんですね、当時。
 
あきら:僕は視覚優位なところがあるので。しかもInstagramってそういう画像とか動画のSNSなので、映像制作会社の人とかも結構いるだろうし、営業もしやすいかなと思って、インスタに投稿していこうと思いました。
ボイスサンプルをあげたり、「僕はナレーションをこういうふうにやってます」とか。ナレーション以外のことでも僕の人となりを伝えるような、僕の人間性を知ってもらえるような投稿をしていました。そのうち徐々に僕のことをおもしろがってくれる人が増えていって。
その中には制作会社の方、個人クリエイターの方もいました。その割合が少しずつ増えていって、「案件を受けてくださることは可能ですか?」というDMをいただくことが増えていって…という感じです。初期にインスタで声をかけてくれた方々とは今も繋がっていますね。今抱えてる案件の中にもその方々からいただいたものもあります。とてもありがたいですね。
 
さかし:インスタで自分の人間性を赤裸々に発信していったからこそ、制作の人たちが親しみを覚えてアプローチしてくれたんですかね。ここでの繋がりは長く付き合えるのかもしれない。
 
あきら:ココナラのときは僕も自分の素性は一切出さず、隠れながらやってたので(笑)
インスタでは僕自身が覚悟を決めてやっている感じを受け入れてもらえたのかもしれませんね。

2020年にはVoicyスポニチニュースのパーソナリティに

実績を積み、スクールバーズで講師を!

さかし:なぜバーズで講師をすることになったんですか?
 
あきら:僕は2019年1月にVoiceover Japanに入って海外市場でも活動し始めましたが、運良く1期生だったこともありスタートダッシュをかけられたところもあって。ある程度海外で仕事を得ることもできたし、正直言って、ちょっと売れてる感みたいなのも出せたんです(笑)
活動をTwitterで発信などしていたら「片岡が最近、海外市場で頑張っている」とバーズ側に伝わったようです。「バーズでも海外市場がどういうものなのかを紹介する1コマを作ろうと思っている」という相談をされて、講師としてどうかと声をかけていただき、2020年から講師をやり始めました。
 
さかし:バーズはそういったところがすごいと思います。義村さんが常に広くアンテナを張っていて、これは吸収するべきだと思ったものをどんどん取り入れていますよね。常に最先端を行っていると感じます。
 
あきら:時代を捉えようとするスピリットがありますね。それまでずっとバーズではテレビナレーションを軸に据えてやってきていましたけど、そのころからちょうどWebが出てきて、電通の発表でも「インターネット広告費がテレビ広告費を抜いた」と。WebCMの市場も考えないと、とバーズも思い始めて、海外市場・Webというこの2つの割合をカリキュラムの中に増やしていきたいという考えがあって打診されたのが僕という感じだと思います。

さかし:海外市場についてバーズで紹介しているということですね。
 
あきら:そうです。海外市場とWeb、テレビじゃないナレーション案件の現状を紹介するという1コマを。去年ぐらいからテラウチナツキさんも講義をしています。皆さん結構興味があるみたいで、ブランディングクラス(昔のアドバンスクラス)の人も「このレッスンを一番楽しみにしていました!」という人もいるくらいです
 
さかし:だって日本飛び出して、世界ですもんね!
 
あきら:そう!それだけでワクワクするじゃないですか!そういうワクワクに応えられるようなレッスンを作っていこうとがんばっています。

知的好奇心が自分をつくっている

さかし:片岡さんは2019年の頭にVoiceover Japan(以下、VOJ)に入ったんですね。VOJ代表の藤村由紀子さんのインタビューのときに、片岡さんが「元々、海外にも市場があるだろうとなんとなく思っていて、自分でアクセスしてみようと試してみたけど捉えきれなかった。だから、そのときにVOJを知って飛び込んだ」ってお話されてましたよね。

あきら:海外にも日本人が住んでる地域はあるし、それこそiPhoneとかGoogleとか外国のサービスが日本に入ってきていて、その存在感も日本の中で大きくなっているから、そういった海外企業も日本人に対して広告を打ちたいだろうと。
だから、外国における日本語ナレーションの需要は絶対あるだろうなって思っていたので、自分なりのアプローチはやっていたんです。いろんなプラットフォームに登録してみたり。
でもなかなか全体像が見えてこないから、結構細かい動きになっちゃうんですよね。ポツポツとした局地戦みたいなことしかできなかった。
なので、もっと大局観を持ってマクロで捉えた海外市場をちゃんと学びたいとずっと思っていて。
そのときにTwitterで由紀子さんが「海外市場でこういう仕事をやりました」とか「こういう相談が今来てて、こういうことを伝えたりしてます」というツイートを見ていて、もっと情報知りたいと思っていたところに「VOJを開校します」っていう情報が来て。
待ってました!とばかりに、申し込みボタンをポチっと押してました。
 
さかし:先に由紀子さんの活動をチェックしていたんですね。
 
あきら:欲しがってるものをこの方が全て持っているんだろうなと思いました。由紀子さんと野口美穂さんが満を持してVOJを立ち上げて、海外市場を日本人ナレーターに教えるスクールが開校すると知った時は、まさに僕が待っていたものだなと思いました。
 
さかし:海外にも市場があるという視点に至ったのはそもそもなぜでしょう?
 
