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【第1回】海外テレビシリーズの中のクソ野郎たち(ローマン・ロイ『Succession』より)

どうも。映画と海外テレビシリーズばかり観ている会社員のキャサリンです。毎週日曜日21時に更新してる海外テレビシリーズのnote、今週はこちら


「海外テレビシリーズの中のクソ野郎たち」


です。英語で言うところのa son of the bitchですね。私は主役だろうと脇役だろうと性別年齢問わず「クソ野郎」キャラがここ最近大好きです。もし現実にいたら絶対嫌なんですけど、フィクションだからこそ良いというか。しかも、「この俳優さん、絶対普段は猛烈にいい人のはず・・・」という方が全力でクソ野郎を演じていたりすると溜まらなく好きです。味わい深いクソ野郎が出てきたらすぐにメモっているので、私のスマホには「クソ野郎リスト」が存在します。それくらい大好き。

今回は、一人でクソ野郎をムフムフ愛でたところで、私自身が変態というか、クソ野郎レベルを上げるだけなので、世の中にもぶちまけていきたいなと思った次第です。日本語が読める世界の人たちの中で1人くらいに届けばいいや、くらいの気持ちで書いてますので、そこのところどうぞよろしくです。

ちなみに、ストーリーの核心には触れませんがネタバレは多少しますので。観ていない方は気を付けてください。ネタバレ極力せずに書こうかな~と思ったんですが、無理でした。

ということで!!!始めます~!記念すべき第1回は、昨年の夏アメリカでヒットしたドラマから大好きなこのキャラです。日本には昨年末上陸しまして、私の2018年のクソ野郎メモリーをしっかり締めくくってくれるにふさわしいクソ野郎です。


ローマン・ロイ(中の人:キーラン・カルキン)

もう、顔からクソ野郎な香りが漂いますね。いい感じです。お金持ちクソ野郎が飲みがちな(←偏見)マティーニが似合います。こちら、昨年のHBO新作ドラマ『Succession』(邦題はキング・オブ・メディアだったり、サクセッションだったり、メディア王~だったりコロコロかわってます。どれかにしてくれ・・・)のキャラです。キーラン・カルキン君は、この役でゴールデングローブ賞にノミネートしました。お兄さんであるマコーレ・カルキンはゴールデングローブ賞の中継で初めて弟がノミネートしてるのを知った感じでその日の彼のツイートはだいぶ面白かったです。「『Succession』って何?もっと彼からの電話に出るべきだった。今年のサンクスギビングは変な感じになりそう。」とマコーレも認識した作品、それが『Succession』です。

こちらがその一部始終ですが、キーラン君がめっちゃいい席だったので「レディ・ガガに何でツイッターで僕をフォローしてないのか聞いてよ」とかツイートしたり。仲の良さが伺えます。

で、そんな俳優一家に生まれたキーラン・カルキン君が参戦しているこのドラマは、左端の父親を超えようとするあまり眉間の皺まで似てきたようにも見えるケンダル・ロイ(中の人:ジェレミー・ストロング)がほぼ主役として繰り広げられる、巨大メディア企業の跡継ぎ争いドラマ。強烈な皮肉と、わざとらしいチープなカメラワークが多用されるので、ブラックコメディともいえると思います。アメリカで放送時も

全員クソ野郎しか出ないのに何で見続けてしまうのか


と、評判だったドラマです。そうです。メインキャラはほぼ全員クソ野郎です。それではさっそく予告を観てみましょう。

父親の座を狙う息子の一人って感じですね。ローマン・ロイはロイ家の三男です。この予告では、やんちゃで軽いっぽいけどそこまでクソではなさそうにも見えるので、どれだけクソなのかいかに記していこうと思いますよ。


①初登場シーンからクソ野郎の申し子

第一話冒頭、ある企業を買収しようとする副社長のケンダルが役員と会議中に、ひょっこりやってきたローマンの第一声

“Hey, hey, motherfucker.”(訳:ようようクソ野郎)

キーラン君はこの初登場シーンで、この役は自分の役だと確信したそうです(笑)実は、同ドラマのグレッグっていう役の予定だったそうですが、演じるには少し年齢が高いと思っていたキーラン君。この役はまさにぴったりだと確信したそうですし、テーブルリードの時にクリエイターのジェシー・アームストロングも「これだよ」と確信したとか。お言葉遣いがとにかく悪いです。

訳:見ろよこのクソ茶番!

