藤巻伍(TMI総合法律事務所弁護士)

■専門分野:人事労務、スポーツ、ヘルスケア ■TMIにて、「働き方改革サポートデスク」…

藤巻伍(TMI総合法律事務所弁護士)

■専門分野:人事労務、スポーツ、ヘルスケア ■TMIにて、「働き方改革サポートデスク」の立上げ、運営に主体的に関与

最近の記事

これ以上ない明確かつ公平な選手選考

本日、2020年東京オリンピックのマラソン競技の代表選考レースである、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が行われた。 この大会で1位、2位に入った選手はオリンピックの代表に内定し、3位の選手はこれ以降の3大会で設定タイムをクリアしたものがいなければ代表に内定する、まさに結果がオリンピックの代表に直結する大会なのである。 これまでは、他の競技も含め、世界大会等の代表選手選考方法として、抽象的な基準が設定されていたり、選手選考委員会等で決定するといった、不明確又は透

    • 新在留資格「特定技能」、ついに始動(2)

      前回は、「特定技能」導入の背景について簡単に解説したが、今回は、「特定技能」の概要(上)を解説する。「特定技能」には、1号と2号の2種類があるが、まず1号の概要をメインで解説しつつ、その中で2号との違いに言及する。 ①目的:深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れること ②学歴要件:無し ③実務経験要件:無し ⇒専門的・技術的分野(例えば、技術・人文知識・国際業務)の在留資格とは異なり、学歴や実務経験は不要である。ある意味、

      • 新在留資格「特定技能」、ついに始動(1)

        今月1日、改正入管法が施行され、新たな在留資格である「特定技能」がついに始動した。 平成30年10月時点の日本における外国人労働者数は146万人を超えている中、「特定技能」による受入人数は5年間で34万5150人を見込んでおり、新在留資格「特定技能」の創設により外国人労働者がさらに増加することが見込まれる。 日本国籍を有していない外国人が日本に滞在するには在留資格が必要であり、しかも就労するためにはその中でも就労することが認められる在留資格を取得する必要がある。「特定技能

        • 皆が待っていた民事裁判手続きのIT化

          民事裁判手続きのIT化は、個人的には大賛成である。 これまで民事裁判手続きは時代の流れに逆らってアナログを貫き通してきた。書面の提出は、持参、郵送又はFAXによらなければならず、口頭弁論には原則として両当事者が裁判所に出向く必要があり、争点整理を行うための弁論準備手続においても相手方当事者が裁判所に出向かないと電話による出席が認められない。 民事裁判手続きのIT化により、弁護士が裁判所に出向く回数が減り、弁護士の移動時間の削減につながるとともに、企業が支払う弁護士費用を抑

        これ以上ない明確かつ公平な選手選考

          2週連続の重要判決、企業は同一労働同一賃金対応へ待ったなし

          先々週、先週と、同一労働同一賃金に関する重要な判決が下された。 1件目は、アルバイト職員に対して賞与を全く支給しないことが不合理な格差であると判断した大阪医科大学事件判決。 2件目は、契約社員に対して退職金を全く支給しないことが不合理な格差であると判断したメトロコマース事件判決。 最高裁の判断が示されたハマキョウレックス事件では賞与及び退職金が争点になっておらず、退職金については同一労働同一賃金ガイドラインでも考え方が示されなかったため、この2件の判決は業界内でも大変注

          2週連続の重要判決、企業は同一労働同一賃金対応へ待ったなし

          採用活動におけるHRテック(AI)の活用

          「HRテクノロジー」(HRテック)が日本において最も活用され始めてきている領域が採用分野であると言われており、すでに様々な種類のサービスがある。例えば、エントリーシートの選別を行うものや、会社と応募者との間のマッチング度合いの測定を行うもののほか、ビデオ面接の録画データを解析するものや、面接における質問事項を作成するものなどがある。 これまでは「ヒト」がエントリーシートや面接による応募者の選別や評価等を行っていたため、採用業務に膨大な時間と労力がかかっていた上に、必ずしも公

          採用活動におけるHRテック(AI)の活用

          いざ「働き方改革」元年へ

          日本経済再生に向けた最大のチャレンジとして始動した「働き方改革」。 政府は、昨年公表した働き方改革実行計画に従い、労働関連法令の改正をはじめとして、様々な改革を行っている。 しかし、「働き方改革」に対する会社の反応は様々で、積極的に「働き方改革」を進めている会社もある一方で、「働き方改革」に対して消極的な姿勢の会社も多数存在し、しかも、多くの会社は、法改正に対応するだけで満足しており、人事制度の根本的な見直しには至っていない。 各会社は、日本の人事制度が重要な転換期にあること

