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【第2回】海外テレビシリーズの中のクソ野郎たち(ダン・イーガン『VEEP/ヴィープ』より)

どうも。映画と海外テレビシリーズばかり観てるただの会社員キャサリンです。博多に住んでいるので、本日は投票日でした(統一地方選)。誰に入れるか考えていた時に、よくわからないのでちゃんと政策とか読もうと思い、一応読み込んで消去法で選ぼうと思ったら、全員消去されてしまいました。もちろん何とか捻り出して投票してきましたけども、毎回思いますがあの投票ボックスに入った時の緊張感と孤独と何とも言えない責任感はなんでしょうか。ハタチになった時に一番うれしかったのは、投票権があることだったな~と投票の度に思うわけですが、誰かの名前を紙に書いて箱に入れるという行為はとてもシンプルなのに、ものすごく重たく感じる今日この頃です。

ということで、毎週更新しているnote、今日はそんな1票を投じた先で働く人たちを描いた海外テレビシリーズからクソ野郎を1人紹介しようと思います。国は違いますけど、きっと日本にもこういう人いそうだよね~と(笑)


ダン・イーガン(中の人:リード・スコットさん)

はい、イケメンです。でもマジでクソ野郎です。
今年最終シーズンを迎えた、エミー賞常連ドラマ『VEEP/ヴィープ』の主要キャラクターです。『VEEP/ヴィープ』は、副大統領セリーナ・マイヤーズを主人公に、彼女とそのスタッフたちが織りなす政治コメディとして長年人気を博し、最も実際の政治劇に近いともされてきました。セリーナを演じたジュリア・ルイス=ドレイファスはエミー賞コメディ部門最多受賞を記録、コメディ分野でのアカデミー賞ともいうべきマーク・トウェイン賞も受賞しています。日本ではあまり知られていないドラマかと思いますが、アメリカではコメディドラマの一時代を築いた作品として、有終の美を飾っているところです(現在最終シーズン絶賛放送中)。

そんな作品の中で、予告にもある通り「”キザ”な次席報道官」として登場するのが今回のクソ野郎ことダン・イーガンです。キザっていうよりも、本当に心から「コイツ最低だな(笑)」と思うくらいにクソです。演じたリード・スコットさんも色んなインタビューで、ダンを演じることについて質問されたら、必ずといっていいほど、

He is such a dick.(彼って嫌な奴だよ)

って言ってます。たぶん日本ではマーベル映画『ヴェノム』で主人公の元カノの今カレ(かなりな紳士)として登場していて名前も同じダンなので、この役を戸惑う人もかなり多いのではないでしょうか。ただ、アメリカでは確実にVEEPのダンのほうが定着してると思われます。最終シーズに向けて特集を組んだEntertainment Weekly紙の表紙でもこれです(笑)

0.1秒後にはF*** you!って言っている絶妙な写真です。これこそダンです。最高ですたぶん彼はこの作品の中で一番Fワードを言ってるんじゃないでしょうか。

ダンっていうキャラクターは、副大統領の次席報道官になるくらいなので優秀な人材であることは間違いないんですが、とにかく「相手を蹴落としてでも自分に利益が来るように、あからさまに行動する」人物です。報道官なので、副大統領のスピーチを考えたり、メディア対応したり。さすが報道官と思えるスマートなアイディアを出して副大統領を窮地からたびたび救いつつも、すべては彼のキャリアのためという部分も全開な行動が痛快です。最初はイライラしますが、ずっと見てるとむしろ清々しくなってくるほどに、自己中心的です。


相手が偉い人だろうと時に容赦ない

Do you see this right there?
This is me playing F*** You on the world's beiggest cello.
(訳:見えるかこれ?世界で一番でっかいチェロで
クソくらえって演奏してる俺だよ。)

権力を持ってる偉い人に対して爽快に言い放ってるワンシーン。基本偉い人にはヘコヘコするんですが、ひとたび自分の利益にならないとなるとこの態度。当然たまに行き過ぎて墓穴を掘ることもあります。それがまた良いんです。人間っていいところばかりじゃなく、悪いところもあるし、こういった政治の現場だと泥試合なんて日常茶飯事。その中で墓穴を掘りつつも次の策を思いついて、何とか物事を勧めようとする手腕は、クソ野郎ながら誉るべき才能だな~とも思います。時に相手の立場が何であろうと進言する姿勢も含めて、見習うべきところも多いな~と一人のビジネスマンとして感じるところもあります。とはいえ、人間としては最低です(笑)演じたリード・スコットさんもあるインタビューで「職場で、veepのキャラだったら僕はダンかな~とか言う人いるけどやめたほうがいいよ(笑)だってダンだよ(笑)」的なことを言ってました。ほんと、それです。