あきら:僕、高校の時は海外の大学に進学しようと思っていた時期があったので、英語を勉強してたんです。だから海外に対しての目線も少なからずあったのかもしれません。始めは海外でナレーターの仕事をしている人たちってどういう働き方をしてるんだろう?どういうコミュニティなんだろう?日本のナレーターと働き方が違ったりするのかな?とか、そういう興味から始まった気がします。
 
さかし:興味を持って調べているうちに、もしかすると自分も参入できるかな?というほうに繋がっていったということですね。なんか片岡さんらしい。
 
あきら:僕らしさってどこですか?(笑)
 
さかし:好奇心の塊という印象があって。子育てしてて、好奇心に勝るものはないと思ってるんです。好奇心さえあれば何でもできるんじゃないかと。
 
あきら:知的好奇心ですね。ちょっとでも知りたいって思ったらすぐ調べちゃうみたいなところがあります。学校で英語の授業中、わからない英単語があると、電子辞書で調べて単語の説明をノートに書くとか。
電子辞書に入っている百科事典ってWikipediaみたいに説明の文中の単語とかにも飛べたりするので更に気になって調べたり。
国語の授業なのに、国語の文学者の説明を百科事典で見ているときに「数学にも造詣があった」という文章があったら、その数学関連のところに飛んだりとかして。
国語の授業だけど数学の勉強もしてるみたいな。
 
さかし:そういったことが楽しくて仕方なかったんですね。その知的好奇心が今に繋がっているんだなと思います。
そういう面は、子どものころからきっと親御さんが片岡さんを育てるにあたって大事にしてくれたんじゃないでしょうか。

変体仮名に夢中な変態としてテレビに映ったことも(笑)

あきら:母親が本読むのが好きで、その影響があるかもしれないですね。あと歴史も好きでいろんな本を読んでいました。
一番最初に長編を読み始めたのは、ハリーポッターかな。
母親がずっとハリーポッター日本語版を読んでいて、それで僕も1巻から7巻まで全部読んだんですけど、その経験が今の僕の読書好きに繋がっている気がします
小学校のときにハリーポッターを読み始めて、中学校のときには夏目漱石の『吾輩は猫である』を読んでいる。他にも古今東西いろいろ読んでいます。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』とか。
 
さかし:広いですね。

現代短歌を習いに、毎月大阪へ!

あきら:本の紹介をされたりすると、そこでも好奇心が働いて「おもしろそう」ってすぐ飛びつくんですよね。小説も詩も。今は現代短歌とか。
 
さかし:短歌、大阪に習いに行ってるんですよね?
 
あきら:そうです。今、毎月1回大阪へ短歌を習いに行ってます
短歌における凝縮された世界というか。
小さいころから本を読んでいて文章の表現力に触れていたのもあって、自分が思ったことや考えたことをうまく言語化できないということに対して、自分の中ですごく心地が悪いと思っていたんですよね。
まさに「これが言いたかったんだ」という文章を出せるようになっておきたいというのが自分の軸になっていて。
それがめちゃくちゃコンパクトにできるのが短歌だと思っているんです。

最高の歌集と最高のひととき

あきら:現代短歌の歌人たちがいろんな作品を出してるのを見て、なんかもう我が意を得たりっていうような短歌がいっぱいあるわけですよ。
それを見たときにすごく衝撃でした。
以前は短歌といえば百人一首とかの和歌というイメージ。
今でこそ俵万智さんが現代短歌のはしりと言われて。『サラダ記念日』が衝撃を与えたのがみんなの認識にありますけど。
その俵万智さんから1世代2世代後の人たちが今そういう現代短歌を盛り上げようとしているムーブメントがあるっていうのに気づいて、そういった歌人の歌集を手に取ったときに「なんだこれは!」と衝撃を受けました
今までの短歌のイメージを覆すような、僕たちが普段会話をしている口語体の言葉遣いで、それをそのまま31音に落としている。世界が凝縮されているような感覚がすごくおもしろくて

