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生理の話

この記事は学びのシェア会出版プロジェクト「きみがつくる、きみがみつける社会のトリセツ」の一環で執筆した記事です。生理(月経)のある女性だけでなく、すべてのジェンダーとセクシャリティと年齢の人に関係ある話だという思いをもって書いています。また、特定の生理用品の購入を勧める目的ではありません。

月経カップを使ってみて気づいたこと

わたしが生理用品に月経カップを使い始めて半年になります。
月経カップとは、「月経の血液を回収するために膣口に挿入する合成素材(シリコーン)でできたカップ状の詰め物」です。今のところ、日本、アメリカ、ドイツなどのいくつかのメーカーの商品が、主にインターネットで入手可能です。

2〜3年前ぐらいから、使用感を綴ったSNSの投稿などを目にするようになり、月経カップの存在自体は知っていました。「新しい生理用品」というところに興味も持っていましたが、なかなか購入に踏み切れませんでした。「とりあえずナプキンでなんとかなっている。月経カップはお値段もそこそこするし、この歳になってわざわざ大きく変更するのもな。そんなに生理で困ってないし」と思っていたのです。しかし友人が熱くおすすめしているnoteの投稿を見て、再び興味を持ちました。

さらに同時期に、アフリカ・マラウイの女の子たちが、月経カップのおかげで学校を休まなくてよくなった、という記事を読みました。

なるほどパッド(ナプキン)しか選択肢がないというのは、人間を制限することも引き起こす。月経カップという他の選択肢があることは重要なのだ、と感じ入りました。

そんなこともあり、月経カップについてのよいイメージを持ったので、先のおすすめ投稿をした友人にメッセージして、使い方などについて質問しました。不安がだいたい払拭されたところで、「まぁ一度使ってみようかな」という気持ちに傾き、購入を決めました。

実は、最初の生理周期はうまく装着できず、痛みも出て、正直めげそうになりました。やっぱり今さら新しいツールって無理だったかしら...と思いかけたその次の周期は、よりによって競技かるたの大会の当日に当たってしまいました。今まで通りナプキンを持っていくか悩みましたが、「こういうときこそ月経カップの出番なのかも?」と思い、背に腹は変えられぬと、再チャレンジしてみました。

というのも、競技かるたの大会は、1試合がだいたい80分〜90分。その間トイレには行けません。勝ち進むと、次の試合までの間の休憩は10分あるかないか。トイレが遠かったり、混み合っているときに、ナプキンを持ってトイレに並ぶのは非常にストレスです。しかも10分の間に水分とエネルギーの補給も済ませなくてはなりません。大会では別途食事の時間などは確保されていないのです。スポーツなので補給は最優先したい。そんなとき月経カップであれば、その日の経血量にもよりますが、6時間は挿入したままでも漏れはないはず、と見立てました。

結果、試合に集中することができ、3回戦まで勝ち上がりました。
月経カップにしておいてほんとうによかった!なんて便利で快適なんだろう!という喜びと共に、わたしには生理の悩みがあったんだということに、はたと気づきました。

前置きが長くなりましたが、わたしはこのことを書きたいのです。


わたしの生理の悩み

あまりにも個人差のある話ですし、同じ人の中でも年齢や体調によっても変わってきますので、あくまでもわたし個人の現在の話として書きます。

現在のわたしの生理にまつわる心身の症状についてまず書くと、10代の頃はしんどかった腰や下腹部の痛みは、30代前半に出産してからかなり軽くなりました。年齢的には更年期に入るので、生理期間(日数)や経血量が多かったり少なかったり、周期が長くなったり短くなったりのぶれは少しずつ出てきていますが、悩むほどではありません。PMS(月経前症候群)で頭痛、倦怠感、イライラ、気分の落ち込み、月経期間中の頭がはたらかない感じや猛烈な眠気などは続いていますが、仕事が融通が効くようになったり、信頼している相手なら事情を説明したり、自分の生理との長年の付き合いで対処法がわかってきたので、こちらもそれほど深刻な悩みとしてはありません。

