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無料から始める歌モノDTM(第12回)【作詞編①】

はじめに

はじめまして方ははじめまして。ご存知の方はいらっしゃいませ。
ノートPCとフリー(無料)ツールで歌モノDTM曲を制作しております、

金田ひとみ

と申します。

今回からは歌モノDTM曲のもう一つの主役
歌詞
についてのお話です。

作曲についてのテクニック的なことに深く突っ込む前に歌詞にも触れていたほうが、最終的な歌モノ作曲そのものもやりやすいのではないかと私は考えていますので、今回から数回に渡って取り上げます。

「歌詞は書けないから依頼するつもり」
「恥ずかしくて書けない」
「歌詞こそ人それぞれでしょ」
と、いろいろご意見やお考えはあるとは思いますが、
このnoteで目指している歌モノ曲を作るには、自分で書く書かないは別にしてもコツなり考え方なりに触れておくメリットはあると思います。

理由は以下の点。
①歌詞もコンセプト構成に則って作られていること。
②一つ一つの言葉(単語や文)も音楽と同じくリズムメロディーに相当する要素があること。(ハーモニーはまだ考察中です。すでに自作品で実験的に試してはいます。)
そして今までの記事で見てきたように、
③歌モノ曲においては歌詞フレーズ切り離せないこと、
が理由です。

①は何となく分かると思います。
たとえば私は男女両目線でラブソングを作りますが、コンセプトが変われば当然主語が変わります。
僕、オレ、私、あたし、あたい、I…。
君、オマエ、あなた、あんた、You…。
日本語って面白いですね。人称だけでかなりの種類があります。「自分」とか「我(ワレ)」とかどっちの意味もありますし。関西人限定?
以前例に出した、「愛してる」「月が綺麗ですね」「一生オマエを守っていくぜ」など、意味的には似たような内容なのに表現がまったく違います。字数が違えば②③のリズムやメロディー、フレーズにも影響します。

構成についても、ABサビのどこにどの言葉を配置して、コンセプトを一番に体現するサビでどの言葉をリフレインするのか、どこで韻を踏むのか、どの言葉をロングトーンや高音にするのか、などなど。
考え方は作曲と同じです。

②③は今までの記事でも見てきました。
「だるま/さんが/ころん/だ・・」のように3拍子のリズムに感じられるのは、単語の区切りのおかげです。橋/端/箸のようにどこにアクセントを置くかで意味が変わってくる言葉もあります。「空想」→「クソ」に聞こえないような音符への割り当ても必要です。
サビのフレーズにタイトルやキーワードとなる言葉を配置することで、サビをより印象付けやすくなることも今まで見てきました。

今回は作詞編初回なので導入回としまして、歌詞そのものを作る手前のお話、詩ではなく「歌詞」を作るに当たってどのように考えているかについて主に触れていきたいと思います。
詳細は次回以降の予定です。
その後、作曲編と同じく【分析編】で自作品の歌詞がどのように出来上がって曲と結びついているのかを検証したいと思います。
分析用の曲は前回予告で出したこの曲。↓

11曲目『ねぇ、』(No.7/SEVEN/セブン)
この曲の完成に至るまで(作業日数はいつも通り20日以内で)、何を考えどうやって曲と歌詞を結びつけて行ったのかを最後に検証します。
(今回も長くなりそうだわ…。)

それでは始めます。

曲先で歌詞を考えるとき

鼻歌のすすめ

主に曲先で制作する私が普段やってる作詞はかなり気楽なところから始めます。
コンセプトに合わせた単語集めなどと同時進行ではありますが、やっていることは
鼻歌
です。
「テレレー」とか「ニャーニャー」とか曲の雰囲気に合うなら何でもありです。あとでキモい録音を聞かされます。(笑)
運良く歌詞とフレーズを同時に思いつく時もありますが、たいていはどちらか一方ですし一曲まるまる歌詞が出てくることなんてありません。

