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ずっと心に残っていること

 友人Aとインターンシップのために上京したときの話。

 インターンシップとは言っても名ばかりで会社の見学を半日してから残りは観光したからほぼ旅行だった。見学が終わって会社の偉いさんと飲み会に行くことになった。Aは年上、特に役職のあるような人になぜか気に入られることが多かった。お酒に強くて酒好きのおじさま達は、その飲みっぷりに感心する。

 でもその日はいつも以上に飲んでいた。だから私はほどほどにしておけとラインを打つ。だけどAはそれに目も触れず飲みまくった。終電の時間が迫って、もうそろそろお暇しないといけない時間になってもまだ飲んでいた。それがのちに事件の引き金になってしまう。

 ギリギリまで飲みまくったAを連れて駅に向かう。歩いてたら絶対に間に合わない。早歩きと小走りを組み合わせて終電の2分前に間一髪で到着。たらふく飲んだ後に身体を動かしまくった私とAは気分が悪くなっていた。終電で席は空いていたからお互いに距離を置いて反対側に腰を下ろした。

 しばらく経ってAを見ると、Aの隣に座っていた乗客と何だか揉めているようである。何だろうと見ているとAは嘔吐していた。そのとき、私は何もできなかった。まるで他人のようにAとは反対方向を見るので精一杯だった。ハンカチやらティッシュを渡すべきか迷う。傍観者になってしまう自分とあれだけ警告したのに飲みまくったAを責める気持ちが頭の中を駆け巡った。

 あのとき私は何をするべきだったのだろうか。今でも悩んでいる。答えも見つかっていない。あの一件があってからもAとは普通に接していた。だけど私のなかでどうしようもない気持ちがずっと残っていて次第にAとは距離を置くようになった。

 あれほどまで一緒に過ごしていたのが嘘のように大学を卒業してからは一回も連絡をとっていない。あのときのどうしようもない感情を思い出したくなくて避けているのかもしれない。いつかこれを消化できる日は来るのだろうか。

 

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