コロナ後の【反動需要】に備えよ -- 突然の強い需要の追い風で転ばないために、「今」すべきこと

ワクチン接種と反動需要

ついに東京都では4回目の緊急事態宣言が発出、僕ら外食業界にとっては依然として苦しい状況が続いています。とはいえ一方ではワクチン接種も着実に進み、いよいよアフターコロナも視野に入ってきました。
飲食店の皆さんも、引き続き厳しい状況はありつつも、少しずつ将来に目線を向けつつあるのではないでしょうか。

そこで、アフターコロナの日本の外食業界を示唆するかのような記事がありました。

この記事は、一足先に需要の戻ったアメリカにおける飲食店の雇用状況を伝えてくれています。
詳しくはリンク先をお読みいただくとして、簡単に概要をかいつまんで整理すると「多くの飲食店で従業員の採用が進まず、営業に支障が出ている」ということです。

何が起きているのでしょう。

先日ある大手HR系の会社の方とお話しする機会があったので質問してみました。曰く、

「コロナ禍の一年で、外食産業から多くの人材がコールセンターやECの配送センターなどの他業種に流出してしまった。それらの業種では、飲食店よりも待遇が改善されている業界も多い。よって例えアフターコロナで外食需要が戻り、雇用が生まれても、彼らのうち一定数は外食産業に戻ってこない可能性が高い」

ということらしいのですね。

これはかなりやばいのでは?

そもそも、コロナ前を思い返せば、日本の飲食店の人材不足は米国とは比較にならないくらい厳しいものでした。しかし日本よりマシだった米国でこれです。日本はどうなってしまうのでしょう。

たしかにこの一年はコロナ禍による売上減少があまりに深刻だったため、人手不足の声を聞くことはありませんでした。しかしアフターコロナでは、以前の「あの」人手不足が戻ってきます。いや、コロナ前よりもさらに深刻な事態になる可能性が高まっていると考えるべきです。

コロナが収束したら、おそらくこれまでの鬱憤を晴らすかのように多くの人たちが飲食店に繰り出すことは間違いありません。コロナの「反動需要」は、想像を超える勢いでやってくるはず。しかし一方で、かつての人材は戻ってきません。

つまり、飲食店は「コロナ前を超える需要」を「コロナ前より少ない人員」で迎え撃たねばならなくなるのです。

人手不足が再び深刻な経営課題となる日

需要が戻れば、一斉に求人が始まります。飲食店は、より目立とう、より広くリーチしようと競い合い、広告単価は高騰していくでしょう。一人でも多く応募を得るために、時給も上げざるをえなくなるでしょう。
それでも、応募ゼロという状況が多発します。実際アメリカでは一足先にそうなっていて、マクドナルドですら、面接を受けてもらうだけで50ドルを支払う施策が必要な状況なのです。

とはいえ、採用コストをかけ、時給を上げようと思っても、そこには別の課題があります。それは、飲食店のキャッシュフローの問題です。
この一年で、大半の飲食店は与信限度額ギリギリまで借り入れを増やしました。その返済が、そろそろ始まる頃です。
かつてと同じように、お店にお客さまが戻ってきたとしても、飲食店側のキャッシュフローは大きく変わってしまっています。ですから、人手不足を「お金で解決する」ことにも自ずと限界があります。

店内はお客さまで溢れ返っている。
あちこちで手を上げて「すみません」と店員を呼んでいる。
しかし、現場は人手不足によって全く回っていない。多くのお客さまが放置されている。
結果、お客さまはお店の対応に不満を感じたまま、お店を出ていってしまう。そして二度と戻ってこない――

想像するだけでぞっとする光景です。しかし、あちこちのお店でこうした光景が頻発することは、ほぼ確実にやってくる未来だと考えるべきでしょう。

だから僕らは、足元の苦境を乗り切るための努力を続けながら、近いうちに必ずやってくる「反動需要」への備えを進めなければなりません。

もちろん、反動需要は永遠に続くわけではなく、一時的なもので終わる可能性は高いでしょう。しかし人手不足そのものは、少子高齢化などの長期トレンドが変わらない限り、解消することはありません。短期的にも中長期的にも、僕らは人手不足と向き合い続けなければならないのです。
街に人が戻ってくるまであと少し。それまでに抜本的な対策を講じなければなりません。

では僕らに何ができるのでしょうか。

打ち手は限られている

少子高齢化に加えて、他の産業に人材が流出してしまっているのですから、そもそも人材市場のパイが縮小している状況です。採用力強化で解決しようとしても、有効な選択肢はあまりありません。採用面で考えうる手法としては、「働き方の多様化」でしょうか。つまり、タイミーに代表されるような「ギグワーカー」を積極的に起用して戦力化する方法です。

と言っても、ギグワーカーの戦力化もそう単純な話ではありません。単発・スポット・短時間のアルバイトを確保できたとしても、テーブル番号やメニューを全く覚えていない人にやってもらえるホール業務はそう多くないからです。結果的に皿洗いくらいしかやってもらえないようでは、課題の根本解決にはならないでしょう。

