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2023年に出会った傑作アルバム10選

今年聞いた音楽アルバムは約400枚でした。ヒトです。
今年聞いたアルバムの中から特に良かった作品を10枚選びたいと思います。あくまで、”私が今年聞いた400枚”からの選出なので、今年発表されたアルバムに限りません。
spotifyとAppleMusicのリンクを貼っておくので、気になったら聞いてみてください。新しい音楽との出会いになれば幸いです。

↑去年の

あのち / GEZAN

日本のオルタナティブロックバンド、GEZAN。去年の記事でも、GEZANの曲を入れるくらい、とても気に入ってるバンドです。前回のアルバム「Never End Roll」は私の中の邦楽ベストアルバムに入れていいというくらい惚れ込んでいたのですが、今年発表された最新作「あのち」はその過去の”ベスト”を吹き飛ばすほどの熱量とテンションが詰め込まれていました。ロックバンドというのは、たいてい新作を作るごとに摩耗していくものです。まさか一作ごとにその頂を更新していくバンドが、現在進行系でいてくれたなんて。
どこか陰を感じさせながらも、静かにゆっくりと、聞くものの心を高揚させていくリズム。ラップのように重なり合いグルーブを生み出していくコーラス。地の底から叫んでいるようなマヒトゥ・ザ・ピーポーの声。それらが完全に調和して、最後に大爆発する。そんなイメージのバンド・アルバム。音楽史に残る大傑作だと断言します。捨て曲なし!
オススメ曲はTOKYO DUB STORY。

https://music.apple.com/jp/album/anochi/1664718825

Obscure Ride / cero

東京発ポップバンド、cero。アーバン風味のメロディが特徴です。私は今年の年末にceroを知ったのですが、そこから全部のアルバムを一気に聞いてしまいました。そしてすべてのアルバムが傑作だった。本当は全アルバムをランクインしたいくらい。心地よい歌詞、心地よいメロディ。ポップスとしての耳障りの良さを持ちながら、オルタナティブな変則さも併せ持ちます。この作曲センスにただただ脱帽。大天才だと思います。
Obscure Rideはceroのなかでも、とくにアーバンミュージックに接近したアルバムです。幼少期から親の趣味でR&Bに慣れ親しんだ私には特に本作が刺さりました。和R&Bがたどり着いた一つの答えだと思います。
オススメ曲はOrphans。

https://music.apple.com/jp/album/obscure-ride/994807575

Philosophy of the World / The Shaggs

はい。知ってる人は知っている、ザ・シャッグスです。ふざけていません。本当に良かったんです。シャッグスというのは70年代にアメリカで活躍(?)した姉妹3人のロックバンドですが、彼女たちのファーストアルバムは「世界で一番ひどいアルバム」としてその名を音楽史に残します。なぜそんなバンドが生まれてしまったかというと、祖母の予言を信じた父が強引にバンドを結成、女子たちに音楽の知識はないし、もちろんやる気すらもないので、この壊滅的なアルバムが誕生したというわけです。そりゃあ酷いに決まってる。
なぜそんなアルバムがいいのか。年に何千曲と”いい曲”を聞いていると、シャッグスの原始的な楽器がかえって耳に優しく響くのです。それに不協和音のように被さるコーラスはさながら実験音楽のようで、聞くものに常に新鮮な驚きを与えます。その支離滅裂さのおかげで、ほどよく音楽が頭を抜けて(脳が音楽と認識してないのかもしれない)、ブライアン・イーノよりもよっぽど環境音楽として優れてるのかもしれないと思ったりします。
それに、自分もたまーに気が向いたときに、DTMで作曲をすることがあるのですが、シャッグスの音楽を聞くと「わ、わかる~~!」となるのです。素人が作曲したらこうなる、が詰め込まれていて共感しまくりです。愛さずに入られません。
それでも、嫌々でも、拙くても、12曲のオリジナル曲を作ってアルバム出版までしたジャックスは素直に尊敬に値します。どんなにカスなものでも、ゼロよりは絶対に偉いのです。この世の凡夫の大半は、シャッグスにすら届かないのです。シャッグスは偉いのです。
「商業アルバム」の最下位で揺るがず我々を見守ってくれているシャッグス。彼女たちの駄作はいまもきっとどこかのアーティストに勇気を与えています。
オススメ曲は Philosophy of the world。これは普通にいい曲ではないか…?

https://music.apple.com/jp/album/philosophy-of-the-world/1086626079

シン・仮面ライダー音楽集 / 岩崎琢

庵野秀明監督の「シン・仮面ライダー」は、今年見た映画でベストかなーと個人的に思ってるのですが、なぜそんなに気に入ったかを考えてみると、半分は岩崎琢のサウンドトラックのおかげではないか?という結論に至りました。音楽がとにかく素晴らしいのです。重低音のベースと攻撃的なエレキギターのハードなコンボが見る者のテンションを否応なく引き上げていきます。音楽を聞いているだけでワクワクしてきます。メロディもいいし、劇伴としての役割も完ぺきにこなす、理想のサウンドトラックの一つです。EDM風味の解釈のテーマ曲も最高。
オススメ曲は"metamorfose"。

https://music.apple.com/jp/album/%E3%82%B7%E3%83%B3-%E4%BB%AE%E9%9D%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC-%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E9%9B%86/1679727831

