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「連弾の春」一首評、というか好きな歌の好きなところを書き連ねる

芍薬さん(@yuritanyogini)と天田銀河さん(@tancaloid_ginga)のネプリ「連弾の春」を読ませていただきました。真冬に比べ湿度の高くなった春の空気を感じさせる、統一感のある素敵なネプリになっています。【おまけ】としてQRコードから読める秘密の連作もあるのが、仕掛けとして楽しいですね!お二人の歌から一首ずつ引かせていただき、そこから膨らませた勝手な想像を書いてみたいと思います。


ハンドルの握り方から好きになるその鼻筋の向こう、三日月 /芍薬

運転中の横顔を助手席から見られるのはこそばゆい。見ている側も、ずっと見つめているのは少し憚られる、かもしれない。それでこの歌の助手席の人が、ハンドルを握る手の次に目をむけたのは運転者の向こう、窓の外にある三日月だった。運転者は三日月のようにすっと流れる、きれいな鼻筋をしているのだろう。おそらく夕方から夜にかけてのドライブで、三日月が沈むころにはまた明日ね、ありがとう、と別れるくらいの淡い関係を想起させられた。

羽化をしたばかりの翅の不自由さであなたを抱いたあの雨の朝 /天田銀河

羽化直後の昆虫の翅と、乾いた翅は、おなじものなのかと思うほど色もかたさもまるで異なる。広がり始めたばかりのやわらかい翅は、じれったほどゆっくりとしか動けない。そんな弱さを持ったままひとと関わる危うさが美しさにつながっている。雨の朝なら硬く乾くにも尚更時間がかかるだろう。七七のア音の連続があかるく、透明な空気を感じさせて清々しい。


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