昨今の歌モノ曲は曲先が多いそうです。おそらく言葉の意味より音の響きを重視しているからではないかと思います。
シンガーソングライターやバンドグループのように作詞作曲両方やるアーティストも今ではざらにいますね。
ボカロPの方々はさらに編曲や最終調整までやらないといけないので、まあ大変。
私も多分に漏れず曲先での制作が多いです。
それでも歌詞に早めに取り掛かるのは、第7回【スピードアップ法】で紹介した、
調声音域テスト
を制作序盤にやるためです。

作曲予定の曲の音域とAIシンガーの得意とする音域がズレていると、調声に膨大な時間を取られる割に上手に歌ってくれなかったりといったことが起こります。テンポやリズムも影響してくるようです。
オケを結構作り込んだ後でどうにもならず音域を変えるともなれば、取り返すのにかなり労力を要します。反対にドンピシャだと調声自体ほとんど必要なくなることも。
前にも紹介したこの曲↓はアウトロの効果用以外、実験的に何も調声していません。

25曲目『レモンキャンディ』東北きりたん
音域や目指す雰囲気に合致していると、楽譜を読ませて出力しただけでこのくらいのクオリティーにはなります。音域やテンポを変更しながら、確か18回ほど調声音域テストを繰り返しました。

楽器の音色作りにこだわるように歌声もこだわって調声したいのなら、そのシンガーの基準となる得意音域やリズム感の曲を作れるようになってからのほうが後々発展させやすいと思います。私も知らずに苦労してきました。
今後書く予定の調声法の記事を読んだとしても、基準が掴めていない方には何のことやら分からず、表面的な小手先テクニックを真似するだけで終わる可能性もあると思っています。

話を戻すと調声音域テストをするためには多少の歌詞が要ります。
まだワンフレーズ分も無くても何かしら歌わせてみるための仮歌が必要です。
「ニャーニャー」でも良いのですが(入力が面倒くさい)、やっぱり無難なのは「ラララ」「ルルル」ですね。
ラ行は発音タイミングが早めなので、あとでちゃんと歌詞にした時とのズレが少ないです。
アタックタイミングがはっきりする「タタタ」などタ行もありですが、AIシンガーによっては「たー」が「た⤵あ⤴」のようにこぶしっぽい上がり方をすることがあります。
パ行やサ行だと逆に、短い音の連続で次の発声に間に合わないこともあります。
このへんは音声学を調べたり実際に発声してみると分かるのですが、人間が声を出す時は舌や唇などの動きで息の流れを阻害することで色んな音を出しています。
ラ行は舌先を上の歯の裏側などに当ててから素早く離す発音で、唇を使ったパ行や歯を使ったサ行などに比べて素早い発音が可能です。
たかが仮歌用の鼻歌といえど奥が深い。

声を音素に分解・再構成するボカロと違い、AIシンガーは歌そのものを学習するので人間の発声に近い利点がありますが、逆に機械的な素早い発声があまり得意でなかったり学習元の歌手の歌い方や癖が出て勝手にこぶしやシャクリが入ったりします。また現実で発音しにくかったり発声できない音の組み合わせの歌は学習しようがありません。

バラード系のゆっくりめの曲なら「アアア」「ウウウ」などア行も仮歌選択肢としてありです。調声用としては聞き取りにくいのであまりやりませんが、「ンンン」だとハミングぽっくなります。
そのような鼻歌で作られた有名な曲があります。↓

『北の国から』(さだまさし さん)
作詞作曲秘話はもはや笑い話ですが、ちゃんと歌詞を考えるにしても何らかの仮歌を入れてみることで、機械的な電子音のメロディーラインだけよりイメージを膨らませやすくなります。

ただし自分で歌詞を書くのではなく、作曲後にどなたかに歌詞を依頼するのであれば、下手に仮歌を入れないほうが作詞者の方が自由な発想で臨める場合もあるかもしれません。

音象徴を利用する

ここまで仮歌としてラ行やア行をおすすめしましたが「ラララ」はまだしも、「アアア」だとテンポの速いポップスやパワフルなロックのイメージを掴みにくいです。
むしろ「ダダダ」「ガガガ」とかのほうが鼻歌としてもしっくりくる場合もあります。