よって、ギグワーカーを戦力化するには、現場のオペレーションを大きく変えることが前提になりそうです。例えばセルフオーダーの導入も有効策の一つです。セルフオーダーによってお客様が自分でオーダーできるようになれば、スタッフはメニューを丸暗記する必要がなくなり、ギグワーカーでも接客できるようになるかもしれません。すべてのメニューは覚えていなくても「私、今日のまかないでこのメニューを食べたんですけど、すごく美味しかったのでおすすめです!」というトークさえできれば、ホールスタッフとして活躍する姿をイメージできます。

根本的な解決方法はあるのか

とはいえ、ギグワーカーだけで人手不足が解消できると考えるのも楽観的すぎるでしょう。人手不足が深刻になれば、ギグワーカーだっていずれは争奪戦が始まります。では、この人手不足を根本的に解決するにはどうしたらよいのでしょうか。

僕が考える限り、根本的な対策はひとつしかありません。
それは「人を増やさなくても回るオペレーションを作る」こと。これに尽きます。

これまでも散々語られてきたことですが、そもそも飲食店はありとあらゆる業務を「人力」に頼り過ぎなのです。もちろん、人のぬくもりに価値があることは事実です。しかし、それが一種の大義名分となり、人がやらなくてもいい仕事まで人がやることが美学とされてしまう傾向はないでしょうか。「非効率=おもてなし」だと誤解していないでしょうか。合理性より精神論が優先される状況を、今こそ変えるべきです。

じゃぶじゃぶと人力を使って店鋪を運営するような「贅沢」はこれからはできなくなります。
これから僕らが考えるべきは「人がやらなくてもいい業務は思い切って機械に任せていく」こと。飲食店の現場仕事には、人がやるよりも機械に任せたほうがうまくいく仕事が、思った以上に多く存在しています。思い込みを捨て、今までの「当たり前」を疑ってみれば、ホールの業務は効率化のネタの宝庫です。

巷では「AIが人間の仕事を奪う」と危機感を持って語られることが多いのですが、アフターコロナの飲食店においてはまるで事情が異なります。むしろ「機械によって人間の仕事を減らしていかなければ、お店が立ち行かなくなる」と考えるべきでしょう。

しかしだからといって、何でもかんでも機械にしてしまったら、飲食店は単なる「自動販売機」になってしまうのも事実。「デジタル化したらつまらないお店になってしまった」では本末転倒です。思い切ったデジタル化、機械化をするなら、お店の効率化と同時にお客さまの体験価値も引き上げていくようなアプローチでなければなりません。
では、飲食店の魅力を維持、いやむしろこれまで以上に高めながら、同時に飲食店経営を人力依存から脱却するためにはどうしたらよいのでしょう。

トレタの取り組み

僕らトレタは、この一年、その答えを出そうと準備を進めてきました。トレタを「予約の会社」だと思っている方は多いかと思いますが、もはやトレタは予約の会社ではありません。もちろん予約は大切な主力事業の一つですが、しかしこの一年で、僕らはアフターコロナにおいて飲食店のサバイバルに必要な武器を提供できるフードテックの会社へと、脱皮を進めてきました。
僕らが実現しようとしているのは、「業務の最小化」と「顧客体験と顧客満足度の最大化」の両方を同時に実現できるような、そんなサービスです。

いくつか、例をご紹介しましょう。

トレタ予約番

飲食店の電話業務を完全にゼロにしながら、顧客の利便性を圧倒的に引き上げる電話予約のAIサービス「トレタ予約番」
お店の中で最も接客スキルが高く、時給も高い店長クラスの人が電話に張り付いていなければならない状況は、もはや持続不可能だと僕らは危機感を持っています。それを根本的に解決するために、電話予約の対応を任せられるAIを開発しました。開発に足掛け3年をかけていることもあって期待した以上のクオリティに仕上がっており、一足先にお試しいただいている店鋪さまでは、すでにアルバイトスタッフを超える実績も記録しています。

レセプションに貼り付けていた人件費が削減できるのはもちろんですが、何より、レセプションという高い接客スキルを持った人材が直接お客様の接客に回れることのインパクトは計り知れません。すでに、カジュアル業態だけでなく高級業態でも導入を検討するお店が増えている実感もあり、期待した以上にスピーディに普及が進みそうな予感もあります。

最近は、お客さまも飲食店が大変なことはよくご理解されていますので、むしろこういう工夫を歓迎・応援してくれる方も増えているのでしょう。そういう意味では、コロナ禍は外食DXの追い風という側面はあるのかもしれません。僕らも引き続き、店鋪さまの負担軽減と、お客さまの利便性向上のためにサービスを磨き続けます。