あきら:後付けになりますけど、今Z世代で現代短歌が流行っているようで、意図せず同じような興味に僕も向かっているのかもしれません。
自分が言いたかったこと、考えていることを、そっくりそのまま反映されるように文章に落とし込みたいというか…。
普通に文章、散文なども同じで、表現方法に対しての僕の本能というか…文章に限らず写真もTwitterの短文でもそうかも。
推しの歌人が増えたりするとまた世界も広がったりして、すごく楽しいですね。
 
さかし:短歌もまた表現のひとつなんですね。ナレーションは文章が基本決まっている中で、そこにどう想いを込めるかを仕事にしてるじゃないですか。近いところがあるのかもしれませんね。
その人が興味を持ったもの、経験したものの組み合わせで、表現に差が出てくるんでしょうね、ナレーションも含め。だからなんだかんだでみんな違う読みをするんでしょうね。
 
あきら:本当にそう思います。生き方も全然違うし、触れてきたものも全然違うだろうから、絶対違う音になるんですね。それがおもしろい。

片岡さんは愛犬と一緒に旅行に行くほど愛情深い一面も

一緒に稼げるナレーター仲間を増やしたい

さかし:今プレイヤーとしても頑張ってらっしゃいながら、教えることも結構頑張ってらっしゃいますよね。そもそも最初に教えることになったきっかけってなんですか?
 
あきら:元々ナレーターブランディング会議というFacebookのコミュニティを立ち上げたのは、僕がキャスティングを頼まれたときに質の良いボイスサンプルを集めたいなと思ったのがきっかけだったんです。
そのときにナレーターの皆さんに「質の良いボイスサンプルとはどういうものか」「ナレーターのブランディングとは?」「どうすると一緒に仕事をしたいナレーターだと思ってもらえるか」などを勉強できる場を提供してみたいと思い始めてボイスサンプル研究会みたいなのをやったりしていました。
僕なりに知っている、学んできた知識や情報を共有して、その人たちなりの捉え方をしてもらったらどうなるんだろうな、素敵なナレーターが増えたらいいなという思いがそのときからずっとあって。
それが一番最初ですかね。最初というか根本ですが。
 
あと、僕が寂しがりなんで、いろんなナレーターの友達を作って一緒にご飯食べに行きたい。美味しいご飯をみんなで食べに行くためには、みんなで稼げるようにならなければ。そのためなら、自分が学んできたものを共有したいというのが理由のひとつにもなってます

片岡さんの周りにはいつも明るく楽しいナレーター仲間が集まります

さかし:何回か教える機会があって、そのうちに習いたい人が少しずつ増えていった、みたいな感じですかね。
 
あきら:継続の個人レッスンはHITOCOEメンバーで希望する方に提供し始めて、そこから始まりました。それまで単発ではレッスンしていたんです。ブランディングのコンサルのようなものを頼まれたり。
今受講してくれている、あこさん日良方かなさんたちが僕のレッスンで学んだ内容や感想をツイートしてくれるのを僕もリツイートさせてもらったりとかしていたら、いろんな方がそれを見てくださっていたようで、「片岡さんのレッスンってどんな感じなんですか?」みたいな声をもらうことが増えました。そこからHITOCOEとは関係ないところで「個人レッスン受けたいです」とおっしゃってもらって教え始めたりしています。
最近個人レッスンの方が増えているので、あこさんやかなさん達には本当に感謝です。
 
あこ:いつもありがとうございます!片岡さんのレッスンの効果、本当にあって!
 
あきら:1年間あこさんのレッスンを見ていますが、僕が言ったことを参考に、あこさんが素直に行動に起こしてくださるんです。あこさんはじめ、いろんな方がそのままやってくださって。僕は良かれと思って僕なりの意見を言っているけど、それをその方がやるかどうかはその方の自由だと思うんです。やったところで売れる未来が確実なものでもない。
なのに、素直に行動してくださるありがたさがありますし、それで結果を出してくださるというのは、僕自身も励みになっています。
 
あこ:片岡さんのレッスンで教えていただいたことをひとつひとつ実践して、私は純文学が好きなので純文学ナレーターでブランディングを固めて、ボイスサンプルも文学と絡めたものを作ったり、Instagramでもボイスサンプル専用のアカウントを作ったりして、そうやってSNS戦略…ブランディングを作り固めていきながら、読みのレッスンでもスキルを上達させていきました。
そうしたら最近、有名アーティストのミュージックビデオを作っていらっしゃるテレビ業界の第一線で活躍されている映像ディレクターさんが私をTwitterで見つけてくださってナレーションを依頼してくださったり、文豪ゆかりの地として観光PRをしている行政からナレーションのご依頼がきたり、有名芸能人が出ているCMへのナレーター候補出しのお話を脚本家さんからいただいたり、全国のいろんな映像会社さんから問い合わせもいただくようになったり、オーディションにも受かるようになって…!これは本当に片岡さんのレッスンのおかげだって思っています!
 