それはおそらく音象徴の影響です。
言葉の音と意味には関連性は無いと以前は考えられていましたが、昨今の言語学の分野では見直されています。
例えば日本語で「うた」、英語で「song」は音としての共通点は確かに無さそうです。現代では言葉の音と意味が各言語ごとにある程度決まってますからね。
「canzone」(カンツォーネ、イタリア語)と「chanson」(シャンソン、フランス語)のように似ている単語は語源が同じというだけです。(ちなみに抑揚といった意味の「accent」(アクセント)も同じ語源です。)
特に日本語は起源が未だに謎なので、他言語との音の共通点は見出しにくいです。

ところが、どの国どの民族でも音からイメージする形や感触は似てくるという研究があります。
有名なのはブーバ/キキ効果です。

丸っこいスライムのような図形とトゲトゲの星のような図形を見せ、名前を付けるとしたらどちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」かと尋ねると、母語(生まれ育った場所で自然に覚えた言語)に関係なく多くの人が、丸いスライム形=「ブーバ」、尖った星形=「キキ」と答えるそうです。
聴覚で感じているはずの音に、丸いや角ばったという視覚情報、柔らかさや固さという触覚情報を感じているということですね。
特に、単語としては意味が無い擬態語や擬音語は、音と意味がすっかり結びついている一般の単語に比べて、音の響きから連想するイメージに傾向がありそうだということがわかっています。
(擬態語とは、前回記事の「音程が“うろうろ”」など状態を表したもの、
擬音語は「時計の針が“チクタク”」など音を表したものです。
そして「チクタク」は「tick tok」つまり英語が由来なのに日本語でも通じます。
一方、擬態語は日本語にやたら多い表現です。星が「きらきら」、雪が「しんしん」とか音が無いものにすら擬態語を当てる日本人の感性は独特です。「ざっくり」や「こっそり」も擬態語です。外国人が日本語を習得する時にかなり苦戦するらしいです。)

パワフルなロックソングを作るなら、仮歌をダ行やガ行で歌わせてみるのもありです。
それっぽい曲を挙げておきます。

監督の米たにヨシトモさんが「ガガガ」の響きにこだわってアニメのタイトルにしたそうです。確かに「ラララ ラララ ラオライラ―」ではしまりがありませんね(笑)。

替え歌のすすめ

具体的な歌詞に近づける練習として、有名曲の替え歌を考えるのも一興です。
替え歌は言葉で遊びながら歌詞作りに慣れていけるので、良い歌詞を作ろう!と気負わなくて済みます。
私はしょっちゅうくだらない替え歌を作っては、一人で思い出し笑いしています。Twitterで呟いていることもあります。
以前解説した「たき火」のメロディーに「だるまさんがころんだ」を乗せた例も言わば替え歌です。

『たき火だるま』とかいう物騒な名前の替え歌

ついでに、秋になるとこの曲の自作替え歌を思い出して笑ってしまいます。↓

かなり悪意のある替え歌(笑)。童謡ですがまだ著作権が残っていますのであまりやってると怒られそう。歌詞を考える練習としての言葉遊び程度にしてください。

替え歌は言葉遊びでもありますが、うまく当てはめるには元の歌詞との韻踏みや意味の通じる言い回しを考えないといけないので、そこそこ難しいです。頭の体操になります。

詞先で歌詞を考えるとき

構成や文字数を意識する

実は最近、作詞をされている方から作曲のご依頼を受けまして、11月末くらいに発表する予定で只今制作に臨んでいます。メロディーはすでに出来上がっています。
ご依頼を受けるのも初めてですし、普段曲先が多い私にとってはすでにある、しかも他の方の詞をメロディーに当てはめていくというのは新鮮な感覚でした。一言一句改変しないでやってみると宣言しましたので、少々無理に詰め込んだ部分もあります。
その際、私が初めにやったことが詞先で歌詞を考えるときのヒントになるかと思います。