言葉の暴力が過ぎる

『VEEP/ヴィープ』はとにかく登場人物がお互いに侮辱するシーンが多発する番組としても人気で、このインタビューでも言及されてる通り、あくまでコメディー番組なんですが時にあまりの辛辣さに「自分に言われてる気が・・・」と刺さりまくることもしばしば。

そんなinsults(侮辱)の言葉たちの中でも、個人的に女性としてはこの一言がやばかったですね。首席補佐官のエイミーに対してダンが言い放ったこの一言、マジで顔面殴りたいと思いました。

"Are you pregnant? Careerwise, that's like joining Scientology or getting a fucking neck tattoo!"(訳:妊娠した?キャリア的に、そんなのサイエントロジーに入信するか首にタトゥー入れるようなもんだよ)

キャリアを築きたい全世界の女性を全員敵に回す発言ですね。最低です。凄いのはエイミーも負けじと上手なinsultsをお見舞いするのがこの番組の楽しさでもあります。あー言えばこう言うの応酬が凄まじく知的でもあります。30分のコメディ番組で10数人の主要人物が出てくるのにも関わらず、きちんと物語を進ませて、かつ痛烈な皮肉の応酬を繰り返しながら、しっかりとオチまで決める作品、そうそうでてこないのではないでしょうか。ちなみに、かなりお互いを侮辱するシーンが多い番組ですが、キャスト同士はめちゃくちゃ仲が良く、家族ぐるみで一緒に旅行に行ったりする仲なんだとか。


中の人リード・スコットさんもクソ野郎なのか

これは色んなインタビューで言われてますが、リード・スコットさんはマジでいい人だそうで。このインタビューでも、「いったいダンのキャラクターはどこから来たの?」と驚きながら聞かれるほど。リードさん自身も、「僕の中のどこかにいたんだとは思う。」といい、かつダンを演じることに関して「めちゃくちゃ楽しい!」といつも発言しています。今回最終シーズンを迎えるにあたり、これまでダンを演じる時に来たスーツを貰ったんだそうで。今後彼がプレミアなどで表舞台に出てくるときに着てるのは、ダンのスーツかもとのことでした。リードさんは、駆け出しのころバーテンダーをしながら生計を立てながらキャリアをスタート。縁があり、ダンの中の人として知名度を得て、「クソ野郎な白人を演じる特権を得たかも笑」とも言っていました。新作の映画でも低予算映画ながら、脚本に感銘を受け、「クソ野郎白人」役を快諾。自分の性格とは全く異なるキャラクターを演じるって、しかもそのキャラが愛されるってどんな感覚なんだろうと思いを馳せちゃいます。

さよなら、クソ野郎

中の人も人生の中の大事な時間として、ダンと過ごした日々を振り返ってるのかな~なんて思いましたが、キャストが各キャラにさよならをいうこちらの動画を観てみると、

「You are a f***ing dick!」ってダンに言い放つリードさん(笑)こんなに愛あるinsultもないな~と思っちゃいました。クソ野郎に私がいつも魅せられるのは、人間臭さがよりにじみ出るからかもな~とダンを見ると思います。器用に生きてそうで、実はクソ野郎が故にとても不器用な面も。嫌な奴なことには変わらないけれど、自分の中にもダメな部分ていうのは必ずあって、そことどう折り合いをつけながら生きていくかっていうことを、クソ野郎キャラを見ながらイラつきつつも、感慨深く思ったりもしちゃいます。

まだこのドラマを観たことない人は、「ゲーム・オブ・スローンズ」と並んでHBOが製作し、ドラマの一時代を築いた作品としても注目なのでぜひ観ていただきたいです。Amazonプライムビデオで観れますので。コメディは、いろんなジャンルの中でも、真剣なことをシンプルに伝えるツールとして一番であるな~と思う一方で、相当スマートな脚本家たちが揃わないとスベりまくってしまうギャンブル的な要素も多いジャンル。そういう意味で、こんなにも30分間で笑って学んで、しかも民主党なのか共和党なのかは明言してないのに、政治劇として各話すっきりオチを付けて着地するドラマもないなと感心するばかりです。

最終シーズンでは、各出演者が日々撮影最終日を迎え、それぞれが涙ながらにさよならを言う中で、最後の瞬間を見届けようとスタッフが大勢詰めかけたそうで。視聴者だけでなく、たくさんのスタッフに愛され、セリーナの最後のシーンの撮影には150人ものスタッフが見届けたんだとか。撮影が終わり、プレスツアーでまた今再度キャストが集まる日々だけど、「本当に終わったんだな・・・と変な気持ちになるよ」とリードさん。関わった人たちが渾身の想いで作った作品、見逃せないなと今から最終シーズンの日本上陸が楽しみで仕方ないです。


ということで今回はここまで!また来週!

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