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この瞬間に見たいものを見る。「私とフィギュアスケート」の第2章。

フィギュアスケート界では、シニアのGPシリーズスタートもまだの、10月半ば。

それなのになんなんでしょう、心のどこかで感じてしまう、「あー、今シーズンももう追いつけてない。がっくし」的な気分は。

こんな風に感じるようになったのは、多分ここ8年くらいのことのような気がします。多分、YoutubeとかSNSがぐいーんと普及して、日常的にスケート動画に触れられるようになったから、なような。

昔は、GPシリーズすら全然見ていなくても平気でした。っていうか、だいたい、見る術がなかったんです、GPシリーズ。

2002年ころは、まだ民放局がGPシリーズを放映しておらず、NHKがNHK杯(ほぼ常にGP6戦目だった)前に、「ここまで5戦の注目選手たち特集」くらいの1時間ほどの番組で、男女シングル、ペア、アイスダンスのトップ選手たちのフリーのみを放送するくらい。だいたい各カテゴリー3~4選手(組)。あ、日本選手に関しては、ショートプログラムを流してくれることもありました。だから、それをかぶりつくように見ていました。スポンジのような吸収力で、すべてを記憶する感じで。

それが、当時のMaxでした。

そのうちに、「GPシリーズ前半戦(/後半戦)ハイライト」的なダイジェスト番組(NHK)になって、それまでの2倍くらいの演技を見られるようになりました。録画したビデオ(ビデオの最後の時代でした)を巻き戻しては、本当に毎日のように見ていました。余裕ですべてを記憶できる量だったので、当時のいろんなプログラム、結構振付け覚えているし、多分結構踊れると思います。アナウンサーのコメントとかも暗記しちゃっています。

フィギュアスケートが日本国内で人気になってくると、GPシリーズは、民放局でたくさん放送するようになり、今では4カテゴリー全員のすべての演技にくわえて、Jr.GPの4カテゴリーすべてが見られちゃったりします。すげー!

時を同じくした2010年前後くらいから、「Youtubeで動画を見る」という時代に入っていきます。

これ、ほんとうにうれしかったんです。

だってそれまでは、昔の五輪チャンピオンの映像を見たい、と思っても、映像がないわけだったから。ときどき、「ここからダウンロードできますよ」というところに出ていたりしていても、DLに30分とか40分とかかった上に、PC上で3×2センチくらいのちいっさい映像で。でも、それすら貴重で、誇張じゃなく胸躍るくらいうれしかったんだけど、それが、昔のものから最新のものまで、こんなに簡単にいろいろな演技が見られるようになったんですから、うれしいに決まっています。

そしていまや、チャンピオンズシリーズやJr.GP、ロシアの国内のテストスケートの様子とかまで、PCで、スマホで、ちゃちゃっと検索すれば、瞬時に見られるようになっています。「見ようと思えば見ることのできるスケートの動画」の数が、飛躍的に伸びました。

多分、そのあたりから、苦しくなってきたんです。

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シェア動画のサイトの普及とともにSNSも普及してきて、まだ見ていない動画について「この演技、すごかった」とかいうツイートを見るたびに、「ががーん、まだ見てない」という焦燥感に駆られるようになりました。

そうして、慌ててその動画のリンク先に飛んで演技を見るのですが、「これで、追いついた」というような気持ちになるだけで、心底演技を楽しめていなかったように思います。

秋に入ると、CS放送まで含めたら毎日のように新しいスケート番組が放送されるので、とにかく録画予約に追われ、でも、毎日3時間とか録画したものは、毎日3時間見ないと追いつかないわけで、見ていない番組が100時間単位で増えていき……となるともう、それらを再生したいという気持ちにもなれなくなっちゃうんですよね。しかも最近はHDDの容量もたいへん充実されているので、ものすごい量の未見のスケート番組が、テレビの下の黒光りする物体の中にひっそりと存在しているわけで……日々、気持ちが重くなっていくわけです。

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スケートを見はじめた頃のことを思い出してみました。

あの頃は、見ることのできるスケート情報が限られていたので、「コンプリート」できたんですよね。日本国内で放送されるスケート関係の映像をすべて見ることは、そんなに大変なことでもなかった。

新聞のラテ欄に「躍進のフィギュア」というような番組を発見し、情報番組にフィギュアスケートが取り上げられるなんてと大喜びで録画予約し、帰宅後すぐに再生したら、人形のほうのフィギュアだった、なんてこともありました。

そのくらいだったから、オンエアされたスケート番組をすべて見て、さらに何度か繰り返して見ることは十分に可能でした。

でも、今、それはちょっと難しいです。(もしかしたらすべてを見ることは物理的には可能なのかもしれないのですが、)生活が立ち行かなくなるくらいの量の映像が、簡単に見られます。これは、「コンプリート(しかもそれらを繰り返し見る)」な年月を繰り返してきた身には、ちと辛かったりします。

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スケートを見はじめた頃のことを、もう一度思い出してみました。

最初はひとりでテレビの前で演技を見ながら、「この腕の角度、いいねえ」とか、「ルッツの、左足の踏み込みがたまらないねえ」とか思うのが楽しかったんでした。まあ、今も同じようなことにわくわくしているわけなんですけど、まだインターネットも普及していなかったから、そうしたものは、ひとりで完結する喜び、でした。フィギュアスケートがマイナーで、なかなか身のまわりからの賛同が得られず「なんでフィギュアスケート?」って言われたりしていた日々は、「私が好きだから、見る」というスタンスでいるしかなかった。周りの情報に揺れる、ということが、なかった。そんな時代でした。そして、それは、とても楽しかったんです。

そうやってあの頃を思い出すと、フィギュアスケートを見るのって、もっと個人的な喜び重視でいいんじゃないかな、と思ったりします。純粋に、「私が好きだから、見る」っていう。

毎日3時間スケートを見られる人はうらやましいけれど、今の私には残念ながらその時間がありません。それならば、私なりのスケートの楽しみ方で進んでいこうという感じです。

だから、まだGPシリーズも始まっていないのに「追いついていない」って思うのは、今シーズンからやめました。いや、「ああ、追いついていない」という気分になってしまいそうになる時はあるんだけど、そうじゃない、と強く思うことにしました。

それからもう1つ、「時系列で見たい」っていうのも、やめました。この瞬間に見たいものを見る。もちろん、ツイッターとかで「これはすごかった」というものは、見ちゃいます。だって、見たいから。でも、時系列を最重視すると、いろんなものを保留にせざるを得ず、ますます立ち行かなくなってしまうんですよね。

そんな風に意識を切り替えて、1か月半くらいが経ちました。現在のところ、Jr.GPもほどほどしか見られていないし、チャレンジャーシリーズも全員観戦にはほど遠いのですが、落ち着いた気持ちですごせています。「この瞬間に見たいものを見る」っていうの、とっても大事だな、と。そして、その「見たいもの」は、他の人の感覚に左右されないでいくのがいい、と。そもそも、「見たいもの」って、あまり他の人とは共有できないものだったりするのかもしれません。

そうやって、「私とフィギュアスケート」ってものを育んでいくの、楽しいだろうなあと思います。そういう意味で、今、「私とフィギュアスケート」の第2章に移った、そんな思いがしています。

肩を組んで応援歌を歌ったり、「ニッポン、チャ、チャ、チャ」とかって応援したりするスポーツではないフィギュアスケート観戦って、そんな風に、結構個人的なものなんじゃないかな、と最近とみに思います。

#フィギュアスケート #スポーツ #観戦

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