詩は大きく2つに大別されます。
定型詩
自由詩
です。
細かく見ていくともっとジャンルがありますし、日本語と外国語では詩の成り立ちが違うのであくまでざっくりな分類です。ばっさりな分類ではないです。(擬態語面白い。)

定型詩は文字数が決まっている詩です。
俳句や短歌などは5-7-5や5-7-5-7-7と字数が決まっています。
多少の字余り・字足らずや、種田山頭火のような自由律俳句の方もいらっしゃいますが、一定のルールに則って作られる詩です。(個人的に種田山頭火が好きなのです。)
また中国の絶句や律詩のように韻を踏んだりといった制約があるものもあります。

自由詩は定型詩の対義語で、字数に囚われない自由な字数の詩です。
韻を踏んだりの制約も基本的にありません。
現代だと、谷川俊太郎さんの詩は絵本や学校の教科書で誰しも耳に(目に)したことがあると思います。
自由と言ってもただ言葉を並べるのではなく、音の面白さやリズム感、比喩や暗喩といった言葉選びはかなり繊細な感性と技術が必要だと思います。
「かっぱらっぱかっぱらった」とか音もリズムも面白いですね。

歌詞はこの2つの両方の要素がある詩です。
ある程度の文字数の制限や韻踏みもしながら、長い文章にはせず、かといって言葉を羅列するだけでもない、それなりに高度な詩の形態です。

それでも正直、作曲に繋がる作りやすいものは定型詩のほうです。
歌モノ曲は小節数がパートごとに決まっていて、基本的には偶数小節数が作りやすいです。
Aメロは5小節、Bメロは3小節、サビは11小節、2番Aメロは7小節……などと長さが違うと一曲としてまとまりません。
【作曲編】の構成回でA:B:サビが1~2:1:2~4が作りやすいという話も以前しました。

小節数が決まっているので、おのずとその小節内に入ってくる音符数も決まってきます。パートごとに4分音符中心、8分音符中心などと変えることはできますが、極端にリズムがごっちゃになっているとメロディーが破綻して心地良くは聞こえません。

作詞に挑戦してみるなら、まずは作曲と同じように全体の構成を考えること。
次に8文字4行ずつなど字数にある程度の縛りを設けて書いてみると良いかと思います。字数といっても漢字も含めてカウントしてはいけませんよ。音としての字数です。

ご依頼の詞も私が最初にやったのは、どこをサビやメロにするかの構成を決めることと、すべての行の音数を数えるところからです。
行だけでなく音数も細かく単語の区切りごとに数えている部分もあります。同じ10文字でも3-7/4‐6/5-5/6-4/7-3と区切る箇所が違えば、同じメロディー上にうまく乗せられるか考えないといけません。
元々作詞者さまがいつかメロディーに乗せたいと歌詞用に書かれた詩ですので、構成に関してはある程度見通しがありました。それでも普段の自作品と違って一曲全体の展開には転調などそれなりの工夫が必要でした。
音数は少々無理をしたところはありますが、アレンジでカバーできるかと思います。
完成次第、改めてご紹介したいと思います。

音から言葉を導き出す

日本語は子音+母音の言語であることはご承知だと思います。
英語などは子音だけの連続も当たり前ですね。

そんな日本語でも実際にしゃべったり歌ったりするときには、母音がはっきり発音されないことがあります。
例えば語尾の「です」「ます」の「す」は発音記号上は[su]ですが、実際には[u]はそれほど強く発音されません。
また「行こう」「しよう」などの最後の「う」は[u]として発音されず「行こー」「しよー」など手前の音を伸ばしたものとして発音されています。「空想」が「くーそー」→「クソ」に聞こえる原因です。

これらの発音が入った歌詞をAIシンガーに文字通りに楽譜を読ませて歌ってもらうと、とてつもなく不自然な歌になります。いずれそれを調声していくのですが、今回は詳しく解説しません。

