親子代々教師の家庭はワンオペ育児も引き継がれる問題
NHKあさイチの、「子どもの部活問題」を見て、父のことを考えた。
父は、体育教師で柔道部顧問。
子どもの頃、父と一緒にいた記憶がはっきりとあるのは、元日とお盆休みだけ。お盆は毎年、家族で父の田舎の宮崎に帰っていたのでよく覚えている。
夏休み・冬休み関係なく、部活の合宿で泊まりこんでいたため、長期休みは父に会いに学校に遊びに行っていた。
もちろん母は、ワンオペ育児。
私だけでなく、双子の弟たちもいた。今考えると、相当大変だったはず。
週末はいつも、近所に住む母方の祖母や伯母と一緒に出かけた。
父はやがて、生徒指導を任されるようになり、夜の警察からの電話で飛び出して行くようになった。補導された生徒を迎えに行くためだ。
父は仕事に誇りを持っており、時間外労働をいとわなかった。
母は、結婚するとき、父の先輩たちに
「シングルマザーになると思っときや」
と言われたという。
子育てを始めて、それを実感したそうだ。
「イクメン」なんて言葉がなかった時代、「子育ては女の仕事」と、母は実家に助けられながら、がんばった。
子どもの頃、そんな事情を知る由もない私は、家でいつもイライラしている母にかまって欲しくていたずらや嘘をくり返し、思春期に入ると母と一切口を聞かない、長い反抗期を過ごした。
父は良い教師であり、今も良い父親であるが、果たして良い夫だったのだろうか。
あさイチで、大吉先生がコメントしていた。
「言葉は悪いですけど、顧問の先生が、自分の子どもをほったらかして他人の子どもの面倒だけを見るというのは……」
しかしまさに、それが我が家の姿だった。
ときは流れ、父の背中を見て育った双子の弟たちは、ふたりとも教師になった。どちらも、柔道部顧問をしている。
ひとりは結婚し、今年子どもが生まれた。
弟の奥さんは、産後ひと月を実家で過ごし、4月から夫婦と赤ちゃんでの生活が始まっている。
4月、教師にとっても忙しい時期だ。
弟は今年度から、家から1時間半かかる学校へ赴任となった。
この赴任先も、4月の当日に教えられ、そのまま地図を見ながら学校へ挨拶に行くという。
父の時代から変わらず、弟にも週末の休みはない。
先日、弟が修学旅行のつきそいで泊まりだというので、奥さんと赤ちゃんのいる家に遊びにいった。修学旅行当日は、始発電車がない時間に出なければいけないので、同僚の車に乗せてもらったという。(車がなければ泊まるつもりだったそうだ。もちろん自費で)
「部活のハードワークで体を痛めてるんですけど、病院に行く時間もなくて。心配してるんです」
弟は、父の背中を見ているから、この生活がふつうだと思っている。
土日休み、定時上がり、有給をとって子どもの行事を見に行く、なんて概念はうちにはない。
そういえば、運動会に父がいたことは、なかった気がする。父不在の風景が当たり前すぎて、なんとも思わなかったけれど。
ちなみに、弟の奥さんは、やはりハードワークの介護業界出身。だから、弟の献身的な働きぶりも理解しつつ、長時間労働の問題も認識している。
企業のブラック労働問題は、どこかで過労死が起こるたびに問題視され、少しずつ変化しているように見える。(亀の歩みだが)
しかし、お年寄りのケアをする介護職、子どもを預かる保育、そして教職。献身的に働くことが良しとされ、私生活より仕事に身を捧げることを求められてしまう。そういえば、母は元保育士だった。
親が教師で、自分も教師になる人はけっこういるはずだ。(私も、日本語教師という仕事をすることに何の不安も抵抗もなかった)
教師の仕事自体は、やりがいがあるし、それに生涯を捧げてきた父を慕ってくれる人は多く、私も尊敬している。
しかし、教師の労働環境が良くならない限り、家族のワンオペ育児は引き継がれていってしまうのだろう。
あさイチでは、部活動での教師の負担を減らすため、週末の活動や遠征の付き添いまで、父兄がおこなう学校の話が紹介されていた。
部活をがんばりたい生徒と、教師のワークライフバランスの両立は、不可能ではないはずだ。
もう、そんな時代なのだから。
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