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#8 マイケル・タワリー/優・タワリー Taste Of Texas (仙台市)

Profile
マイケル・タワリー 1979年生まれ アメリカ合衆国テキサス州出身
優・タワリー 1982年生まれ 宮城県仙台市出身
Taste Of Texas Facebook ページ https://m.facebook.com/tasteoftexasinsendai

アメリカでは人をもてなすツールとしてBBQを家庭ですることを文化としており、1日かけて調理をしながら人々との交流を楽しむ。焼き係は主に男性の役割だという。日本に来てからもこの風習を日本人の友人や外国人の友人へ行っていたところ、マイケルさんの手作り料理が好評だったことから、本格的にお店を持つことを考え始める。2018年2月〜4月末まで3ヶ月間暮らし人にて実験的に店舗を構えた。

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タワリー夫妻とは3年ほどの付き合いになる。
仙台で英語を勉強したいという事がきっかけで出会った。奥様の優さんは私と同い年。そんなこともあり、時間が合えばランチを一緒にする仲だ。以前から旦那様のマイケルさんが自分でお店を開く事を夢見ていると伺っていた事もあり、今年の4月末まで駅前で実験的にオープンした「暮らし人」に出店してもらっていた。今回のインタビューは彼らのお店” Taste of Texas”について伺う。

白鳥:お久しぶりです、その後はどうですか??*
今日はインタビューよろしくお願いします!

タワリー:お久しぶりです!その後も機会があれば料理はしていますね、富谷の輸入住宅を購入*したので、しばらくその工事に追われそうです・・・こちらこそよろしくお願いします!!

*1 暮らし人が終わってから久しぶりの再会だった。
*2 暮らし人を始める前から、彼らは富谷に住宅を中古で購入する事が決まっていて、そこでまた新たな取り組みをする予定だ。

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1、Authenic/本物


ー日本らしくではなく、本場の味で


白鳥:それでは一番目のパーツ、「Authenic/本物」ですが

タワリー:そうですね、お店をする上で私たちが求めるものは日本らしくではなく、本物である、本場のものであること。お店の名前自体も「Taste of Texas」ですから、本場の味じゃなかったらね(笑)
スペアリブを売りとしている仙台のお店に行った事があるのですが、アメリカのBBQの味ではなかったんです。本場の味で食べれるお店が仙台にはないので、アメリカの人たちが食べた時に納得するホームの味にしたかったんです。
例えばアメリカで日本食のレストランに行っても日本の味ではない事が往々にありますよね、自分のお店はそうしたくなかったので。

白鳥:海外に行った方ならきっと一度は経験してますね、そういう事。

タワリー:日本人の味に合わせるということはよく分かるんですが、私たちが求めるものはそうはしたくなかった。私たちはアメリカの味にこだわりたいんです。それが自分たちでオリジナルのBBQソースを作ることにも繋がっています。アメリカでは、BBQソースはスーパーで手軽に買えるものだけど、既成品を使わず自分が一番BESTだと思う味を作り込みたい、添加物が入っているのも気になりましたしね。何が入っているのかが分かる安心感が欲しいですね。
マイケルの出身地のテキサス州では各家庭でBBQソースを作る人が多く、それを手土産にすることもあるんです。アメリカ人のお客様にお店のオリジナルソースを喜んで頂けた事が嬉しかったですね。日本人にはBBQソースの存在すら知られていないですよね。

白鳥:馴染みがないですものね。

タワリー:何度か来てくださったお客様が、自宅でもBBQリブを作ってみたいと言ってくださった方がいて。こうして日本にもBBQ文化が広がってくれたら嬉しいですね。ソースにはものすごくこだわりました、大変でしたが(笑)マイケルしか作り方を知りません(笑)マイケルのオリジナルレシピは、友人のおばあちゃんのオリジナルBBQソースをアレンジしたものなんです。日本ではなかなか手に入らないスパイスもあり、そういう部分でも苦労しました。

白鳥:これは次のクオリティーの話に繋がって来ましたね!

タワリー:そうですね!

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2、Quality/質


ーソースも肉の焼き加減一つも手を抜きたくない、それがホームの味に繋がるから


白鳥:BBQソースへの強いこだわりはまさに二番目のパーツ、Qualityの話ですよね。

タワリー:たとえテキサスの味が出来ても、美味しくなければ提供することはできない、やっぱり”美味しい”と言われたいですからね。BBQソース同様、リブの焼き加減もかなりこだわりました。焼き加減一つで、食べたときに肉が骨から綺麗に解れてくれるか左右されるので、何度も試作をして、温度、火加減、を調整し続けました。豚肉なので安全面も考えないといけない、でも焼き過ぎはいけないですし。

白鳥:全てに気を使うのはなかなか大変ですよね。

タワリー:そうなんです。

白鳥:毎日仕込んでいたじゃないですか、一定に保つというのはやはり大変でしたか?