それではわたしの悩みは何かというと、これはひとえに、
生理用品との相性によるQOL(Quality of Life)の低下にありました。

漏れ、かぶれ、臭い。中でもわたしが嫌なのが「臭い」。経血は体内にあるときは当然ながら臭いません。空気に触れると「臭い」となるのです。これが表現しようのない独特な臭いで、一日中憂鬱でした。

10代の終わりに海外旅行に行ったときに、荷物にナプキンを大量に詰めたり、土地勘のないところでトイレを探して頻繁に取り替えたり、もれやかぶれやにおいを気にすのが嫌だなと思って、タンポンを使ってみたところ、とても快適だった経験があり、しばらくタンポンとナプキンを併用していました。(ピルを飲んで生理周期をずらすことは、この時のわたしには選択肢としては上がっていなかった)

その後、肌触りがよく、何度でも洗って使えるという布ナプキンがブームになり、試してみました。最初はよかったのですが、吸収帯の吸水力が劣化していくのか、次第にもれがひどくなってきたり、布で経血を受け止めているので、臭いについては解消されないどころか、より複雑な臭気を放っていくような感じがしました。また布ナプキンを洗う作業も憂鬱でした。臭いもですが、色とか...。それでギブアップしました。タンポンに戻ろうかと思いましたが、気に入って使っていた商品がなくなってしまっていました。

そもそも生理期間を過ごしていること自体に憂鬱さがあって、その日の活動を目一杯楽しめないなぁ、という感覚がありました。生理期間のQOLの低下、それは今思えば生理用品との相性にも大きな原因があったのだ、ということに気づいたのです。

「生理だからしょうがない」「この生理用品しかないからしょうがない」と思い込んでいた。けれど、自分にとっての快適をもっと当たり前のこととして探求していいんだ!わたしが決めていいんだ!探せば選択肢はあるんだ!それをアップデートすることが大事なんだ!と思えたのが月経カップにしたことの最大の収穫でした。

また、膣口に挿入することで自分の身体に対して主体的に関わっているという感覚が持てることや、経血量などの変化から体調が読み取れ、その日その日の過ごし方を決める指針が持てるようになったこともあります。自分の身体と対話している感じなのです。

わたしにとっては大きな発見だったこれらのこと。
みんなはどう考えているんだろう?
「生理辛いよね、憂鬱だよね」「やだよね」と労わりあうのとはまた違う、「生理の話」をしてみたいなぁと思い、何人かの女性に聞いてみました。

すると「生理の話」を発端に、いろんな声が聞こえてきました。


みんなはどう?

・生理のときは、身体を締め付けるような素材やサイズの下着をやめ、ゆったりと過ごせるものをつけるようになった。仕事や外出を控えめにして、予定もぎちぎちに入れないようにしている。要請があっても断ったりして、自分を大事にするようになったのが、最近の変化。自分で自分を大事にできていてうれしい。

・恋人に「きょうは生理だからセックスできない」と伝えることに罪悪感があったことに気づいた。当たり前のことだし、むしろ配慮してもらいたいことなのに!「えー」って不満そうに言われるって考えてみたら論外だ!これは恋人に限らず。

・娘の生理痛がとても重かったので、産婦人科に行ってピルを飲んでホルモンを調整している。彼女にとっては生理があることが悩みだったと言えるかも。婦人科系の疾患とつながっていることもあるので「生理だから激痛でもしょうがない」と我慢せず、まずは診てもらうことが大事。ピルという選択肢があってよかった。そもそも「辛さがあったら緩和を求めていい」とか、「これはただ事ではないと思ったら受診する」ということを本人または周りが知っていることも大事よね。

・ピルでホルモンを調整するのは違和感があって、できれば毎月月経がきて循環させていきたいと思っている。(婦人科系の疾患がない方)

・月経カップを試してみたけれど合わなかった。月経ディスクというのもあるらしい。生理用パンツを試してみます!