若者たちへ / 羊文学

たぶん有名なバンドなんですよね、羊文学って? 音楽シーンというのにまったく知見がないので、そこらへんがよくわからんのですけど、良かったものは良かった。オルタナティブなギターの響き、ダウナーなボーカルの静かな激情、綺麗に調和しています。理想的なオルタナの音楽だと思います。アルバムは全部聞いたんですが、1stが最高傑作だと思います。
オススメ曲は”Step"。

https://music.apple.com/jp/album/dear-youths/1406803664

The Kids / Suchmos

ロック、ソウル、ジャズ、いろんな音楽の要素を感じられるバンド。それらの要素がすべて「カッコよさ」の一点に突き詰められている。ぜんぶを煮詰めてしまったら玄人向けの難解音楽になってしまうんじゃないか?と思うところを、絶妙な塩梅で、耳障りの良いポップスが出てくるのだから不思議だ。ブラック・ミュージックの旨味成分がギュッと濃縮された贅沢なバンド。日本語で喋っていること以外、まったく邦楽らしさを感じない。とにかくおしゃれでカッコよくてクールだ。
オススメ曲は”STAY TUNE"。

https://music.apple.com/jp/album/the-kids/1188914825

クロスビー、スティルス&ナッシュ / Crosby, Stills & Nash

クロスビー、スティルス&ナッシュは、1970年代初頭にかけて活躍したフォークロックのスーパーグループ。フォーク・ロックには馴染みがなかったのですが、これがまたいいアルバムなんです。コーラスのハーモニーが耳を幸せにしてくれます。ちょっとQueen(のブライアン・メイの曲)ぽさを思い出すのは私だけでしょうか。"39"が好きな人はきっとこのアルバムが気に入ると思う。
オススメ曲は”You Don't have to cry"。

https://music.apple.com/jp/album/crosby-stills-nash/908303090

Shambara / Shambara

カシオペアのメンバーの櫻井哲夫と神保彰によって89年に結成されたポップバンド。今回紹介するアルバムの中で一番マイナーなんじゃないかと思う。アマゾンにすらレビューが一件もねえ…。でもこれが隠れた傑作なのだ。一曲目”On The Earth”の弾けるような楽観的なメロディとボーカルにグッと心を掴まれる。どの曲も見事な「シティ・ポップ」に仕上がっているのだ。
個人的にも、ジャズ・ミュージシャンが結成したポップバンドというのが大好きなんです。菊地成孔のSPANK HAPPYとか(再活動してくれ~)。
シティ・ポップの代表作にしていいくらいよくできたアルバム。長らく話題にあがることのない作品だったが、ひょっとしたら”今だからこそ”名盤になったのかもしれない。さながら熟成ワインのような一品。
オススメ曲は”On The Earth”。残念ながら配信はされていなかった…。


レモンエンジェル ファースト+シングルコレクション / レモンエンジェル

レモンエンジェルとは、1987年結成に結成された、アダルトアニメ「くりいむレモン」のイメージガールとして選出されたアイドルグループだ。「は?エロアニメのアイドル?」と思ったあなたの感性は何も間違っていない。私も意味がわからない。ただ、そういう時代があり、そういうグループがあったのだ。
これはそのレモンエンジェルのファーストアルバム。だけど侮ることなかれ。これがまた名曲の宝庫なのだ(リイシュー版はシングル曲を纏めてベストアルバムちっくになってるのでこちらがおすすめ)。本作がシティ・ポップの名盤として再評価されることを切に願ってやまない。

「第一級恋愛罪」のアホらしくなるほどまでの恋愛ポップスはもはや希少だし、「東京ローズ'88」のガキ臭いボーカルの声はクセになる。どこかアンニュイなニュアンスを感じるメロディもいい。

それから、アニメ「レモンエンジェル」(アダルトアニメ「くりいむレモン」から派生したアイドル「レモンエンジェル」を題材にした深夜アニメ。なんじゃそりゃ)の挿入歌に使われている「たそがれロンリー」。

{ロンリーロンリーロンリーロリー ロンリーロンリーロンリーロリー 危ないロリータ~}

ロリを連呼するだけのあまりに知能の低いポップスにこんな横暴が許されていいのかと衝撃を受けた。でもこれがスルメ曲で、一度耳にすると一週間は耳から離れないことを約束する。
人生で初めてアイドルソングにハマったかもしれない。歌唱力なんてただの女子高生そのものだ。でもそれでいい。「ロンリーロリロリ♫」なんて上手く歌ってもしょーがねえんだから。

こんな舐め腐った下手な歌でも人の心を揺さぶれるということを証明してくれたレモンエンジェルには頭が上がりません。

オススメ曲は「たそがれロンリー」。

https://music.apple.com/jp/album/%E3%83%AC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AB-%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88-%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/1602250619