音が小さくなったり消えたりしているということは、歌詞上の文字数は揃っていても実際に発音する歌声とは違うものがあるということは知っておいたほうが調声も上手くいきます。そして歌詞を考えるときにも影響します。
曲先が作りやすいのは、音符の長さが先に決まっているので実際にメロディーに乗せて声に出して発音することができるからです。
例えば
「ラーララ―」というメロディーに対して
「ガッガガーン」と小さい「ッ」(促音)に変えたり、最後の「ーン」のように消えること前提で字数をオーバーさせることもできます。

反対に「きっと」「絶対」を「きいっと」「ぜえったあい」のようにわざと伸ばして発音することもあります。
「き」と「い」の音程が違う場合、調声ツール上でひとつの音の発音中の音程を変えることもありますが、読み込ませる楽譜上で最初から別の音として打ち込むこともできます。
どちらの手法を取るかでアタック感など若干雰囲気が変わります。

定型詩の手法で作詞すると字数を意識するあまり実際の発音とズレた歌詞にもなり得ますので、声に出して読んでみる癖は付けておいたほうが良いと思います。
上手くハマる歌詞は、メロディーに乗せず音読するだけでも心地良いリズムがあります。

また、日本語歌詞であっても近年では英語の発音を取り入れたものも当たり前になっています。
サザンオールスターズの桑田佳祐さんがその流れを作ったと言われています。Mr.childrenの桜井和寿さんなんかもその系譜ですね。

『終わりなき旅』。ミスチル一番の人気曲らしい。
1番Aメロの「切らしてさ」「振り返りはしないのさ」が「キラ s テサー」「フリカー e r ワ s ナーイノサー」ような感じで小さく発音されていたり(なんとも表記しがたい)、
サビで「きっとーきい⤴っと」になっていたり、
2番Bメロの「憂鬱な」が「ゆーつなー」になっていたり。
1字=1音符で当てていません。
AIシンガーの調声でこれをやろうとするとそこそこテクニックが要ります。

日本語ようなの1字1音の字数の区切りのことを
モーラ
と言います。
それに対してひとかたまりで発音される音の区切りのことを
音節
と言います。
「song」はカタカナで書くと「ソ/ン/グ」で3モーラですが、英語だと1音節です。(発音記号だと[sˈɔːŋ](アメリカ英語))、[sˈɔŋ](イギリス英語)だそうです。)
英語は音節で発音が区切られていて、メロディーに乗せる際も1音符に1単語だったります。それに対して日本語歌詞は1音符に1音ずつ乗せるのでやたら長くなりがちです。

アナと雪の女王『Let it go』。誰しもご存じかと思います。
英語歌詞のサビは「Let / it / go , Let / it / go」で3音節×2回。日本語版もそれに合わせて「あ/り/の、ま/ま/の」と3モーラ×2回にしています。軽く韻も踏んでいますね。
これを直訳してしまうと「てばなそう~、そのままでいこう~」みたいな感じでとても当てはまりません。

英語っぽい歌詞や歌手はモーラではなく音節で歌詞を捉えているようです。そういった発音の歌詞を目指すなら、実際に発音してみて音から導くのも作詞のコツです。
英語を多用した自作品だとコチラ↓は調声に結構苦戦しました。

サビの「4・6・7!」はモーラとしては「フォ/オ/シ/ッ/ク/ス/セ/ブ/ン」と9つに分けることができますが、音節は「four/six/se/ven」の4つしかないです。
「シックス」が特にえぐい。4モーラを1音節に詰めた上、「six」の最後の[s]の音と「seven」の[s]の音が別の音として聴こえるように調声しています。我ながらようやるわ。

歌詞と曲を合わせて初めて歌モノ曲

曲先はメロディーを優先するのでフレーズや全体の流れは作りやすいのですが、作詞そのものや後の調声で苦戦することがあります。
詩先は1音符に1音(1モーラ)を当てはめていくことが多いので、字数を意識して書いた歌詞なら使う音数が決まっていてメロディー作りもやりやすいです。でもそのぶん音符に縛られてしまいフレーズとしては単調になったり、上手くメロディーにハマらないときに歌詞側の修正が必要になる場合もあります。
どちらも一長一短です。