あきら:本当に嬉しいです。報告をいただくたびに僕もめちゃくちゃ嬉しいですし、そういう話を聞くとやっててよかったなって思えます。
 
あこ:なんかもう夢のようです~!片岡さんのレッスンのすごさを皆さんに伝えたいです!スキルアップだけじゃなく、その人に合わせたブランディングでの自分の見せ方、営業の仕方など細やかにサポートしてくださって、「仕事が取れるナレーター」にまで成長させてくださるのが本当にすごいです…!!
 
さかし:スキルが上がれば仕事を獲得できるというわけじゃない。でも最低限のスキルは必要で、その上に自分を知ってもらう努力も必要。どっちかは長けているのに、どっちかが足りない人も多いかもしれませんね。
そのバランスを取るのがきっと大事。どっちも満点でなくてもいいから、ある程度を備えれば、それが仕事に繋がっていくんだろうなと思いました。
片岡さんが入ることで、あこさんのバランスを整えるというか、それがあこさんの結果に繋がったんじゃないでしょうか。
あこさんは素直に行動に移せるという良さも持っているから、もちろん本人の努力もあってですが。片岡さんとあこさんの掛け算が今の結果を生んだんでしょうね。

今では「黄色と言えば片岡さん」というイメージに

今後の目標、編集長として、ナレーターとして

あきら:まずはこのHITOCOEというメディアを、ナレーターの方はもちろん、何か声の仕事をしてる人、携わっている人たち全般にもっとたくさん知ってもらいたいです。
企画も充実させていきたいし、HITOCOEをハブにしたコミュニティがもっと増えていくとおもしろいだろうな、楽しいだろうなと思っています。
いつかはHITOCOEをメディアとしてマネタイズするタイミングがあると思うんですけど、「お金を払ってでも読みたいコンテンツ」「参加したいコミュニティ」と思ってもらえるように頑張っていきたいなって思います。
 
さかし:それだけ優良なメディアにしていきたいということですね。
 
あきら:そうですね。あとはコミュニティっていうところで言えば、日本においてのナレーターのひとつの大きなコミュニティとして存在感を出していけたらいいなと思います。
その中に例えば、今もやっていますがワークショップ事業とか、ナレーターのスキルアップに繋がる勉強の場とか、宅録に関するノウハウの共有とか、ブランディングの共有とかっていうような…ナレーター版のUdemy(ユーデミー)みたいな学びのプラットフォームのようにもなっていけたらいいなって思っています。
あと、僕も海外市場で活動していると、ナレーターのエージェントたちと仕事をすることがあるんですけど、事務所に所属していないようなナレーターたちが海外で仕事ができるように、エージェント的な役割とかもHITOCOEが担っていくのかもしれないなと。
ナレーター、ナレーションに関するいろんなことを、HITOCOEというものがハブになってやっていける可能性がちょっとずつ見えてきていて。

あきら:HITOCOEのコミュニティ、記者の皆さんもそうだし、HITOCOEの記事を通してナレーションというものに興味を持ってくださった方、個人レッスンを受けてくださる方がちょっとずつ目に見えてきて。
コミュニティが母体になって、他にもいろんなことができそうな気がしています。
固定観念にとらわれずにいろいろやってみたいです。メディア以外にもいろいろナレーターの為になるような活動ができていくんじゃないかなと今すごくワクワクしてるので、ちょっとずつ具現化していきたいなと思っています。
 
さかし:ひとりのナレーターとしてはこれからどうなっていきたいですか?
 
あきら:もっと海外で存在感を示していきたいです。
今、海外市場でライブセッション、リモート収録とかやっていると、もっと質の良いコミュニケーションを取れるようになりたい、という反省が毎回あるんです。英語のコミュニケーションとも言えるし…だから、ナレーション留学をしてみたいなと思ったりします。
アメリカやイギリスとか…具体的にはロサンゼルスやロンドンとか。
例えばナレーターエージェントに、現地に行ってエージェントの経営の話を聞いたり…でもこれもプレイヤーというよりは、運営の話になっちゃいますね(笑)

朝から3時間アメリカと繋ぎ、英語でディレクションを受けながらリモート収録することも日常の風景に

さかし:片岡さん自身、今興味があるのはそっちなんですね。どういう行動を起こすと、どこがどう繋がって、どう進んでいくのかというテストプレイをいっぱいやってみることがおもしろいのかなと。
 