とか言って、「何しに来たのかよ、お前」感抜群で会議室を去っていく初登場シーンは見ものです。セリフだけではなく合間に見せる、間やしぐさも軽いチャラいやんちゃっぷりがたまりません。


②クソ野郎は椅子にちゃんと座らない

これ、こちらの記事にあって、確かに!と私も観ていてずっと思ったんですが、全然ちゃんと椅子に座りません。

この記事にもあるとおり、彼は椅子というものの働きを知らないのではないか、と思うくらい「椅子」がそこになるけどちゃんと「椅子」に座ることは少ないです。会議の時と食事の時くらい?クソ野郎の鉄則ですね。椅子には座りません。でもそれが非常に似合います。なるべく椅子に座らないでほしいとさえ途中から思えてきますね。椅子にちゃんと座るとローマンらしくないと感じてきます。そうなってきたらもう、あなたもクソ野郎好きの仲間入りかもしれません(違)


③歩く訴訟

正直、椅子に座らないとか言葉遣いが悪いとか、そういうクソ野郎はまだ・・・まだ多少マシです。やはり本物のクソ野郎は犯罪をするかどうか、その一線を越えるかも重要だと思いますね~。で、ローマンは犯罪をするかというと「スレスレでしない」タイプです。お?じゃあ、クソ野郎ではないのでは、よく周りで聞く「あの人、言葉遣いはああだけど根はいい人なのよ」っていうパターンでは?と思うことでしょう。違います。たまたま、生きながらえているだけです。

(兄ケンダルから、自分の元で親の会社継がないかと打診されて、
一瞬考えたフリして速攻兄を罵倒するローマン。間が絶妙です)

兄ケンダルからも「お前は歩く訴訟か」と突っ込まれるくらい、一言多いうえにその多かった一言がことごとくハラスメントです。よく今まで社員の誰にも訴えられなかったなと思います(この辺りは本編観てもらうと良いかと。彼らの父ローガンが気づいた帝国の内情というか)。彼にはコンプライアンスも何もあったもんじゃなくて、キーラン君もローマンについてインタビューで以下のように言ってます。

“You can be a total idiot, a fuckup—doesn’t matter. Keep dropping out—doesn’t matter. You can say whatever you want, do whatever you want—doesn’t matter. Roman can slap his sister in the face, and that’s O.K. ‘What are you going to do? Sue me?’”(訳:完全なバカなんだ。失敗した、問題じゃない。脱落し続ける、問題じゃない。言いたいことは何を言ってもいいし、やりたいことは何でもやる、問題じゃない。ローマンは妹の顔をビンタしても、別に大丈夫。「(妹に対して)どうするんだ?訴える?」)

ジャイアンはまだ友を敬ったりしますが、ローマンにはそういうの皆無です。真のクソ野郎です。問題が出ても、最終的には三男らしく家族に何とかしてもらってる感じです。それがまた良い。

最後に:そんなクソ野郎はどうなる?

このドラマはほぼ全員がクソ野郎な中、今回紹介のローマンは群を抜いて救いようのないクソ野郎です。巨大メディアの創業家に生まれ、何でもやりたいことはやってきて、父親に一番甘やかされた三男。ミレニアル世代の気質もあり、あぶなっかしさと同時にいい年こいてナイーブさもあります。

このドラマは、創業系の椅子取りゲームを「どんなに立地でもその現場での駆け引きは決してスマートなものでもなく、彼らがどうしても背負うものにどうにも縛られる」という描き方が秀逸です。特に最終話の着地の仕方は、中盤では考えにくい展開。ガーディアン紙もめったに付けない★5つ評価でした。

どんなにクソ野郎でも、その椅子を争える位置にいるローマン。会社でやっちゃダメなことの大半を犯しているローマン。とりあえずなにかあったらすぐググるローマン。彼は果たして後継者の座を奪えるのか、注目です。

完全に、近年のキーラン・カルキン君の役の中でも一番ハマっているといってもいいローマン役。俳優一家っていう特殊な環境に生まれ、兄が世界で有名になる姿を横で観て育ったキーラン君。「演技はしたくてもセレブにはなりたくない」「マコーレとは違う1人の人間なのに、マコーレの兄弟としてずっと言われてきたこと」っていうキーラン君自身の人生も重ねたうえでの演技は必見です。

ちなみに、私は勝手にカルキン君兄弟たちはあまり仲良くないのかも?なんて思ってたんですが、「子役のころから注目されて生きてきた」同じ境遇は兄弟しかいないから、とても絆が深いそうです。さっきリンク貼ったVanity Fairのインタビューでも、彼らの父キットが子供たちにしたこと、有名税として言って終わらせられない見知らぬ人たちからのプライバシーもマナーも何もない扱いはびっくりというか。ニューヨークの小さな部屋で両親と7人兄弟で暮らし、兄のブレイクを皮切りに、人生が大きく転換したキーラン君。映画と舞台で長らく活躍し、近年テレビシリーズにも出演し始めた彼のこれからの活躍にも期待次第ですね。最後に彼の言葉を置いて、クソ野郎を演じている彼はきっと幸せなんだなぁ~と思って終わりたいと思います。

“I’ll take happiness over success,” says Kieran. “If I’m miserable, what’s the fucking point?”(訳:僕は成功以上に幸せをとりたい。もし僕がみじめなら、いったい何の意味がある?)

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