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シンカ論:①「ハーフの子……広告と隠したかった欲望」

 わりと日常風景なのだが、とあるポスターが「炎上」したらしい。「銀座いせよし」という着物屋さんのブログ2016年6月20日分に掲載された、当時のポスターである。ちょうど3年前のキャッチコピーが、今バッシングを受けている。

「ハーフの子を産みたい方に。」

「着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。」

「ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる。」

 これらのコピーが炎上のターゲットになった。他に「スマホでしか撮らなかったことを、久しぶりに後悔した。」「着るという親孝行もある。」というのもあったのだが、それは別に問題ではない。普通に着物姿がスマホより上等なカメラで撮りたいほど素晴らしいというアピールと、成人式などでの娘の着物姿を喜ぶよき親のイメージであろう。ちなみに、このポスターは東京コピーライターズクラブ新人賞に入選している。

 しかし問題になった3つのコピーには共通点がある。「服飾を手段とする、女性の地位と財産への欲望に赤裸々にアピールしている」ということだ。「ハーフの子を産みたい方に」のハーフとは、どこの国の人とのハーフをも平等に指しているわけでは、もちろんない。有体に言えば、日本人女性の相当数が憧れる「金持ちの白人」とのハーフである。これは女性の「上昇婚志向」を遠慮会釈なく突いた表現なのだ。

「炎上」させた側の人々はこれに刺戟されたのである。このコピーを3年越しに「告発」したTwitterアカウントはこう言って非難している。

「私達はペットでも人形でもありません。この屈辱を想像出来ますか?もううんざりです。」

 誰がペットだとも人形だとも、ポスターは一切言ってはいない。しかしこの発言が20000以上のいいねとRTを集めているのである。「なんとなくけしからんっぽいもの」に対して「なんとなく非難っぽいこと」が書いてありさえすれば、その対応関係の確認などほったらかしでファボ&シェアされるというTwitter界隈の雑な感性がうかがえる。が、それはここでは措こう。

 さて、通常「この商品はこんなニーズに応えます」と広告することは、全く悪い事ではない。なのに確かに、この広告にはどこか露悪的なブラックジョークの雰囲気があるのも事実である。そう、女性が金持ち白人男を求めることは「悪」なのだ。

 なぜか。問題はここにある。

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