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原作『攻殻機動隊』全話解説 [第六話]

前回[第4・5話]

第六話 ROBOT RONDO

第六話は押井守監督『イノセンス』の土台となったエピソードとして有名です。バトー・トグサ コンビがこの回の主役となっており、刑事モノとしての読み応えがあります。ストーリーはシンプルで読みやすいです。

(電子書籍の方はページ数をプラス4してください)


P106・107

腹の出た中年男性(殿田大佐)が屋内でゴルフを楽しんでいます。電脳空間ではなく立体映像室だそうです。最近はVRでこういう設備ありますよね。
そこに呼び寄せたアンドロイドが突然発狂。殿田大佐に襲いかかり、ボディーガードである別のアンドロイドに破壊されてしまいます。そのアンドロイドは阪華精機のトムリアンデ型でした。このロボットの発狂の謎を調べるという話が本回です。

P108・109

新浜のどこかでバトーが発狂ロボットの捜査をしています。バトーがコートを羽織ってることに注目です。舞台は10月なので、夏の前回から秋になりました。
1コマ目の茅葺屋根をよくみてみるとWaterford Wedgwood(アイルランドの食器メーカー)の文字が。………なんで? だれか真相を教えてください。

バトー「サルおやじめ 内務大臣から何か貰ったな?」
この世界では公安は内務省にありますが、公安9課(=攻殻機動隊)は首相直属の組織なので実は内務省に属していません。
したがって、なんで警官の(公安の)仕事を俺たちがやらなきゃいけないんだ、とバトーは怒っているわけです。

P110・111

発狂ロボットをバトーが始末。手につけてるのはスタンナックル。しかしそれは目当てのトムリアンデ型ではなく別のロボットでした。

P112・113

トムリアンデ型はトグサが確保していました。ご機嫌斜めなバトー。

P114・115

新浜県の警察署。「ブツブツ」言ってるのはドミニオンのキャラ。「ロボットの反乱」というテーマは第四話から引き継がれています。

P116・117

鑑識課で反乱ロボットの報告を聞いています。近頃はロボットの暴走が増えているそうです。報告書に皮肉な個人的意見を載せる鑑識人(イシカワじゃないよ)にバトーは共感を覚えます。

P118・119

殿田大佐の邸宅に素子と荒巻が訪問。ここで今回の捜査の概要が明らかになります。殿田大佐を襲ったトムリはテロなのか単なる事故なのか、それを捜査していたのでした。そしてテロではないことが明らかになったため、二人は身辺警護の終了を告げに来ました。

ところで、殿田大佐は明らかに現役の軍人ではありませんが、大佐と呼ばれてることからこの世界は終身官(退職したあとも、死亡するまでその官を失わない官吏)制度のある世界なのかもしれません。素子が少佐と呼ばれ続けられてるのにも説明が付きます。

P120・121

テロではないことが明らかになりましたが、トムリアンデ型の発狂ロボットには、電脳に”SOSマーク”が見受けられたとのこと。これを根拠に公安9課は独自に捜査を始めます。トムリの発狂にはなにか事件がありそうです。バトーはトムリアンデ型を製造している繁華精機に向かいます。

『イノセンス』では”SOS”が「たすけて…」という不気味なボイスデータで表現されていました。ホラーミステリ風に解釈した映画版は、原作とは違うテイストに仕上がっています。

P122・123

p122 4コマ
"ジェイムスン型サイボーグ"の社長

場面変わってトムリを製造している繁華精機の事務所。繁華の久保沼部長が社長に問い詰められています。久保沼は「見本品のトムリ」に何かを仕込んだようです。

P124・125

久保沼部長は「アダムとリンク」に頼まれ、見本品トムリにSOSを仕込んだことを自白します。

場面切り替わり繁華精機の工場に着いたトグサとバトー。そこに自白剤を打ち込まれた久保沼がフラフラと表れます。

P126・127

二人が聞き込みをしようとしたところ、突如ライフルによって久保沼の頭蓋が撃ち抜かれます。狙撃犯は前ページで語られていた「犯人を欲しがってる客」(ヤクザ)です。都合悪く(よく?)二人はその処刑場に居合わせてしまったのでした。二人は犯人を追いかけます。
「バトーは元レンジャー」という設定は何気にこのページが初出ですね。

P128・129

犯人とのチェイス。フチコマがこっそり隠れていて犯人逮捕に貢献します。

P130・131

バトー、拷問で情報を聞き出そうとします。ヤクザより怖い組織…

P132・133

男は「組長がトムリに襲われたので仕込んだ犯人に報復した」と自白します。そしてそのトムリは特別の客だけに配られた特注品であることが明らかになります。

P134・135

二人は繁華の工場に侵入します。すると「リンクとアダム」を連れて行こうとする社員の姿が。彼女たちは海外から密輸した子供です。トグサは社員を殴り倒しますが子供は逃げ去って行ってしまいます。それを追うバトー。不思議な装置にたどり着きます。

P136・137

そこにあったのは「ゴーストダビング装置」でした。ゴーストを複製できる代わりに、オリジナルが死ぬため禁止となった装置です。
繁華精機はこのゴーストダビング装置で子供のゴーストを複製して、高品質なアンドロイドを製造していたのでした。それが「特注品(見本品)のトムリアンデ」であり、子供たちは警察が自分たちを見つけるよう、ロボットが発狂するプログラムを仕組んでいたというのが事件の真相でした。

p137 4~6コマ

バトーは子供に叱責します「被害者が出るとは考えなかったのか?」

漫画では純粋のこの通りの意味ですが、押井守の『イノセンス』では更にこのように続きます。

「人間のことじゃねえ。魂を吹き込まれた人形がどうなるかは考えなかったのか」

『イノセンス』

人間よりも人形のことを問題にしています。「押井守のバトー」らしいセリフです。

P138・139

逃亡した繁華社長を捕まえるべく二人は車を追いかけます。

P140・141

社長は船で国外逃亡を図ります。
ちなみに「装備班の真由美」はp60の「彼女本当は62歳だって事?」の真由美。

P142・143

が、船に乗り込んでる途中で足を滑らせた社長は海に落下。これにて事件は幕引きです。
ジェイムスン型のサイボーグ」というのは、SF小説ジェイムスン教授シリーズのこと。ジェイムスン教授は四角の胴体と六本の触手のサイボーグに生まれ変わり宇宙を旅します。挿絵は藤子不二雄。

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P144・145・146

繁華社長は逮捕され、殿田大佐は繁華との癒着があったことが明らかになりました。これから追求されることでしょう。


つづく…

次回は第七話「PHANTOM FUND」です

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