あきら:それが大きいですね。もちろんやりたい仕事もありますが、そういうのは後からついてくるような気がしています。
具体的にやりたい仕事を挙げると、僕よく「海外市場に出れば、普通の個人のナレーターでもGAFA(アメリカの4大テック企業Google, Amazon, Facebook, Apple)の仕事ができるよ」みたいなことを言ったりしますけど、僕唯一GAFAの中で仕事をしたことないのがFacebookなんですよね。
だからFacebookと仕事をしてGAFAコンプリートしたいなって。
 
さかし:それいいですね(笑)ここまで来たら行きたいですね。
 
あきら:Facebookが、今Meta社ですけど、Meta社傘下の会社が増えている。InstagramもFacebookだし、欧米でよく使われてるWhatsApp(日本で言うLINEのようなもの)もMeta社の傘下だし。Facebook関連の仕事も結構増えてきているようなので、もうちょいな気がしていて。
そこにもっと積極的にアプローチしないと駄目だなとは今思っています。今は来る仕事に対して対応してるだけになってるので、自分から積極的な営業みたいなのをしてない。自分がやりたい仕事があるのなら、しっかりチューニングしてアプローチをしていかないと駄目だなと思ったりしています。
あとはレガシーのメディアにも挑戦したいなと思うときがあって。僕はTokyo FMのジェットストリームという番組が好きなんですけど、そのジェットストリームのナレーションをやりたいなとか思ってます。
 
さかし:そこは営業ですね!
 
あきら:はい、頑張ります。

ある日のスタジオ収録、虎ノ門にて

さかし:いただける仕事で充分数があるのは理想の形ではあるけど、たまには「自分がやりたいと思っている仕事」にアプローチするのも大事だと思います。モチベーションの維持になる気がする。
 
あきら:そうですね。来てる仕事だけに対応してると、こなしてる感じになっちゃいがちなんですよね。その中にやりたかった仕事ももちろん来るのでありがたいなと思うんですが、「自分のやりたかったこと」にも立ち返らないと。自分がナレーターをやってる喜びとか、意義、価値みたいなところから道を踏み外しちゃうような気もしなくはない。
そのほうが「自分を持って」ナレーターをやっているという感覚があるかなって思う。
そう思うと、もっと自分のやりたいことっていうのをもう一度精査してみて、アプローチをしてみてもおもしろいだろうな、と思います。
まずはFacebookをガッツリ掴み取ってやります。
 
さかし:その時はもうみんなでお祝いをしましょう!


あきらさんの、事務所に所属せずにSNS営業で自分を知ってもらい、取引相手を海外市場にまで開拓していった歩みは、宅録を始めたばかりの私にとってとても勉強になるお話ばかりでした。そして、一プレーヤーとしてだけでなく、次は経営・運営のほうに視点がシフトしていっているというお話に、あきらさんの目にはとても大きな世界が広がり、キラキラした未来と希望が見えていることを感じました。これからも益々のご活躍を応援しています!(by あこ)

約1年間インタビュアーをつとめさせていただきましたさかしです。この記事をもってHITOCOEを卒業?お休み?させていただくことになりました。
この連載の中でいろんな方の在り方に触れさせていただき、私も刺激を受け、本当にやりたいことは何か、それに全力投球してみたい、そのためにも言い訳できないようにしたい、と思ったからです。
これまでインタビューに答えてくださった皆様、また読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!次回からもナレーターインタビュー企画は続きますので、新しい形での連載を楽しみにしていてください!(by さかし)

これからも「HITOCOE」ではナレーターに特化した上質な記事を連載予定です。今回の記事を気に入っていただけたら、スキやフォロー、サポート(投げ銭)をいただけると幸いです。

【ライター】
さかし(坂下純美)

東京在住のナレーターで一児の母。都内スタジオでの収録を主に活動。1年半前に宅録を開始。人間観察が好き。
〇HP…https://www.sakashitamasami.com/
〇Twitter…@sak1013

あこ(甘利亜矢子)
静岡在住のナレーター。司会業を中心に伊豆半島全域を走り回る日々。只今育児の為、司会業は育休中。宅録のお仕事を本格的に始めました!
〇note…https://note.com/amariayako
〇Twitter…@amariayako

片岡あきら(HITOCOE編集長)
国際ナレーター芸人。声の仕事でお寿司を食べまくっている人。プレイヤーとしてだけでなく、スクールや大学での講師、個人レッスンなども。
〇HP…https://kataokaakira.com/
〇Twitter…@akiranarrator

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