編集者には見えていない書店のあれこれ

私は少し前に約1年間、編集者でありながらある書店にアルバイトとして潜り込み、書店員をしていました。そこで学んだことをいくつか書こうと思います。(一昨日書いたnoteの続きです。)

このnoteに書きましたが、自分の頭の中の次元を1つ上げて「2次元から3次元にできたこと」は、書店員をやって本当によかったと私が思うことの1つでした。今日は、その他の細かいところを3つくらい書こうと思います。

■書店は朝が一番忙しい

新刊の発売日に、著者と一緒に書店周りをするというのは、私にとって編集者としての重要な仕事の1つです。そういうときに、以前の私は「お客さんが少ない午前中に訪ねたほうが書店員さんにとってはいい」と勘違いしていました。

実際には逆でした。私の働いていた書店では、朝の開店直後が1日の中で最も忙しい時間帯でした。品出しやシュリンク、雑誌の紐かけ、定期購読や注文分の処理や電話など、お客さんで店が混み出す前に、すべてを終わらせなければなりません。もちろん、その間に客対応もしています。午後になるとそのような仕事が一段落して、客対応をしつつその合間に返品や発注作業、POPの作成やブックカバーを折る仕事などをやっていたので、比較的余裕ができるような感じがありました。

編集者には書店員さんのバックヤードの仕事が、なかなか見えません。だから私は、店内にお客さんが少ない朝の時間帯のほうが、お客さんで混み合う昼以降の時間帯より、書店員さんに余裕があるんじゃないかとずっと勘違いしていました。私の働いていたお店の店長は、「午前中に書店周りにくる出版社の人間はわかってない」と、よく怒っていました(笑)

■きれいな本が当然いいはずという落とし穴

書店で本を買うときに、一番上に置いてあるものを買わずに下からきれいな本をとる、というのは、特別に神経質な人でなくてもやっていることだと思います(笑)特に「愛蔵版」的な要素の強い本ならば、尚更だと思います。

私は、あるとき作った書棚のラインナップの中に、「新訳 ドラえもん」という本を並べていました。

この本は、「しずちゃんさようなら」「のび太の結婚前夜」「帰ってきたドラえもん」など、「ドラえもん」の中でも感動の名作と言われる7作品が収録された、上製2160円の、言わば愛蔵版の本です。

私は、お客さんは当然「きれいな本」がいいだろうと思い、すべてにシュリンク(ビニールのラッピング)をかけて書棚に並べました。並べた当初から、たくさんのお客さんが立ち止まって本を手に取り、ポップをじっくり読んでくれていました。ところが……、2日たっても3日たっても、1冊も売れなかったんです。その棚に並べた本の中で、一番手に取ってもらえている本のはずなのに。売れないんです、1冊も。他の本は売れるのに。

私はレジからお客さんの様子をずっと見ていて、「なんでなんだろう」と考えていました。

実はこれ、答えはものすごく簡単なことだったんですけど……わかりますか? 蔦屋書店などに行くと、とても当たり前にやられている方法で、私は後日それを見て「これって本の陳列のやり方としては基本中の基本なんだ」と反省しました(笑)

お客さんは「中を見てから」買いたかったんです。2160円もする愛蔵版の本です。ひと目、中を確認してから買いたいと思うのは当然です。私は最初、それにまったく気づきませんでした(笑)

レジで毎日毎日「どうして売れないのかなぁ……あんなに手に取ってもらえてるのに……」と悩んでいたあるとき、「もしかして、買う前に中を見たいのかなぁ……」とぽつっと言ったら、「あー、なるほど、それはあるかも。私なら見たいと思う」と、書店員仲間に言われたんです。

それですぐに、5冊あったうちの一番上の本のシュリンクを外してみることにしました。すると、その日のうちに、下にあった4冊が全部が売れて、追加発注をすることになりました。「なんだそういうことだったんだー」と、みんなで笑ったのをよく覚えています。

■特典はどう配られているのか?

ポストカードやしおりなど、コミックに特に多いのですが、本に特典を付ける場合があります。編集者の立場で考えているときは、もちろん「喜んでもらえる」と思って作っているわけです。でも、実際にそれらが書店の現場でどのように扱われているかなんて、私は考えたこともありませんでした。

書店にはいろいろな出版社からたくさんの特典が送られてきていて、その大部分をレジで書店員が対応しなければならず、とても大変です。

私の働いていた書店では、レジ横のボックスに大量に特典が入っていて、付箋に書名を書いたものが貼ってありました。数が多くてとても全部は覚えきれないですし、レジでお客さんをさばきながら「確かこの本には特典があったはず」と思ってボックスの中から探すのはとても大変でした。付け忘れてしまい、お客さんから「この本、特典が付くはずなんですけど……」と言われたり、「特典はいらないから早くしてください」と怒られることもありました。

しかも、本が入荷する際、特典情報をパソコンで検索して、ちゃんと納品されているかを確認しておかなければならないので、倍の手間がかかります。

自分が編集者の立場で「喜んでもらえる」と思ってやっていたことが、実は出口ではこんなことになっていたんだと、初めて知った瞬間でした。

まだまだ他にも書店で勉強したことはありますが……また機会があったらここに書くようにします。


<昨日の仕事のひとつ>

昨日の夜は、銀座の蔦屋書店で仕事をしていて帰りが遅くなってしまって、このnoteも今朝、書きました。昨日は、一筆が編集・制作を担当している電子書籍「生活残業クロニクル」の第4巻の校正作業をしていたんですが……なかなか思うように進まず、レンブラントの画集なんかを見たりしていました(笑)

ちなみに、このnoteマガジンが電子書籍第4巻になります。

今日中に作業を終わらせて明日には刊行したいと思うので、今日は朝から頑張ってやっています。あともうちょっと。気合いで完成させます。

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一筆@編集者

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コメント2件

目からウロコですね!
ウロコ、ボロボロボロって感じでしたが、書店員さんにとっては日常って感じでした。。。(笑)
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