なるほどなるほど...。

他にも、直接話は聞いていないけれど、出産の経験のある方で、主に避妊を目的として子宮内避妊具の一つ、IUSを装着している方の投稿も見かけました。月経痛や経血量が軽減されるので、身体も気分も楽になったそう。

また、トランスジェンダーの方の生理についての記事をシェアしてくれた方もいました。そうか!今まで考えたことがなかったけれど、あるよね、大事なことだよね。

いろんな話を聞かせてもらうことができて、わたしはとてもうれしかったのだけれど、同時に「こういう話題ってすごく大事なことだから、話せてよかった。聞いてくれてありがとう」と逆にお礼を言われました。

そうだなぁ、確かに生理の話ってなかなかしない。話したとしても、それこそ「生理で憂鬱ー」という域を出なかったように思います。

けれども、とにかく自分の身体に起こっていることは、どれも人間ならあり得ることで、それは恥をかかされれるようなことでもないし、罪悪感を抱かされることでもない。一切あってはならないと思います。

もっと安全に、もっと当たり前に、話題に出せるといいなぁ。
そのときには、一人ひとり違うことを大前提に、「わたしはこうなのだけれど、あなたはどう?」と尊重と温かな関心をもって聴き合いたいですね。

そうしやすくなってきたなと感じる社会の追い風も、近頃感じています。


生理の話をしよう

●モード誌の『SPUR』によるキャンペーン。

"JUST BE YOURSELF 時代はいつもあなたから変わる"というメッセージに込めた思いを編集長が真摯に語っています。

SPURの読者ではない多くの方々に向けて、渋谷の街中に堂々と生理用品を掲出することで、色んな方たちに、自分と他者の身体について考えるきっかけを提供したいと考えました。

デザインもよいし、メッセージもとてもパワフル。商品化してくれないかな。ドラッグストアにもコンビニにも置いてあって、誰にでもこのメッセージを伝えていてほしいし、受け取っていたいなと思いました。


●“生理用品らしくない”デザイン

そうそう、ナプキンの話ではあるけれど、なんとなく「生理用品ぽい」パッケージで抵抗があるというのも、「こういうものだからしょうがない」と諦めていたことの一つかもしれません。こんなナプキンだったら気分も全然違う。


●「生理用品ってどうして紙袋に包むの?」という話題も。

言われてみれば、確かに。「見られると恥ずかしいもの」ではない。お客さんが求めたのか、お店が「配慮」したか、どちらが先かわからないけれど、今あらためて「どうして?」と問い直すと、見えてくるものがありますね。


●コミック『生理ちゃん』男性漫画家が描く、みんなが読める生理の話。

●映画化もされた『生理ちゃん』。笑いと愛おしさを感じる予告。

監督のインタビュー


当たり前だししょうがないと思っていたけれど、そうではなかった。
実は求めていたことがあった。だから口にしてみた、ほしいものを見えるようにしてみた、なかったから作ってみた。
そんな動きが起こっているように感じます。


セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

ここまで書いてきたことはぜんぶ、この言葉に直結しています。

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスとは、性や子どもを産むことに関わるすべてにおいて、身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態であることです。
セクシュアル・リプロダクティブ・ライツは、自分の意思が尊重され、自分の身体に関することを自分自身で決められる権利のことです。


わたしはこの言葉を以前から知っていたけれども、今回生理のことについてあらためて考えたり、話したり、書いたことで、ようやく実感をもって、この言葉とつながることができました。

誰もが、アイデンティティの根幹である性を、まずは自分が大切にすること。そしてすべての人がすべての人に対して大切にすることを、わたしも人間の一人として目指していきたいなぁと思います。


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ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 漱石
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舟之川聖子|Seiko Funanokawa

鑑賞対話ファシリテーター。場づくりコンサルタント。関係性のデザイン。対話。共有したい・伝えたい・残したいものがある人と、鑑賞者に橋をかけ、集う一人ひとりの豊かな鑑賞体験を促進する場をつくります。https://seikofunanokawa.com/

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