タワリー
:そうですね、購入した肉によってサイズが違うので、それに合わせて調整しなければいけないのは大変でしたね。試作段階ではマイケル同様テキサス出身のアメリカ人のお友達に食べてもらって、感想をもらったり。やっぱり毎回一定に保つというのは大変でしたね。

白鳥:そこを一定に保てるのはプロの技なんでしょうか。

タワリー:そうですねぇ。一度マルシェに一緒に出店させて頂いたじゃないですか。

白鳥:スプリングマーケットですね*。

タワリー:あの時が、今までで一番沢山仕込みました。リブを重ねて焼くと、下からの火が上まで伝わらなかったり。肉の水分が蒸発することでオーブン内の温度が下がってしまって、予定より時間がかかりましたね。それで出店に遅れてしまって、あの時は申し訳なかった・・・。

白鳥
:いえいえ、全然問題ありませんでしたよ!

タワリー:大量に作る練習はなかなか出来ないので、そこが歯がゆいところですね。そうやって苦労して提供したものを、”美味しい” ”アメリカの味だね” ”ホームを思い出す” と言ってもらえて本当に嬉しかったですね。

白鳥:味って深いところに響きますからね、いろんな思い出も引き出すものですからね。

タワリー:アメリカ人のお客様からは、自分たちのBBQソースの作り方や肉の焼き加減などを色々話してもらえることが楽しかったですね。

白鳥:アメリカ全体でBBQ文化があるんでしょうか?

タワリー:全てのアメリカ人がBBQをするという訳ではないですが、テキサスでは他の州より有名かもしれないですね。テキサスと言えば、テキサスBBQかメキシカン料理が有名です。テキサス料理とメキシカン料理は全く違うものなんですが、テキサスというとメキシカンという印象もあるので、少しでも雰囲気を近づけるためにもメキシカン料理の「ケサディーヤ」やトルティーヤチップスを提供したりもしました。これは次のパーツの話にも繋がりますが、来てくださったアメリカ人以外のお客様も、テキサスの料理に興味を持ってくれて。

白鳥:日本では、特に仙台ではなかなか食べれないからでしょうか。

タワリー:そうですね、仙台ではテキサスBBQをうたってるお店はほぼ無いからではないでしょうか。

白鳥:確かに、東京にいけば様々な国の料理のお店がありますけどね。

タワリー:アメリカ料理自体、イメージが無いですよね。ハンバーガーとか。ハンバーガーにしてもパテが牛100%で作られているところはなかなかないと思いますし。

*スプリングマーケット/今年3月に空きビルを使ったマルシェを開催、その時にTaste of Texasさんにも出店して頂いた

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3、Hospitality/おもてなし


ーお客様が長時間滞在したくなる安心感を提供出来た

白鳥 : hospitalityのワードについてはどうでしょう?

タワリー:おもてなしというか、来てくださったお客様にとってホッとできる場所でありたいということですね。暮らし人の場所は広すぎず小さすぎずちょうど良かったです、作業しながらお客様と会話出来たので。1時間〜1時間半と、長時間滞在される方が多かったですね。ビジネスとして考えるとそこは難しいところですが・・・。お金を取ることを重視するより楽しんでもらえることに重点をおけばいいと割り切ってました。終わった今思うのは、みなさんリラックスして食事を楽しんでくださったということで、良かったかなと(笑)

白鳥:その経験からのHospitalityですね。

タワリー:機械的なお店にしたくなかった、一人一人を大切にしたかったので。あと、子供連れでも喜ぶお店にしたかったんです。お母さん達が人の目を気にしないでいられる店が少ないという自分自身の経験からそこは重視したかったですし、実際に出来たということは嬉しかったですね。子供がいることをネガティブに捉えず、ポジティブに捉えられる空間でありたかったんです。 
たまたまなんですが赤ちゃん連れのお客様が3組同時にご来店された時があって、お互い面識がないけれど、赤ちゃん連れという共通点から新たなコミュニティが生まれたんですね。
子育ては孤独になりがちなので、その孤独感が少しでも解消できた瞬間だったかなと思って嬉しかったです。旦那さん同士の繋がりが生まれることもありました。なかなかお父さん同士が繋がれる場はないですよね。 
これは唯一日本の文化を取り入れた部分でもありますが、私が(優さんが)日本人としてのおもてなしを大切にすることができた。マイケルの出身のテキサス州は州が大きいので、よく「Texas Size」と言って、何でも大きいという意味の表現に使われることがあります。愛情が大きい、何事も大きく受け入れるという意味での「Texas Size」でおもてなしをしていましたね。

白鳥:なるほど、そこからの次のパーツに繋がりそうですね!