詞先で作る時はどうしても表現にこだわってしまいますが、うまくメロディーに乗らない時は「愛してる」「月が綺麗ですね」「一生オマエを守っていくぜ」などのように、コンセプトに合わせて他の表現方法は無いか考えてみる余裕は持っていたほうが良いと思います。
「そばにいたい」と言いたいなら「温もりを感じていたい」「あなたの右手、わたしの左手」みたいな表現にするとオサレ感も出ますね。

省略できそうな主語や助詞や語尾が無いかなど見直してみる必要もあります。体言止め(名詞を最後にする)なども手です。
ただしあまりやり過ぎると……

シティーハンターED『Get Wild』TM NETWORK。
Aメロの歌詞、
「アスファルト タイヤを切りつけながら 暗闇 走り抜ける」
は助詞が省略されていてカッコいいのですが、取り間違えると次のようになります。
「アスファルトタイヤを切りつけながら 暗闇走り抜ける」
「アスファルトタイヤを切りつけながら 暗闇走り抜ける」
アスファルトが主語なのか、暗闇が主語なのか(笑)。
おそらく正確には、
「(私)アスファルトタイヤを切りつけながら 暗闇走り抜ける」
ではないかなと。
そんなくだらないこと考えずに感じろ!と言われそうですが、作り手としては「Let it go」できない(放っておけない)性分でして……。

結び

改めて私なり歌詞の考え方について書き出してみると、今回の記事のような前提を踏まえた上で作詞していることに気づきました。無意識にやっていたことを理論化していっています。

どうやら詩と歌詞は似て非なるものです。
もちろん詩というのは想いや考えの表現方法のひとつですので、その内容のほうが当然大切ですが、歌モノ曲を作るにはある程度ルールに則った書き方が必要です。
想いや考えを綴るだけならこのnoteも私なりの表現方法のひとつですが、毎回数千字~数万字にもなるこの内容をそのまま歌詞にはできません。
大抵の歌詞は500文字程度に収まるのではないでしょうか。(音数として数えたらもっと多いですが。)
その少ない文字数の中で、いかに伝えたいことを伝えるか、上手く表現するかというのが作詞の醍醐味です。
最初は鼻歌やふと思い付いた言い回しでも、そこから膨らませていって音と合わさって一曲が出来上がる。私は欲張りなのでその面白さを独り占めしておきたくてすべて自分でやっているのかもしれません。
でも今現在、初めてご依頼を受けて新しい挑戦ができることもまた、面白く感じています。

最後に私が作詞に当たって最も影響を受けたであろうアーティストの対談を載せておきます。

声優であり歌手でもある坂本真綾さん、作詞家の岩里祐穂さん、そして対談にはいらっしゃいませんが作曲家の菅野よう子さんです。アニメソングが好きな方であればその名を知らない人はいないと思います。このお三方で数多くの名曲を生み出しています。
この曲が一番有名かなと思います。↓

カードキャプターさくらOP『プラチナ』。
技術的にも凄まじいものが詰め込まれています。
「歌うように 奇跡のように 想いがすべてを変えていくよ♪」
私の好きな歌詞です。
作曲に関しても菅野よう子さんは数多くのCM曲なども手掛けていますので、一曲も聞いたことのない日本人は存在しないのではないかというくらいスゴイ方です。
対談に出てくる『ユッカ』や『風が吹く日』も私の大好きな曲です。
機会がありましたらぜひ聞いてみてください。

次回予告

次回は【歌詞編②】として、コンセプトと構成について掘り下げていきます。
【作曲編】でもコンセプト→構成という順番で書きましたのでそれに沿って具体的に自作曲を例に取りながら書いていこうと思います。
次回もよろしくお願いします。
Thank you for reading!


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