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だしかつおとオートミールと干ししいたけ

実家から送られてくる野菜や乾物の中に、顆粒の和風だしが入っていることがあって、とても重宝していた。「素材厳選!無添加!」とうたっているだけあって、美味しい。

ある日そのストックが切れてしまった。また送ってとおねだりしている間にも日々の調理はあるので、どうしようかと思って、近所の自然食品の店や、輸入品が充実している高級スーパーをのぞいてみた。顆粒だしの棚に行ってみて、確かに似たような質の良さそうな商品はあるのだけれど、なんとなく、手が伸びない。

代わりにだしかつおを手にとった。

去年、少しだけごはんのお店で働いたことがあった。毎日、お昼の定食のお味噌汁を作るときに、料理人の方が丁寧に出汁を引いていて、その時間の厨房の匂いがすごくよかった。

出汁の匂いには、もう無条件に反応してしまう。

しばらく海外に行って帰ってきたときになどに体が欲するのは、ごはんやおにぎりなどもあるけれど、味噌汁も一、二位を争う。その中に含まれているのは味噌もあるけれど、やはりかつおや昆布や煮干しの出汁の存在が大きい。さすが旨味成分、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸。

大きなふかふかのかつおだしの袋を買って、しばらく手動(?)で出汁をとってみることにした。実はこうやって出汁をちゃんと取るのも、もしかしたら高校の家庭科以来なんじゃないか?というぐらい、長年、顆粒だしのお世話になってきた。とにかく便利だ。疲れているときも、なんとか調理しようという気になる。助かる。

めんどうだなぁと思う日もあるが、家にはだしかつおしかない。毎日のお味噌汁を作るときに、和風のおかずを作るときに、しばらくそれで出汁をとることを当たり前にしてみると、どうやらわたしにとって特に手間というほどの手間でもないことがわかってきた。しかも出汁をとっている時間の家中に漂うかつお出汁の香りは、それだけでけっこう満たされるものがある。出来上がりの味ももちろん違う。美味しい。味が深い。

たくさん作ってストックしてもみた。けれど、「使わなきゃ!」というプレッシャーになったので、結局都度とるのが自分にとっては一番いいとわかった。

和風出汁に関しては、一からとったほうがぜったい美味しいという感覚があるので、だしかつおを使う。もう戻れない感じになってきた。顆粒だしには塩分が入っているので、味の濃さの調節をしなくてはいけなくて、それが案外難しかったりもする。

でも洋風と中華風だしについては、相変わらず顆粒だしを使っている。「ぜんぶこうでなきゃ!」を貫く強さも、わたしにはあまりないようだ。


今、わたしの毎日の食事は気分がかなり重要な要素を占めている。そして、そのとき家にあるものや出会った食材との組み合わせでなんとかするのが好きなので、しょっちゅう、2日に1回は買い物に行く。1週間分をまとめて買っても、食材を計画的に使うことができなくてすぐダメにするので、宅配も子どもが生まれて2年ぐらいやってみて止めた。

疲れて作れない日もあるし、人に会うことも多いので外食もよくある。
息子と二人暮らしなので、そんなに大量にも作れない。明日になったらたぶん気分が変わって違うものが食べたくなっているだろうから、なるべく一回で食べきる分だけ作る。



そういう出汁のことから、日々の食生活で決めていることなどをつらつらと考えている流れで、きょう新たな発見があった。

春の気候変動や、気の重い手続きごとなどで体調がよくなく、冷えもあり胃腸も疲れているけれど、お腹は空いている状態。

ふと、おかゆが食べたいなと思った。でもおかゆを一から炊くのは面倒だし、ごはんの冷凍ストックなどもしない主義(食べ切りたい)だからないし、コンビニにレトルトのおかゆを買いに行くのもいや。うどん...小麦が食べられるほど元気でもない...。

おお、そうだ、オートミールがあったわ、と思い出す。

オートミールがわたしの人生に登場したのは、1、2年ぐらい前。友だちと話している中で、けっこう気軽に食べられるものだったり、「今流行ってるのよ」などを知った。朝ごはんにシリアルの代わりみたいに食べていて、牛乳や豆乳やアーモンドミルクにフルーツなどを載せるのが定番。それにプロテインとはちみつなどを混ぜてブレンダーで攪拌してドリンクにしていた。

でも和風でも使えるという話。よく考えたら、ただの麦なのよね。穀類。
乳製品やフルーツと一緒にいるイメージだったから、出汁と合うんだろうか、という違和感があって、なんとなくトライできずにいた。

そんな中、パタパタ検索していると、なんとなくこの方のブログ記事に行き当たった。

でもオートミールってざらっというかじゃりっというか、ぼそぼそしているのにぬるっとしていて味がなくて、とくに美味しくないんだよね。クラバートではご馳走扱いだったけれど、風にのってきたメアリー・ポピンズ でジェインが「パンケーキのほうがいい」といっていた理由がよくわかった。おかずもどうしていいかわからない。

ここの箇所を読んで、「クラバート!メアリー・ポピンズ!」と思わず目が釘付け。「メアリー・ポピンズ」はポッドキャストを録るために観たところだったし、ちょうどおととい「クラバート」を一箱古本市で購入したばかりだった。

そうそう。もともとめっちゃ美味しいと思って食べていたかというと「特に美味しくないんだよね」という感じだったし、そもそもイメージとして既に自分の中に強固にある「いまいちさ」は、子どもの頃から読んできたいろんな物語に出てくるからなんだなぁとわかり、同じように思っていた人がいてうれしかった。

読み進めていくと、干ししいたけを戻さずに手で割って入れている。ここでまた驚く。そうか、干ししいたけって戻さないと使えないと思い込んでいたけれど、別に戻さなくてもいいのか!!!

できあがりは3分。量も自分で決められる。
というわけで、さっそくやってみた。

わたしが使っているオートミールは、1食分30gは軽量カップでだいたい50mlのところだった。水と一緒に鍋に入れて、家にあった干ししいたけを割って入れて、ぐつぐつしてきたらブロックベーコンと長ネギを入れて火が通るまで焦げ付かないようにぐるぐるまぜる。中華だしを少し足してみた。

ベーコンとねぎを切っていても5分ぐらいでできてしまった。
美味しかった。身体もあたたまった。


むしろこれ、本場の食べ方にこだわらず、和風や中華風のほうで広げていったほうが美味しいんじゃないだろうか。

干ししいたけ、使える。そういえば先日見たレシピも、昆布を細く切って出汁をとりながら煮て、最後一緒に食べるという使い方をしていた。手動の出汁、もっと気軽に使ってみたらいいのだなぁ。

わざわざ会って人に言うほどでもないけど、書き留めておきたい、出汁をめぐるささやかな発見でした。