タワリー:そうですね!

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4、International/国際的


ー国や人種は関係ない、みんな同じ人間同士なのだから

タワリー:日本でマイケルが暮らして感じることですが、日本人の視線がとても気になる外国人は多いと思います。例えばお店に入ると、お店の店員さんが英語が喋れないことで緊張してしまったり。日本語でいいから普通に受け入れてくれたらいいのに。
今はだいぶ無くなりましたが外国人お断りの雰囲気があるお店もありましたよね。外国人だからではなく同じ人間として接して欲しいです。一緒にいて心地いいスペースを私たちは作り上げたかったんですね。これはマイケルが一番重視していた部分ですね。初めて来るお客様にも気軽に入れる雰囲気作りは心がけていました。たとえば飲み物だけでも。ベジタリアンの方が入ってこられたこともあって(笑)お肉料理と説明してすぐ帰られましたけど、それでも私たちは全然問題ない、それはそれでと。アメリカだけに限らず多国籍の方に入りやすい店づくりを意識していました。そのおかげか初めて出会った外国人のお客様と、日本人のお客様がお話していたこともありました。お互いの国や、文化のことを話し始めたり。そういう風景を見て私たちも楽しませてもらえました。仙台が国際化を目指すなら仙台人がもっと心を開いていかないといけないですね・・・。

白鳥:そうですね、まだまだ時間がかかりそうですね 東北の文化もありますから。最後のパーツも今の話に繋がって来ますね。頂いたパーツが総合的に繋がりあっていますね!

タワリー:そうですね!!

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5、Enjoyable/楽しみ


ー人に合わせて楽しめる空間作り

タワリー:家族で外にご飯を食べに行って楽しめないということがありました。お水すら頼みにくい雰囲気というか。自分たちのお店はそんな風にしたくなくて、来てくれたら美味しい、楽しんでもらえる空間の提供を心がけました。
先ほどの「international」に被りますが、外国人のお客様が来店された時、仙台の面白い場所を教えてほしいと言われたことがあって、私たちがお勧めする場所ですけど、ちょっとした観光アドバイスのような事もしました。そうすると相手の祖国でお勧めの場所やお店を、逆に教えてもらえたりもしました。お店を通して出会えた外国人の方も沢山います。仙台にこんなにも外国人が住んでいるのかと思うほどに。なかなか知り合える場がないので、お互いに出会える場を求め合っていることも実感しました。シングルの方は飲みに行ったりパーティーに行ったりできますが、ご家族の方、特に小さいお子さんのいる方はそうはいきません。健全な場があまりないんです。

白鳥
:確かに、無いですよね。知り合いは沢山いた方が楽しいですよね。

タワリー:そういう場作りを出来たことが嬉しかったです。私たち自身が楽しませてもらったと言いますか。あの場で出会えた新しいものが沢山ありましたね。
ただ実際にお店をやってみて難しかったのは、人それぞれ楽しみ方が違うので、その違いをいかに理解してあげるかということでした。喋りたい人もいれば喋りたくない人もいますからね。相手の求めるものをこちらが見極める難しさを痛感しました。

白鳥:接客業ならではの難しさですね

タワリー:3ヶ月という実験期間でしたが、色々勉強することができた期間でした。今回の経験を活かして是非次の展開につなげて行きたいですね。

白鳥:私はお二人の活動を客観的に見ていて、色々な可能性を感じていましたよ。今後の活動も楽しみです!

タワリー:ありがとうございます、お店をやらなかったら広がらなかった事が今少しずつ広がり始めているので、私たちも楽しみです!

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飲食店で働いた経験がない二人に、お店を出す前に暮らし人を使いローリスクで色々経験した方がいいと提案した去年の年末。出店すると決めてから本当に努力したのだろう。
日々お店を運営する中で見える課題にもしっかりと向き合い、一つ一つ糧として身につけたに違いない。
私自身、彼らから学ぶことは多い。
お互いに切磋琢磨して高め合い、いいものを作り合える仲でこれからもいたい。
一回りも二回りも成長した彼らの今後の活動に目が離せない。

インタビュアー 白鳥 ゆい

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