          いざ「働き方改革」元年へ

          企業成長を阻害しないパワハラ対策

          引用した記事にあるとおり、厚生労働省は、職場のパワーハラスメント(パワハラ)対策として、企業に防止措置を講じるよう法律で義務付ける方針を示した。防止措置としては、相談窓口の設置やパワハラをした社員の処分内容を就業規則に設けることや、相談した人らのプライバシーの保護などが盛り込まれる予定である。 これにより、すでに防止措置に関する規定が存在するセクハラやマタハラと同様に、パワハラについても対策を講ずることが法的に要求されることになる。 といっても、そもそもパワハラの内容がわ

          企業成長を阻害しないパワハラ対策

          「勤務間インターバル制度」導入に向けた留意点

          勤務間インターバル制度を適切に導入・運用していくことは実は結構難しい。 勤務間インターバル制度とは、勤務終了後、一定時間以上の休憩期間を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものであり、国際基準であるEU労働時間指令は、インターバルを11時間以上としている。 勤務間インターバル制度のメリットは、①退社時刻と出社時刻の間の一定の時間につき強制的に休ませることで長時間労働による健康被害を防ぐ点と、②限られた時間の中で業務に従事させることで生産性の向上につながる点に

          「勤務間インターバル制度」導入に向けた留意点

          「有給を取るか取らないかは労働者の自由」ではなくなる

          改正労働基準法の施行により、平成31年4月1日から、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうち少なくとも5日分を1年以内に与えなければならない。 つまり、年次有給休暇の取得を希望しない労働者に対しても、毎年最低5日間は年次有給休暇を取得させなければならないのである。 これまでは、年次有給休暇を取得するかしないかは労働者の自由であるとされつつも、事実上、年次有給休暇は有名無実化し、年次有給休暇の取得を申請しづらい雰囲気のある会社が多く存在しているが

          「有給を取るか取らないかは労働者の自由」ではなくなる

          有期労働者保護規定と上手に付き合っていくために

          現行法上、有期雇用労働者を保護するための規制は多く存在し、例えば、①雇止め規制、②無期転換権、③同一労働同一賃金等である(引用したニュースは①②に関連するものである。)。また、再来年の4月1日施行(中小事業主はその翌年)の法改正により、パートタイム労働法の適用対象に有期雇用労働者が含まれることで、行政による監督の下、同一労働同一賃金に関するより多くの規制の遵守が求められることとなる。 政府の狙いは、有期雇用労働者の雇用と経済の安定にある。会社としては、長期間の更新や無期転換

          有期労働者保護規定と上手に付き合っていくために

          「働き方改革と同一労働同一賃金」セミナーを終えて

          7月下旬~8月上旬に、弊所で「働き方改革と同一労働同一賃金」というテーマでセミナーを開催し、その講師を務めた。 有難いことに、当初想定していた人数の倍近くの参加申込があり、計4回開催し、計600名ほどのお客様(企業の法務部・人事部のご担当者が大多数)にご参加いただけた。 セミナーの内容は、労働契約法20条の解説、法改正の概要、労働契約法20条に関する主な裁判例の動向、同一労働同一賃金ガイドライン案の概要など、多岐にわたっており、非常に濃い内容のセミナーであった。 驚いた

          「働き方改革と同一労働同一賃金」セミナーを終えて

          「働き方改革」で勝ち組企業になるために

          「働き方改革」の大きな柱として、「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」と「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」の二つがある。いずれも法改正を伴うものであるが、法改正による変更は限定的であり、各企業は一刻も早い対応を求められている。 各企業が一刻も早い対応をすべき理由としては、労働生産性を向上させること、潜在的な訴訟リスクや行政等による処分を回避することも当然あるが、最も重要なものとして、人手不足の解消(有能な人材の確保)が挙げられる。 では、どの

          「働き方改革」で勝ち組企業になるために

          意外と知らない「同一労働同一賃金」の中身

          昨年の3月28日に「働き方改革実行計画」が公表され、政府が目指す様々な働き方改革の内容、目的等が示された。このうち、特に政府が重要視するのが、「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」である。今年の6月1日にハマキョウレックス事件や長澤運輸事件の最高裁判決が出たこともあって、「同一労働同一賃金」という言葉は、誰もが耳にしたことのあるフレーズとなった。もっとも、「同一労働同一賃金」という言葉が一人歩きしてしまい、必ずしも正確な中身を捉えられていないように思われる。 現行法に

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