False Memory Syndrome / ピーナッツくん

Vtuberが好きな人には馴染みが深いかもしれません。ピーナッツくんはアニメ制作や音楽制作などでマルチに活躍するVtuberのクリエイターです。妹のぽんぽこと活動しているチャンネルぽんぽこちゃんねるで活躍中。面白いのでぜひチャンネル登録してください。
自らアニメ制作を行うなど、マルチな才能を発揮するピーナッツくんですが、音楽の才能も素晴らしいものがあります。ジャンルはなんとヒップホップ。卑近でユーモアのあるライムをどことなくエモさを感じるメロディで打ち出します。
昨年も星街すいせいの「 Still Still Stellar 」、月ノ美兎の「月の兎はヴァーチュアルな夢をみる」をベストに選出しました。いま邦楽の最前線はVにあるかもしれない。
オススメ曲は「グミ超うめぇ」。

https://music.apple.com/jp/album/false-memory-syndrome/1518875700


以上でベスト10は終了です。
自分は昔から洋楽派なんですけど、こうしてみると、今年は本当にいい邦楽にたくさん出会えたなと思いました。海外に引けを取らない…どころか、音楽の最先端を走っているのでは?と思う瞬間も多々ありました。
あと自分はブラック・ミュージックのエッセンスが好きなんだなあとceroやsuchmosを聞いて自分の好みも再確認できました。
もし気に入ったアーティストを見つけ出せたなら幸いです。あと私の好きそうなアーティストを教えていただけたら嬉しいです。

おわり

オススメ曲を纏めたプレイリスト ↓



以下選外になっちゃったけど良かったアルバム

Can't Buy a Thrill/Steely Dan

R&B好きにはたまらないフュージョンなロック。

In a Special Way/DeBarge

ジャクソン5より好きかもしれない。より渋いというか、黒いというか。

so_mania / Soul'd Out

和ヒップホップは本国のものとは全く異なるものに感じるけど、むしろそのガラパゴスさが心地よく感じる。かっこいいアルバム。

すとーりーず / Zazen Boys

これもまたカッケー和ロック。あ、バンドの名前は知ってたけど向井秀徳だったのか。どおりでカッコいい。ナンバーガールと比べると癖の感じるバンドだけど、このアルバムは聞きやすかった気がする。

Positive / tofubeats

お名前は知っていたけれど、改めて聞くとtofubeatsもカッコいい。

ビアリストックス / Bialystocks

都会的なサウンドがクセになる。

Strobo / Vaundy

たぶん有名な人だと思う。聞き覚えのある曲がたくさんあって悪くなかった。ただこういうのって、いい曲だからよく思うのか、街なかで散々聞くからいい音楽のように刷り込まれるのか、どっちなんだろう。

L.D.K. Lounge Designers Killer / capsule

中田ヤスタカ率いる音楽ユニットcapsule。多幸感に溢れたいいユニットだと思います。全アルバム(20作くらい)聞いたけど、この時期の作品が全盛期かな。最近のものは駄作だと思う。前作の”Nexus-2060”もおすすめです。

FINE LINE / パソコン音楽クラブ

パソコン音楽クラブが嫌いな男の子なんていません!

Fernwärme / Michael Rother

ドイツの電子音楽家、ミヒャエル・ローターのソロアルバム。ノイ!の人だといえば分かる方もいるでしょうか。こちらはアンビエントな響きに包まれていて、とても心地よい作品。インスト好きは必聴。

Start Breaking My Heart / Caribou

独特の音像で根強いファンを持つカナダのエレクトロアーティストCaribou。代表作の”Our Love”ももちろん大傑作なのでこれも聞いてほしいのだけれど、処女作のインストアルバム”Start Breaking My Heart”が個人的にツボだった。ミニマルな響きの中から現れる神秘性がたまらない。

Open The Window / Rhymester

ライムスターの新譜。カッコいい。ヒップホップをギリギリまでポップスに解釈して、日本のリスナーに届けてくれるライムスターは希少な伝道師だと思う(初期作はブラックすぎてとっつきづらいのだ)

The Woodstock Experience / Sly & The Family Stone

スライのウッドストックのライブを収録。当時の観客の盛り上がり、乗りに乗ったスライの演奏、スライのベスト作品といっていい仕上がり。アルバムよりライブのほうがキレの良いタイプなのではないか。

New! / LAMA

スーパーカーのフルカワミキ・中村弘二が再合流したグループLAMAのファーストアルバム。ナカコー特有の浮遊感あるサウンドも健在。
現在映画界で大活躍中の牛尾憲輔(agraph)に、元ナンバガ・ブッチャーズの田渕ひさ子も参加。なんて豪華なグループなんだろう。もっと活動してほしかったなあ…。キラキラポップロックの金字塔になれるポテンシャルある作品。

Godzilla: King of the Monsters / Bear McCreary

ソイヤ!


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