トレタO/X

続いては、「トレタO/X」。オーダーテイクやお会計の業務をゼロにしながら、同時にお客さまの外食をワクワクする体験に高めていくことを目指した、ハイエンド型のセルフオーダーサービスです(O/Xとは、Order ExperienceとOperation Excellenceの略) 
こちらも本稼働を開始しています。注文が楽しくなるこだわり機能はもちろんのこと、決済機能まで統合していますので、店内での煩雑なお会計業務をゼロにしながら、お客さまには「レジスルー」という新しい体験も実現しました。

トレタO/Xが実現するのは、単なるコスト削減ではありません。業務を大幅に効率化しながら、お客さまにはこれまでの常識を超える「WOW」な体験を提供することがトレタO/Xの真髄。今回は詳しくお伝えできませんが、それはまた別の機会にご紹介したいと思います。

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なお、O/Xのサービスサイトはまもなく公開という状況ですが、すでに一部で先行して販売・稼働もスタートしており、ワンダーテーブルさま、エー・ピーホールディングスさま、ダイヤモンドダイニングさまでご採用いただいております。また後続の案件も決まりつつあり、大きな手応えを感じています。(一部メディアでも少しずつ取り上げられ始めているようで、本当にありがたい限りです)

トレタが実現する「3つのレス」

従来の予約サービスや上記の新サービスを通じて、僕らトレタが実現しようとしているのが3つの「レス」です。フォーン(電話)レス、オーダーレス、キャッシュレス。ホールスタッフの業務の中でも、最もストレスフルなのが電話対応とオーダーテイクとお会計。僕らはその3つを「レス」することによって、飲食店の人力依存からの脱却をお手伝いします。これはひいては、現場スタッフの皆さんが「ホスピタリティ」に専念できる環境を作ることにも繋がります。

実際、僕らのサービスを導入いただいている店鋪さまでは、ホールスタッフを半分に減らすことも夢物語ではなくなってきました。そしてそれは単に飲食店の経営効率を高めるだけにとどまらず、現場スタッフの皆さんの労働環境を改善し、お客さまの心地よさや楽しさ、満足度を引き上げることも実現しています。

飲食店さまの真のパートナーとして

とはいえ、僕らのサービスを導入すれば自動的にそのような成果が出せるという単純な話ではありません。僕らのサービスはあくまでも「道具」にすぎないのであって、本当に大切なのは飲食店自らがオペレーションを、そして発想を変えていくこと。DX (デジタル・トランスフォーメーション)で大事なのは、「デジタル」ではなく「トランスフォーメーション (変化・変形)」です。

たとえば、世にセルフオーダーやモバイルオーダーのサービスは無数に存在します。しかしトレタO/Xも含めて「導入したら自動的にお店が変わる」というものは一つもありません。魔法のツールは存在しません。ツールの導入はゴールではなくスタートなのです。だからこそ、導入を一つのきっかけとして、腹をくくってお店を変えていくという取り組みが欠かせないのです。なので、トレタO/Xのすべてのプロジェクトでは、必ずトップマネジメントの方にコミットしていただいていますし、僕自身もトレタ側のプロジェクト責任者としてしっかり関わっています。

飲食店がアフターコロナに適応する過程では、痛みが伴う変化を受け入れねばならないこともあります。だからこそ、僕らも店鋪の皆さんと同じチームという覚悟で、膝を交えて徹底的に議論を重ね、試行錯誤しながら、メニューからオペレーション、トレーニングまで、ゼロベースで再構築に挑戦しています。これは決して簡単なことではありませんが、その分、やりきった先にはこれまでの飲食店経営の常識を大きく超える果実が待っている、そんな手応えを感じています。(そして、飲食店の方と一緒になって大きな挑戦をするのは、本当にやりがいがありますね)

コロナを経て、外食産業は大きなパラダイムシフトを迎えています。僕らは、僕らを信じてくれる飲食店さま、僕らに期待してくれる飲食店さまを全力で支援し、圧倒的な成果を出せる会社になっていきたいと考えています。

できることはなんでもやる

この一年のサバイバルの中で、僕が常に唱えていたのはこのひと言に尽きます。
できることはなんでもやる。
「予約」の中に閉じこもっていては、できることに限りがあります。飲食店にかつてないほどの変革が求められている今、フードテックの会社に最も求められるのは「なんでもやる」という覚悟なのではないでしょうか。従来の業務の枠組みの中で考えていては、トランスフォーメーションなど望むべくもないからです。
僕らは、コロナをきっかけに身につけたこのスタンスを、これからも持ち続けたいと思っています。

お。トレタ面白そうじゃん。

そう思っていただける方は、ほぼ全てのポジションで絶賛採用強化中ですので、お気軽にお問い合わせください。(特に何かを作り出したいという強い欲求を持っているエンジニアさんやデザイナーさんにとっては、どんどん新しいものを作る環境が整いつつあるので、とても楽しいと思います)

そしてもちろん、トレタのサービスに関心のある飲食店さまからのお問い合わせもお待ちしております!導入するかどうかはさておき、「詳しく知りたい」というレベルでも大歓迎です!

そんなわけで、一年を必死に生き延びてきて、トレタもそろそろ反転攻勢のモードです。

(2021年7月の創業8周年によせて)


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